【KAC2025】無茶ぶりに答えるしかあるめぇ【20255】

御影イズミ

このエピソードは『カオス』です

 朝。ひんやりと冷たい空気が室内を充満させる時間帯。

 燦斗は布団の中でぐっすり、眠りについていた。

 昨日はホント大変だった。何度も何度も刺しては殺してくる輩ばかりだったから、不死身の肉体を持つ自分が前に出て輩をぶん殴って調査人エージェントにぶん投げてを繰り返して。

 《無尽蔵の生命アンフィニ》と呼ばれる力で何度でも身体が復活するとは言え、そういう指令出されるとホントしんどいもので。


「兄さん、起きてくださーい」


 燦斗の弟エーミールが起こしに来た。礼装を着込んでいる彼は1度は扉の前で声を掛ける程度だったが、兄が起きてこないからと室内へと入り込んでくる。

 扉を開けて、廊下よりは温かい室内の空気がかき混ぜられ、更に寒くさせてきた。やめろマジで。●すぞ。いやエーミールコイツも死なんが。

 ゆさゆさと、布団に眠る燦斗が揺り動かされる。小さく寝息を立てている彼でも、流石に衝撃が起こると目が覚めてしまうのだが……。


「……あと5分」


 寒さでどうしようもなくて、彼は強く布団を身体に巻き付け寝起きの天下無双の形を作り出した。

 布団の中はあったかくて、身体を包みこんでくれる。せっかく温まった身体を冷たい状態に戻す、そんな天下無双モードを解除するなんてバカが何処に居るだろうか。いや今燦斗を揺り動かしてんな。いたわ。


「エーリッヒお兄様~」

「兄貴~、朝やで~」


 そこへ燦斗の妹エミーリアと、もうひとりの弟メルヒオールがやってきた。

 2人とも礼装に身を包んでいて、扉の前で声を掛ける程度にする。が、やっぱり兄が起きてこないので2人も部屋の中に入ってきた。冷たい空気倍ドン。

 冷たさが更に増してしまった室内、そこから起き上がるような奴なんていないいない。燦斗はさらにぎゅっと布団を巻き付けて、天下無双モードを作り出す。


 しかし参ったことに、今日はダンスパーティの日だ。主催であるエルドレット・アーベントロートの息子、エーリッヒ・アーベントロート――もとい燦斗が来ないのは、流石にまずい。

 このままオフトゥン天下無双モードで送り出すわけにもいかないし、かと言ってダンスパーティを欠席させるわけにもいかない。

 なのでエーミール達は目を合わせると、何も言わずに首を小さく縦に振って……。


「兄さん、失礼します!」

「エーリッヒお兄様、ごめんなさいですの!」

「すまんな、兄貴!」

「おあああああ!!??」


 まず、エーミールとエミーリアが掛け布団を引っ剥がし、そこからメルヒオールが燦斗をベッドから引きずり下ろす。その後エーミールがシャワールームに燦斗を叩き込み、自動洗浄と自動乾燥を利用して彼を綺麗にして用意された礼装をエーミールとメルヒオールで着せる。ヘアアレンジをエミーリアが行うことで何することなく燦斗はダンスパーティへの準備が整ったのだ。


 その様相はまるで1人の女性を複数人で相手取る形のダンスのようにも見える。というかここまでやらないと起きない長男は一体何なのか、それは多分誰にもわからない。






「リヒ、ミル、リアちゃん、メル。なんで遅れたん?」

「兄さんのせいで」

「エーリッヒお兄様のせいで」

「兄貴のせいで」

「私のせいじゃないです」


 もちろん燦斗が寝坊したうえでの準備だったので4人揃って遅刻になりました。

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【KAC2025】無茶ぶりに答えるしかあるめぇ【20255】 御影イズミ @mikageizumi

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