KAC2025第2弾

小森彩︎華

想いは届かない

 ボクは本当にキミにあこがれ、勝手に期待し、そして勝手に裏切られた。


 何がいけなかったのだろうか?

 あこがれを抱いてしまったボク?

 それともキミには周りを引き込める力を持ちながらも、その力を私利私欲のためだけに使っている所を見てしまったこと?


 なんにせよもう過去のこと、ボクには後悔も残っていないし、今もまだキミはキミだけのためにその力を使い、自分に従うモノには甘い汁を、従わないモノには苦渋の選択を。


 ボクを付き従えることが出来れば、今の立場がもっと大きくなると思ったキミはボクにもイロイロと言い寄ってきたけど、ボクには何もできなかった。

 言い負かすことも出来なければ、大切なモノを奪い従わせようにもそもそもボクにはそんなモノはない。

 暴力で従わせようにもボクは強く、キミには格闘技の心得はない。

 家族に手を出そうにも家族はいない。


 そこで唯一できたことがボクを空気として扱うことだけだった。

 ボクが周りを先導しキミに対し、反旗を翻すことがないとわかると何もせず、何も言ってこなくなった。

 それでも時々ではあるが付き従っているモノがちょっかいをかけてくる時もあるが悉く無視し、あまりにもしつこいようだと叩き伏している。


 キミはホントにこのままでいいの?

 ボクはホントにこのままでいいの?


 お互いにお互いが認め合っているトコロもあるだろう。


 しかし、今はもう言葉は届かず、言葉を投げかけることもない。

 思えば、数の暴力にだけは訴えて来なかったのはキミの最後のちっぽけなプライドかな?

 さすがのボクも多数で暴力を振るわれると多少の抵抗はできても最後には地面に伏してしまうだろう。

 しかし、それはしなかった。


 まったく、悪に染まるのならトコトン染まればいいのにとも思う、だけどそこがまだキミらしさ……唯一の人間らしさが残っている部分なのだろう。


 キミはこれからもその周りを引き込む力を使い、ドンドンと小さな王国を作り、小さな王様になるのだろう。


 だからボクはあこがれてしまい、キミに接触してしまった罰をうける、そしてキミには罪を植え付ける。

 それがボクにできる最後のキミへの手向けになるだろう。


 キミがホントに取り返しのつかない場所にたどり着く前に止める。


 ボクがボクであるためにも。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

KAC2025第2弾 小森彩︎華 @komori_ayaka

作家にギフトを贈る

カクヨムサポーターズパスポートに登録すると、作家にギフトを贈れるようになります。

ギフトを贈って最初のサポーターになりませんか?

ギフトを贈ると限定コンテンツを閲覧できます。作家の創作活動を支援しましょう。

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説