KAC20254 彼女は、恨みを晴らすため、彼を沼に引きずり込む。
久遠 れんり
それは、ある日始まった。
「あの夢を見たのは、これで9回目だった。」
そうあの日から繰り返される夢。
バッファローの大群がすべてを破壊して走り回る……
じゃなくて、彼の何気ない一言。 そう、その時の光景が、毎夜夢の中で繰り返される。もういや。
「くっ。またあの夢。もう嫌…… こうなったら」
「どう、美味しくなった?」
「ああすごいよ。どうしたんだ? お前料理嫌いだったのに」
「えー、あなたに捨てられたく無いしさぁ。さあ、ビールどうぞ」
「ああ、ありがとう」
彼女の
それに対して俺は、結構体を動かすのが好きで、トレーニングをしている。
―― だったのだが、友人に言われた。
「あれお前、太ったか?」
「えっいや、そうか?」
なんとなく言われた一言が気になって、トイレに駆け込み鏡を見る。
「そう言われれば、そうか? ダイエットしよ」
決心はしたが、百花は今日も張り切って料理。
なんとなく残せないし、食ってしまう。
ふふっ、大分効いてきたわね。
揚げ物中心のメニュー。
無論体に悪い、野菜などは除外。
あれは体にダメージを与えて痩せてしまう。
サラダは、炭水化物であるスパサラ。
そう彼女は、一緒に風呂に入ったとき、何気なく俺が言った『おまえ太ったか?』 というシーンを繰り返し夢に見るようだ。
そこから、普通ならダイエットをしようとかするのだが、彼女は違った。
俺を同じ
だが、奴は忘れている。大学があるため朝と昼は当然外食となる。
夕飯だけを改悪しても、なかなか太るものではない。
特に俺は、睡眠三時間前から、飲み物以外を取らない。
そう、間食をしないのだよ。
そして、夕方からみっちり筋トレを行い、十キロほどのランニングを行う。
気がつけば三ヶ月が過ぎ、俺達は海へ行った。
友人達と一緒に。
去年着られた水着。
大丈夫だと思っていた。
そう、食事の材料代が思ったよりかさみ、新しい水着を買いに行く事が出来なかった。
「まあ紐だし、多少は大丈夫よね」
彼女は、意図的になのか、意識から除外していたもの。
そうお金が足りない本当の理由。
それは下着とか服がサイズアップして買い足した。当然その費用は余分な経費となり、財政は悪化する。
そして彼女は、彼を肥え太らせるため、ハイカロリーな食事を一緒に食べていた。
彼は、彼女が見ていないときに、朝食と昼食、そして運動で体重をキープしていた。
それに対して、彼女は、うまうまと豚の様に食っていた。
彼女は自分の罠に、自分だけがはまった事に気がついていない。
見続けた夢どころではない。
当日、更衣室の中から、友人達からの攻撃を受けることになる。
「百花、あんたデブったわね」
「えっ?」
「相当だわ」
「えっ?」
「彼に捨てられるわよ」
「えっ? そっ、そんなに太ってないわよ」
そう答えると、一斉に手が、わたしの脇腹をつまみ上げる。
「デブね」
「デブだわ」
「醜い」
そんな最悪な口撃を受ける。
「そんなひどい」
なんとか紐を結び、外へ出る。
外には、彼氏達。
男グループが立っていた。
「おう、なんか石塚。迫力がでたな」
「なんか、胸の下が揺れてるぞ」
「お前やっぱり……」
最後は彼。
他人の彼氏に、結構厳しいことを言われてる。
「百花ってデブったよねぇ」
友人からの嘲り、かなりキツいものがあるわ。
それも誰からも否定はされず。
「畜生、痩せてやるわよぉ」
わたしはそう叫びながら、砂浜を走り始める。
だけど、すぐにビキニの紐が耐えきれず、弾けた……
わたしは、事故とはいえ、見知らぬ連中に胸ををさらけ出してしまった。
当然だけど、ショックのあまり呆然とする。
結局水着を…… ワンピースをレンタルして、泣きながらカレーをむさぼる。
「明日から絶対ダイエットするから」
流石に辛くて、彼に宣言をする。
「はいはい」
そう言って、優しく頭をなでられる。
私は優しい彼に慰められながら、お代わりを注文した……
「おいおい……」
KAC20254 彼女は、恨みを晴らすため、彼を沼に引きずり込む。 久遠 れんり @recmiya
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