おまけ・後日談
後日談として……。
あのむーのひとつ下の妹・この魅ちゃんから呼び出され、家に赴いた時のこと。
この魅ちゃんは、長い髪をツインテールにまとめた中学三年生の女の子。
あのむーが「黒髪ショートの正統派美少女」なら、この魅ちゃんは「ミステリアスなクール系美少女」といったところか。
どこか感情表現が薄く、あまり笑顔も見たことがないし、話し方も淡々としている。
白く突き抜けた透明感溢れる肌と、整った顔立ちは、綺麗な人形のようだ。
「今日は両親も、おねーちゃんも妹も出かけて、いないんで。自分の家だと思ってくつろいでください」
「はあ……」
呼び出された目的が分からないし、中学三年生の女の子とふたりきりになって、何を話せばいいか分からない。
「何を話せばいいか分からないという顔ですね」
「うん、まあね。正直なところ、そうなんだけど」
「まずは、おねーちゃんを救ってくれたお礼を言わせてください。ありがとうございました。外見は可愛いけど、どじっこな姉なので、苦労したと思います」
「えっ!?」
「天さんのちからは、昨日に戻れる能力、ですよね。何度も同じ一日を繰り返して、大変だったみたいで」
「なぜそれを……」
僕のちからの内容も、あのむーを救うために同じ日を繰り返したことも、誰にも教えていないのだが……。
そもそも、他人に話したとしても、時間が戻っているのを認識できるのは僕以外にいないのだから、証明が難しい能力ではある。
「わたしもつい先日、ちからに目覚めまして。宮坂家の、例のビビーンってやつに」
「ああ、あのビビーンが来たんだね」
「わたしの能力は、自動書記みたいな感じで」
「自動書記?」
「誰かの行動や、心情、世界設定まで、すべてが、文章として“読める”んです。天さん、おねーちゃんのことが好きなんですね」
「なっ! 何を唐突にっ」
「さっき、『第4話 9回目の幸運』のラストで語ってたじゃないですか。『大好きな彼女の前で「僕が君の命の恩人だよ」なんて』って書いてますよ」
「第4話って、一体何の話を」
「あ、私の能力は、一度別の次元に文章が飛ばされて、そこで客観的に読むことができるんです。【カクヨム】っていう場所なんですけどね。たった今、この瞬間も、見知らぬ誰かに、リアルタイムで読まれてます」
「そんなバカな! じゃあ、この会話のやり取りも、誰かに見られ……いや、“読まれて”いて、筒抜けってこと?」
「そうです。ちょっと言ってみたかったセリフがあるんで、いいですか」
この魅ちゃんは、あなたの方を見て言った。
「きさま! 見ているなッ!」
この魅ちゃんは、『ジョジョ』ファンだった。
あの夢のことは…… 雲条翔 @Unjosyow
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