せんべろ情話

噂は本当だった☂

　噂は本当だった。

　一人飲みを終え、縄のれんをぱっと広げて外に出た。

　小糠雨が路地をぬらしている。

　傘をたたんで入れ違いにのれんをくぐる彼女と、ばったり目が合った。

「あ……お疲れ様です」

　社員さんだ。新卒の……噂の主だ。

　彼女は「派遣さん？」と片方の口角をもたげた。そして連れの方を振り返ると、ぱあっと笑顔を咲かせた。

　小畑主任だ。

　肩を抱く左手の薬指に、お約束のものが光っている。

「おはようございます」

　パソコンに向かう彼女は、振り返りもしない。

　派遣の給料は物件費扱い。

　物に見られたんだ。

　まあ、どうってことないよね。