再開の砂時計
カランーー
ドアベルが鳴った。噂に聞いた不思議な喫茶店へやって来た。この店の砂時計は使うと少しの間過去に戻れるという。
店内はレトロで落ち着いた空間が漂っていた。カウンター越しにこちらを見たマスターと目が合う。
「あの、砂時計の噂を聞いて……」
「なるほど。必要なものはお持ちですか?」
穏やかなマスターの問いかけに頷いて答える。必要なもの、それは戻りたい日付が入ったもの。そして戻りたい日、戻りたい場所にあったもの。
用意したのは期限切れのチケット。あの日の後悔のまま、捨てられずに手元に置き続けたもの。
席について飲み物を頼むと、マスターが飲み物と砂時計を持ってくる。それを、チケットを握りしめて待っていた。
「では、砂が落ちきるまで蒸らしてお飲みください」
マスターがポットとカップをそして続いて砂時計をテーブルに置く。ひっくり返された砂時計。砂の流れる音が耳に残る中、ふわりと意識が遠のいた。
あの日のイベント会場の入り口、そして目の前の懐かしい顔に涙が出そうになる。当時の恋人。そしてこの後ーー、二度と会えなくなってしまった人。
「大丈夫?」
自分がよほどひどい顔をしていたのか、そう声をかけてくれる。この後、本当なら喧嘩をして自分だけがイベントに行かずに帰った。そしてこの人はこのイベントの帰りに事故に遭う。喧嘩をしたままだった事、それがずっと心残りだった。
「ごめん」
涙をこらえてただ謝る。もともと自分が面倒臭がりが原因で喧嘩になっていた。この時素直に謝っていれば少なくとも喧嘩別れをすることは無かったのに。
「今回はやけに素直だね」
「だってそのために来たから」
怒った顔でも、困った顔でもなく、その笑顔を思い出して覚えておきたかったから。
「そうそう、今回のイベントなんだけどねーー」
楽しそうに話すその顔を目に焼き付ける。気づけば喫茶店へ戻ってきていた。砂はもう落ちきっている。目を閉じるとさっきの笑顔が、まぶたの裏に焼き付いていた。
次の更新予定
隔日 17:00 予定は変更される可能性があります
三題噺2 @skysound98
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。三題噺2の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます