KAC20254 君に願いを

久遠 れんり

望みの果てに

「あの夢を見たのは、これで9回目だった。」


 汗びっしょりで目が覚める。

 ―― 別のところもびっしょり……

「私って、えっちなの?」

 それを知って、落ち込んでしまう。


 夢の相手はいつも一緒。

 同じ学部のため、大体同じ授業を取っている。

 私も彼もいつもいるグループが違い、あまり話すことも無い。


 だけど…… そうねよく目は合う。

 少し気にはなるけれど、好きとかそういう感情を持つような付き合いではなかった。


 だけど、この一月の間に夢を見始めた。

 最初はデートとかをして、ベッドイン。

 最初は照れていた二人。


 だけど、回を重ねるうちに、お互いの体をむさぼるように求め合う事になっていった。


 体に触れるリアルな感触。

 触れ合う唇と、優しく揉まれる指の感触。


 実際にエッチをしたことは無いので、入ってくる感覚とかは無い。

 でも、それ以外は……



「それって、単に欲求不満じゃ無いの?」

 友達はそう言って笑う。


 彼女が言うとおり、一人ですることを覚えてえから、したくなることはある。


「そこまで、なるかな? それに相手が」

「えっ誰? 知っている人?」

「多分知ってるけど、私、話しも余りしたことが無いのよ」

「それは、気になっているからじゃ無いの?」

「そうかなあ?」


 なんてことを話ししていた。


 ある日、彼らのグループと、話しをすることになった。

 その時、少し赤い顔をしながら、彼がチラ見してくる。


 解散をした後、勇気を出してきいてみる。


「こんにちわ、私夢野 詩織ゆめの しおりです」

「こんにちは。おれ、葛野 想多くずの そうたです」

 そう言って、ニコッと笑顔。


「あの、よくこちらを見ていたので、何か用事でもあるのかなと、気になっちゃいまして」

 そう言うと、何か困った顔をする。


「いや、言いにくいんですが……」

 そう言って口ごもる。


「あー。喫茶にでも行きます?」

「ああ、はい」


 図書館の会議室を離れて、学内の喫茶室へ向かう。

 大学によっては有名珈琲屋さんが入っているが、この大学は、食堂の横に併設されている。

 

 ただ、昼食の時間も過ぎて、人影はまばらだった。



「それで?」

 向かい合わせに座っている彼にきいてみる。

 彼は、カップから口を離し、顔を近づけてきた。


「その…… 君と…… いや。君と、その…… 仲良くしている夢を見るんだ」

 それを聞いて、私の心臓は止まりそうになった。

 彼も見ている? これは一体どういう現象?


「えと、仲良くって…… どんな?」

 そう…… 聞いてしまった。


「あーその。体の関係…… 結構濃厚な。あっいや、夢の話しだから、その。気分を害したならごめん」


 気分を害したらと言うが、それどころでは無い。

 彼は私と、同じ夢を見ているというのだ……


「それでまあ、意識をしちゃって」

「はあ、それはどうも……」

 あまり知らない男の人が、私とエッチする夢を見ていると言われても、興味が無い人だと素直に喜べるものでは無い。


 どう反応をして良いのかも判らない。


 結局、その日はそれで別れた。




「おかしいな? 今までの奴なら、結構食い気味に話しにのってきたんだが……」

 そうぼやく葛野。




「これは?」

「警察ね。付いていくから、すぐに行こう」

 そう私は、自分が寝ているところを、動画に撮った。


 寝ていると、部屋へ入ってきた誰かは、スポイトのようなもので何かを私の口に落とす。

 その後、五分ほど待って、ヘッドフォンを私に付ける。


 すると私は、自分の胸を揉みながら、そう、自分で始めてしまう。


 そして、私の顔に彼の顔が近寄ってくる。


 そう、朦朧とした意識の中で、彼の顔を見つめると、私からキスをしてしまう。


 それ以外に、彼から手を出すことは無いが、何時間もひたすら私はよがり狂っていた。


 そして満足したように、ヘッドフォンを私から外して、帰って行った。



 供述では、彼はこのマンションの管理人の親戚。

 若い娘が入居すると、勝手に合鍵を作る。


 しばらくストーカーをして、生活パターンや好みを抑えて、いないときに作り置きをした鍋や、飲み物などに睡眠導入剤みたいなものを入れる。


 忍び込んだ後、口に滴下したのは緩い睡眠薬と媚薬のようなものらしい。


 ヘッドフォンで、行為の音声を織り交ぜた、特殊な音を聞かせると、聞いている本人は猛烈に欲情をするみたい。



 今まで彼は同じパターンで、幾人も彼女を作って食い荒らしたのだが……

 ただ夢の方が強烈なので、付き合い出すと、なぜか、何か違うと言われて別れることになる様で、次々に相手を代えたとか?


 まあ余罪もあるし、後は警察と弁護士さんにお願いすることに。


 だけどたまに…… あの感覚が欲しくなるのが、困ってしまう。

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KAC20254 君に願いを 久遠 れんり @recmiya

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