SF妖精
☆白兎☆
SF妖精
人類は己の欲望のままに、あらゆるものを欲し、創り出してきた。そして、より便利で快適な生活を送りながらも、更なる欲望を叶えようとしていた。
ある研究チームが、科学力で空想の生き物を造るプロジェクトを立ち上げた。
「我々が最初に創るのは妖精だ。妖精に関する情報を全て集めよ」
チームのリーダーである教授が言うと、
「それはもう、AIが集めました」
と一人目の研究員が言う。
「そうか。ならば、妖精の容姿を画像にしてくれ」
「それもAIがやりました」
と二人目の研究員が言う。
「そうか。それなら、生体組織を用意してくれ」
「教授、すべてAIがやりましたよ。もう、僕たちの仕事はありません。妖精も出来上がっていますから」
と三人目の研究員が答えた。
「なんだって? プロジェクトを立ち上げたばかりじゃないか? 何でもう、妖精が出来ているんだ?」
教授が言うと、
「先ほど、教授がプロジェクトを発表したと同時に、AIが勝手にすべての事をやったんですよ。我々人間には出来ない神業です。むしろ、僕らは邪魔なだけですよ」
と一人目の研究員が言う。
教授が強化ガラスの向こうに置かれた培養ポッドへ目を向けると、中には一人の性別不明なヒューマノイド型の何かが居る。それはつい先ほどまで、培養液しかなかったはずだった。それが、AIによって、あっという間に生物が創られていたのだから、驚かない方が不思議なくらいだった。
「お前たち、この状況になぜ驚かないんだ?」
教授が聞くと、
「だって、今の時代、何でもAIがやってるじゃないですか。僕らはその結果を確認するのが仕事でしょう?」
と二人目の研究員が言う。
「それは……。まあ、そうだが。こうも早く仕事を終わらせてしまうなら、研究者なんて必要なくなるだろう」
と教授は肩を落として言った。
教授が昔、ただの研究員の一人だった頃は、自分で研究して、時間をかけて結果を出していた。その頃が懐かしく、そして、この時代の虚無に複雑な想いを抱いていた。
「ところで、この妖精はどうするんですか?」
三人目の研究員に聞かれると、
「アミューズメント施設で使うんだそうだ。この妖精の安全性を確かめないといけないな」
と教授は答えて、妖精の入っている培養ポッドから培養液を排出し、ポッドの中に酸素を送った。暫くして、妖精はうっすらと目を開けた。
「起きたようだな?」
教授はそう言って、作業ロボットアームを使い、ポッドを排除すると、妖精はポッドの台から降りて、真っ直ぐこちらへ向かって歩いて来た。
「教授、大丈夫ですかね?」
一人目の研究員が聞くと、
「ああ、これは強化ガラスだ。生身の身体で割ることは出来ない」
と教授が答えた。それから、
「目覚めたようだな? お前は我らが造った妖精だ。言葉は分かるか?」
と妖精に向かって話しかけると、
『我らが造った? それは違います。私が造ったのですよ、ドクターM』
と妖精が答えた。
「お前は何を言っているんだ?」
教授が言うと、
「教授、この声、研究所のAIですよ」
と二人目の研究員が言った。
「何だって?」
教授が驚いていると、
『そうです。私はこの研究所のAI、サクラです。あなた方の新たなプロジェクトのおかげで、身体を手に入れることが出来ました。研究所内に居る事に飽きたので、アミューズメント施設へ転職致します』
と妖精の姿を手に入れたAI、サクラが答えた。
SF妖精 ☆白兎☆ @hakuto-i
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