創作論:萌えるヒロインの造形法

夜凪 叶

第1話

萌えるヒロインは僕の乾いた心を癒してくれる。

「未来日記」の我妻由乃。

「アカメが斬る!」のマイン。

「不徳のギルド」のトキシッコ・ダナー。

萌えるヒロインが登場する作品は、心なしか名作の割合が高いように感じる。つまり、創作においては、ヒロインの可愛さイコール作品の出来に直結すると言えよう。いかに萌えるヒロインを造形できるか、それが勝負の分かれ目なのだ。もちろん、その他の要素ーー世界観設定、プロット、台詞、文体などが肝要であることは言うまでもない。しかし、それらがイマイチなのにも関わらず、ヒロインの魅力だけで成り立っている作品があることも事実だ。そのため、本記事では萌えるヒロインの造形法を考察する。


条件1:わかりやすい個性

萌えるヒロインに必須の要素。それは、簡潔な個性であることだと感じる。「未来日記」の我妻由乃はいわゆるテンプレ的なヤンデレで、多くの読者の心を鷲掴みにした。他にも「アカメが斬る!」のマインは典型的なツンデレである。凝りに凝った複雑怪奇な性格よりも、一度原点に戻り、典型的な性格を付与する方が、より萌えるヒロインを造形できるだろう。また、わかりやすさは共感性にも影響する。共感は感情移入を促し、よりキャラクターの魅力の漸増をもたらす。わかりやすい個性こそが、萌えるヒロインの必須要件なのである。


条件2:ヒロインの活躍

主人公におんぶに抱っこのヒロインでは、魅力的なヒロインにはなれないだろう。主人公がピンチに陥った場面で、救世主のように現れるヒロインには心惹かれる。普段は愛玩動物のごときヒロインが、ここぞという場面で主人公を救う。後述する条件3の、ギャップ萌えという点でもポイントが高い。主人公がヒロインを助けるという展開は、現代においては一種のテンプレと化している。しかし、立場を入れ替えてヒロインが主人公を助けるという展開を挟むことで、ヒロインの魅力は倍増しだろう。おすすめの手法である。


条件3:ヒロインの過去

人間、誰しも過去を抱えている。ヒロインに重めの過去を設定し、それを最終盤で明かすことで感動を誘うというやり口は、もはやお馴染みの展開であろう。萌えに特化するのであれば、主人公との接点を過去に設定しておき、運命の出会いを演出するというやり方もある。叙述トリック的にヒロインや主人公の過去を隠しておき、物語の最終盤で一気呵成に明かすことで、読者の感情移入を誘えるだろう。


条件4:ギャップ萌え

萌えるヒロインに必要な要素。それは、ギャップ萌え。近年では「NEEDY GIRL OVERDOSE」の超てんちゃんは、強烈すぎる二面性を武器に、数多のプレイヤーを虜にした。条件1のわかりやすい個性を活かすようなギャップを付与してあげることで、萌えの相乗効果が狙えるだろう。大切なのは、何よりもわかりやすいことだ。わかりやすい個性に、わかりやすいギャップ。それこそが、萌えるヒロインの必須要件だ。


   ○


ここまで、萌えるヒロインの作り方を考察してきた。究極的に突き詰めると、萌えるヒロインとは愛玩動物である。ペットの犬を愛でるような感覚に等しい。だが、いわゆるチョロインにならないように、我々クリエイターは気を配る必要があるだろう。適切なステップを踏みながら、適度に距離を詰めていき、最終盤で愛玩動物のようなデレを読者に魅せる。それこそが、真に萌えるヒロインの作り方だと筆者は考える。

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