企業的責任とは
刻堂元記
企業的責任とは
企業が批判されるとき、価格転嫁がよく槍玉に挙げられる。しかし本当に批判されるべきは、コストを考慮した値上げではない。利益を最優先に追求した、今のビジネスモデルにこそ、深刻な問題が数多く潜んでいるのだ。
その原因は言わずもがな、環境負荷を無視した商品づくりにある。過剰生産、使い捨て文化の拡充、そして不誠実な廃棄。どれも企業としての責任は重い。
なぜ、これほどまでに消費者や環境に冷たくなったのか。思うに、利益の最大化と、販売機会の損失解消を両立させるためだろう。だがそれにより、廃棄商品が大量に発生している事実にも、私たちは目を向けなければならない。つまり、欲しい商品がいつでも手に入る利便性や、目新しい物が欲しいという消費者としての欲求が、廃棄商品の生産に繋がっている。
これが顕著に現れ始めたのが、ファストファッションの発展。或いはスマートフォン市場の誕生ではないだろうか。実際、これらのビジネスが世界中で定着するようになってから、商品の入れ替え頻度がとても高くなっている。言い換えれば、生産から廃棄までの期間が短縮されていると断言しても良い。
ならば私たちが、自主的な選択を出来ているか。答えは明白にノーである。企業の巧妙なマーケティング手法に踊らされ、自らの意思に関係なく、衝動的な買い物をしているに過ぎないからだ。
もちろん、衝動的な買い物の中にも成功がある事は否定しない。ただ、社会が便利になるのとは反対に、買い替えを前提にした、使い捨て商品の割合が増えてきているように思う。明確な数字を根拠に、データを出す事は今回出来ないが、保証期間が切れた直後に突然、商品が壊れた話や、ネジが独特であるが故、バッテリー交換できないスマートフォンの話は、意識せずともよく耳に入る。
端的に言えば、企業は安定的な利益の確保のため、寿命を短くした商品を大量に生産して、消費者に買わせている。とは言え、それは企業努力ではない。はっきり言ってしまうと、単なるエゴ。それ以上の何物でもないのだ。
勿論それならば、使い捨てではない商品を買えばいいだろう。このような主張が出てもおかしくはない。だが始めに断言すると、現状は到底無理である。そもそもとして指摘しなければならないのは、使い捨てではない商品は、最初から手頃な価格で売られていないため、極端に高価な値段になりやすい。また、使い捨てではない商品という定義において、プラスチックを一切使わない商品を、貴方は目にした機会があるだろうか。少なくとも私は、バラ売りの果物や野菜以外では全くない。
つまるところ企業は、自らで決めた合理的な判断の下、環境に悪い商品を意図的に生産していると言われても、反論できない状況に身を置いている。従って、選択の自由以前に、環境に悪い商品しか世の中にないのだから、全ての責任を消費者に押し付けて責めるやり方は共感を得にくい。
当然、消費者が欲しているのだから仕方ない。そのような論理を、企業側は平然と持って、大量生産、大量廃棄するが、そこに説得力ある価値観は存在しない。ビジネスだから、安く抑えるためにという見方があっても、企業側の観点に、環境コストは含まれていないからである。食品や薬という一部の例外を除けば、品切れがあっても死ぬ可能性は低いのだから、代案として最小限の初回生産と、以降の完全受注生産を組み合わせて行うべきと私は感じるのだが、果たしてどうか。
仮にも、企業側が受け入れる可能性は低いだろう。金にならない事はしない。企業はそういう存在だからである。そのため、成功を望むのであれば、政府による補助金などを活用した積極的関与が無い限り、今後もこの状況は続くだろう。
だが前提として、環境に優しい商品ばかりになれば、私たちは罪悪感すら抱かず、今のビジネスモデルを受け入れられる。では、環境問題で取り上げられるプラスチックごみは、地球に配慮されて作られたものだと言えるのか。残念ながら頷けず、リサイクルに基づいた分別すらもされていない。ゴミとして出せば終わりで、その先にすら関心を持たない多くの人々は、ゴミがゴミとして正しく処理されていると信じ込んでいるが、現実は違う。大半が埋め立てか焼却の二択だ。
疑うのならば調べてほしい。明記はしないが、探せばすぐに見つかるはずだ。リサイクルしますと謳われながら、期待を裏切る形でプラスチックごみが処理されている実態を、ありのままに流している動画は、少なからず存在している。
そして真実を知れば、私たちは嫌でも気づいてしまう。企業への愛着心や、ブランドイメージに対する高い好感は、騙されていたとまではいかなくても、洗脳に近い認知戦略だったという事実に。そこで、再度考える必要があるだろう。企業の思惑通りのイメージを引きずっていないか。はたまた、企業は政府よりも信頼できると確かな根拠も無しに、思い込んでないか。
結局のところ、企業の広告も、政府の発信も、支持者を増やすという意味では変わらない。しかしプラスチックごみを始めとした、環境を無視した行動の責任は、間違いなく企業側にある。それでも企業側は、廃棄した商品の処理を全投げし、会議や株主総会などの場において、積極的に問題提起しようともしない。
それにより、環境破壊による汚染は着実に進行している。だが消費者として出きるのは、粘り強く訴えていくしか方法が無い。だからこそ企業は、商品を作る過程から廃棄後の全てに全責任を持ち、必要に応じて、自社製品のリサイクル処理設備を建てる事も、真剣に検討すべき選択肢だと私は考える。
企業的責任とは 刻堂元記 @wolfstandard
作家にギフトを贈る
ギフトを贈って最初のサポーターになりませんか?
ギフトを贈ると限定コンテンツを閲覧できます。作家の創作活動を支援しましょう。
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます