全日本あやかし連合

隠井 迅

全日本妖会議 

 岩手県遠野市――


 日本列島の東北部、その東北地方の太平洋側の沿岸部に位置する縦長で面積広き岩手県、その大部分を占めているのが「北上山地」で、「北上高地」とも呼ばれている。

 北上高地最大の盆地で、岩手県東南部の内陸に在るのが「遠野盆地」で、この地は、北上山地の険しい山々に囲われている。

 すなわち遠野は、外の世界とは隔絶されたような状況下にあり、それゆえに、遠野には、河童、雪女、あるいは座敷童などを題材にした数多くの民話が語り継がれてきた。


 だがしかし――

 それは、実は、昔話という虚構ではない実話だったのだ。

 人非ざるモノたる〈妖(あやかし)〉、いわゆる妖怪や妖精は、その存在が、普通の人間の目に見えなかったり、感じられなかったりするだけで、日本中、否、世界中の至る所に実在している。


 妖は、人や動物ではなく、かといって、人の信仰の対象となる神でもない。

 もしもこういった理解が許されるならば、妖とは、いわば、人知を越えた超自然的存在なのである。


 今から約百五十年ほど昔、人の世が明治という時代に入った頃の事だ。


 いわゆる、欧米諸国に追いつき、国を豊かにし、強い軍隊を作る為に掲げた「富国強兵」の標語の下に推し進められた、明治時代の日本の〈近代化〉の流れの中で、科学的に説明できない事象は〈迷信〉とされ、〈人知を越えた存在〉たる妖もまた、明治政府にとっては弾圧の対象となってしまったのである。


 この明治政府による妖排除に対抗する為に結成されたのが、日本各地に散在していた妖怪たちが一致団結する為に〈明治五(一八七二)年〉、皇紀二五三二年に結成されたのが、〈全日本妖怪連合〉で、それ以降、開催地を変えながら、十二年に一度、全国の妖の集会が催され、現在に至っているのである。


 皇紀二六八八年の旧暦の正月、二〇二八年の一月二十七日に十二年ぶりに妖会議が遠野にて「座敷童」議長の下に催された。


 今回の集会の議題は、アイルランドで催される事になっている事になっている派遣団の代表の選出であった。


 最終的に代表候補は〈二妖〉にまで絞られた。

 一妖が、北海道のアイヌの「コロポックル」で、もう一妖が、沖縄の「キジムナー」である。


                    〈つづくかも〉


 

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全日本あやかし連合 隠井 迅 @kraijean

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