ループ9回目の断罪令嬢はいつの間にかエロルートフラグを立てていたようです

山田あとり

私これから、どうなっちゃうのー!?


 あの夢を見たのは、これで9回目だった。

 だからもう成就するはず。


 数秘術で「9」は完成を意味するの。

 裏切られ続けたこれまでの8回。

 今度こそ私、伯爵令嬢ユリアンヌは死に戻りループを終わらせ生き延びてみせるわ。




 私はこのパーティで婚約者の侯爵子息に謂れのない罪で糾弾され、婚約を破棄される。

 それは我が伯爵家を陥れるために仕組まれたものなの。

 これまでの8回、私は冤罪を晴らすすべもなく都から追放され、その途中で殺された。



 でも夢で見たルートでは、陰で騒動を聞いていた国王が現れる。

 陛下はよくある婚約破棄の断罪劇をとがめ、逆に婚約者を捕縛してくれたのよ。

 私もう「よッ、大トリの降臨!」って内心で喝采してしまって――あら?


 何よ、「大トリ」って。


 そんな言葉この世界に――落語用語よね。

 いえ、「落語」って?

 それにさっき私「よくある婚約破棄」とか「ルート」とかメタいこと――待って、だから「メタい」って何!?


 うっ、頭が……ッ!




 ――――思い出したわ。


 ここは乙女ゲーム『星降る都のただひとつの月』、通称『スタムン』の世界。


 前世の私は日本に暮らしていた。

 私はくそ寂しい喪女で、二次元に喜びを見出すしかない社畜だった。

 その私が今、『スタムン』の主人公ユリアンヌになってるじゃないの。



 でも私は青ざめた。

 これって陛下の側室ルートじゃない?



 『スタムン』のメインストーリーは救国。

 ヒロインは華々しい男たちに愛されつつ、月のようにひそやかに国を導く。

 内助の功というか、裏で糸を引くともいえるわね。国王ルートは簒奪の陰謀と戦うことになる。


 で、青ざめた理由だけど……国王ルートって、エロルートなのよ。

 すでに壮年過ぎの陛下だけど、あちらの方は衰え知らず。王妃も側妃もギブアップなところに現れた若い私は公認で毎晩のように……な体力勝負ルート!


 私、前世は喪女だから!

 過労死した前世を含めても四十五年未経験を舐めんじゃないわよ! どーすんの!




 ……とか考えるうちに断罪シーンが終わり、陛下が来たわ。やっぱり9回目の正直なんだ。


 やば。素敵。

 私、頼れるイケオジが大好きなのよ。そのへんで無意識にフラグ立てたのかしら。


 ここは……頑張るしかないのかしらね(何を)!?


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ループ9回目の断罪令嬢はいつの間にかエロルートフラグを立てていたようです 山田あとり @yamadatori

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