惑
船越麻央
赤い観覧車
あの夢を見たのは、これで9回目だった。
どうして同じ夢を何度も見るのか。
夢の中でわたしは告白している。
なぜか赤い観覧車のゴンドラの中。
わたしはその人と二人っきりで向き合っている。
「ずっと好きでした……」
そして……告白した相手に受け入れてもらえる。
わたしの恋は成就したのだ。
そこで夢は終わってしまう。
だが現実は違う。
夢とは真逆なのだ。
わたしはあるクラスメイトの男子に告白された。
「オマエが好きだ。俺と付き合ってくれ」
わたしは……わたしは彼の告白を受け入れた。
彼はクラスの人気者で、いわゆるイケメンだ。
わたしはその彼のカノジョになったのだ。
そしてわたしと彼の仲はクラス、いや学年の公認になった。
わたしはほかの女子から羨望の眼差しで見られた。
はたから見たら幸せなカップルに見える事だろう。
わたしと彼はデートを重ねた。
放課後、図書館で一緒に勉強したり。
映画や遊園地にスポーツ観戦、美術館巡りにショッピング。
彼は楽しそうだ。
わたしも表面上は楽しそうに振る舞っていた。
充実した高校生活と言えるかもしれない。
でも……。
わたしの心は満たされていない。
理由は簡単だ。
わたしは……わたしは彼を裏切っているのだ。
実はわたしの心の中には別の人が居る。
夢の中で9回も告白した人。
彼と付き合っていながら、他の人を想っている。
許されないことだと分かっている。
ならばなぜ、彼の告白を受け入れたのか?
ほかに好きな人がいるのに。
彼と付き合えば吹っ切れる思ったからだ。
でもだめだった。
逆に想いは深まってしまった。
そんなある日のことだ。
「ねえ、彼のことホントに好きなの?」
隣の席の女子に聞かれた。
「え? 当たり前じゃん。なんでそんなこと聞くの?」
「そ、そうだよね。ごめんね!」
このクラスメイトにはお見通しのようだ。
その場は取り繕ってみせたが、やはり同性の目はごまかせない。
わたしの本当の気持ち。
その人のことを想うと勉強も手につかない。
でもどうすることもできないのだ。
誰にも相談できずにいるわたしの状況。
このままではいけない。
自分の心を偽って彼と会っている。
彼に失礼ではないか。
もう終わりにしよう。
「絶対に大丈夫だから」
自分に言い聞かせる。
何度も夢に出てきた赤い観覧車。
わたしは今それを見上げている。
9回もこの観覧車のゴンドラ内であの人に告白したのだ。
夢の中で。
今日こそあの人に告白する。
もう惑わない。
10回目は夢ではなく現実。
11回目の告白はない。
あってはならない。
あの人の姿が見えてきた。
わたしは笑顔で大きく手を振った。
わたしが告白する相手。
思い切って声をかけてここに呼び出した。
何も知らずにやって来てくれた。
その人は……。
ずっと好きだった人。
わたしの高校の……”女性教師”である……。
了
惑 船越麻央 @funakoshimao
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