妖精をさがして

灰猫

妖精の都

「妖精……かつてのイングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランド、ノルマンディー等の神話や伝承の精霊等と称される超常的な存在を指し、広義的に同様の存在がその国や地方、民族に伝わる。例えばをメソポタミアの悪霊リリス、東南アジアのナーガ。日本では小人、妖怪、竜、仙女、魔女等も含まれるとされる。妖精らしいい妖精ならゲルマン神話に登場する種族、エルフはいかにもそれらしい未確認技術「魔法」を用いる。…さて、ざっと調べた程度の情報で語るならば、妖精とは悪魔を除く大凡全ての超常の総称と言い換えられる」


 コトっ。宙に浮かぶ仮想モニターを片手で払い消失させると、西暦調のグラスを外してデスクに優しく落とす。


「……現代から見て旧暦、西暦時代に於いて超常の存在または怪異と呼ばれた科学上再現不可能の現象あるいは個体は、当時技術革新と呼ばれた数百のブレイクスルーを経て解明され、我々人類は永遠の生命を手にすると共に惑星環境に左右されない環境管理技術を手に入れた。今や過去謎とされていた不可思議で超自然的な概念は廃れ、妄想と娯楽作品の教材として参照される程度のものに落ち着いた」


 窓の外に視線を移せば、その一面が金属で覆われ、西暦に尊ばれた植物は雑草一つ見当たらない。これも技術革新によって惑星環境を守る必要がなくなった人類の進歩の成果であった。


「では妖精とは…幻想の存在たる怪異は本当に存在しないのだろうか。古い物語歴史に埋もれた幻想存在は現在の世界にとって存在しないのか。…もし……もし現実に存在すると仮定したのなら…過去あるいは未来という不可視領域空想の及ぶ予知ぐらいのものか」


 それが過去ならば、考古学の分野に於いて絶滅したたされる太古の生物とそれに伴う伝承や神話。


 それが未来ならば、未発見の惑星に於いて生態系を確立した固有種が妖精と名付けられるかもしれない。


「だが…現在であれば」


 現在であればどうであろうか。自然が形骸となった現代では。


「やはりネットワークの中か?」


 魂の解明に成功し体の入れ替えが容易にできるようになり、機械人形の体に誰も違和感を覚えなくなった。そんな時世でも妖精居るとするならば、人々が集い新しきが産み出されるメタバースの中にしか。


「ネットワークど起きた不可解な事件…か」


 現代にも怪異は姿を見せるのだろうか。

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