友達以上恋人未満

崔 梨遙(再)

1話完結:900字

「ねえ、今度の土曜日、買い物に付き合ってくれない?」


 学校の帰り道。これがデートのお誘いだったら、きっと僕は叫ぶくらい嬉しかったに違いない。


「なぁ、それってデートなん?」

「そんなわけないじゃん、ただの買い物よ」

「ほな、お断りするわ」

「どうして? 最近、私の誘いを断ることが増えてない?」

「増えてるやろうなぁ」

「なんで? 私、何か誠に悪いことした?」

「うん、多分、してる」

「何よ! 私があんたに何をしたっていうのよ!」

「多香子、お前、好きな奴はいるんか?」

「うん、いるよ」

「今、好きなのは誰?」

「高志君」

「高志か、僕の親友やな。高校に入ってからは高志が好きなんやな?」

「うん、それがどうしたの?」

「中学の時に好きやったのは誰や?」

「え? 久志君」

「久志か、僕の中学時代の親友やな。小学校の時は?」

「聡史君」

「うん、僕の親友やな。そういうところが嫌やねん」

「なんで嫌なの?」

「僕は多香子のことが好きなんや。それなのに、多香子はいつも僕の友人を好きになる。多香子が好きなのは、いつも僕じゃない。なんで? なんでなん? なんで多香子は僕をスルーして僕の親友ばかり好きになるの? 僕と多香子は幼馴染みやのに、なんで多香子は僕を好きにならへんのや?」

「そんなことを言われても、仕方ないじゃない」

「デートなら誘いに乗るけど、デートじゃないなら僕はどこにも行かへん」

「幼馴染みなんだから、一緒に買い物に行くくらいいいじゃない」

「嫌や! 僕は多香子のことが好きやから。デートがいい」

「そんなこと言われても」

「多香子にとって、僕はどういう存在なんや?」

「幼馴染み」

「それ以外の表現は?」

「友達以上恋人未満」


 その時、僕は多香子の唇を奪った。


「友達以上なんやから、キスくらいええやろ?」

「してから言うな! 恋人未満なんだからダメ-!」


 パシーン。


「痛いなぁ、ビンタすることないやろ」

「私、ファーストキスは好きな男の子に捧げるって決めてたのに」



「そうか、奇遇やなぁ、僕もファーストキスは好きな人に捧げるって決めてたんや」







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