妖精の悪戯

異端者

『妖精の悪戯』本文

 僕の目の前に華麗なトリが舞い降りた。

 そう、トリの降臨である。


 こんなの駄目だ! 駄作でしかない!

 俺はPCにそこまで入力して、その文章を削除した。

 俺は今、小説投稿サイト「カクヨム」のコンテスト「KAC2025」に応募するための小説を執筆していた。

 執筆とはいうものの、筆は使わない。近年では手書きの原稿の方が珍しいのではないだろうか?

 おっといけない。そんなことを考えている余裕はない。

 そもそもこのコンテストは時間勝負! 数日ごとに新たなお題が発表されて、そのテーマに沿って書かなければならないという過酷なものである。

 しかし、900字以上か。まだ、700字ぐらいならなんとかなったが、微妙に辛いんだよな……前はもっと文字数が少なかった気がするが、年々このコンテストの文字数が上がってきている。それこそ、真綿で首を締めるように……。

 陰謀だ! これは陰謀だ! カクヨムが作者をふるいに掛けるために!

 ……と、騒ぎ立てたところで、確たる証拠もない。もしそうだったしても、作者には何の権限もない。

 俺はぼんやりとPCの画面を見た。まだ一文字も入力されていない。

 まずい。これは非常にまずい。……いや、落ち着け。こんな時は素数を数えるんだ……素数ってなんだったっけ?

 確か、今回のお題は「妖精」。それで900文字以上書かなければならない。

 妖精……何かあったか? ああ、もう思いつかない!

 ピョコ!

 ふいに、PC画面の陰から小人のようなものが飛び出してきた。

「あらあら、お困りのようですね」

 小人、少女の人形のようなそれは笑いながらそう言った。

「な、なんだ!? お前!?」

「私はこのPCの妖精。ご主人様がお困りのようですので参上しました」

 よく分からないが、助けてくれるようだ。

「じゃ、じゃあ、何か書けるネタをくれ!」

 俺はわらにもすがる思いで言った。

「承知いたしました」

 妖精が呪文のような言葉を唱えると、俺の頭の中にアイデアが浮かんだ。

 書ける! 今なら書ける!

 俺は一心不乱にキーボードに向かった。今までが嘘のようにタイピングされていく。

 書き上げるとその勢いのまま応募した。

 後日、カクヨムから連絡が届いた。


 ――により、盗作であると指摘があったため削除しました。

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