エデン育ちの探索者

水城みつは

第1話 エデン育ちの探索者

 薄暗かった空が徐々に明るさを帯びてくる。


「本当の空は太陽が眩しく、手の届かない所まで広がっている」

 そう教えてくれたのは探索者シーカーだった爺ちゃんだ。

 あ、別に死んだとかそんなのではない。ここには探索者シーカーギルドがないというだけで、殺しても死にそうにないぐらい強い。


 ここは楽園エデンと呼ばれる小さな村だ。そして、迷宮ダンジョンの狭間にあると言われている。


 今日、僕はエデンから旅立とうとしている。


「アリウス、やっぱり行くのやめない? まだ弱くて小さいのに……」


「むぅ、母さんってば、僕、あ、俺だってもう十五だよ。そりゃ母さん達と比べると弱いけど、地上に行くぐらいなら大丈夫だって爺ちゃんのお墨付きが出てるんだ。それに、この門を通れるのは俺だけなんだから」


 眼の前にそびえ立つ巨大な門、ゲートと呼ばれているこの門はエデンとダンジョン、いや、異世界を結んでいる。

 スキル『ゲートキーパー』、今から数十年前、迷宮ダンジョン氾濫スタンピードの際に爺ちゃんが命拾いしたのはこのスキルのお陰だという。


 このゲートは異世界、つまりは爺さんの故郷でもあるチキウのダンジョンに繋がっている。

 そして、このゲートを通れるのは今のところ俺だけである。

 爺ちゃんも通れはするが地上まで戻ってしまうとエデンとの接続が切れてしまう可能性が高いこともありここを離れるわけにはいかない。


「まあ、出た階層のモンスターぐらいは問題ないし、上に行くに従って弱くなるんだから油断さえしなきゃ問題ないよ」


 そう言って腰のカタナと背負ったバックパックを確認する。


「地上を確認したら一旦戻ってはくるつもりだよ。もっとも、スタンピードで地上が滅んでる可能性があるって爺ちゃんは言ってたけど……」


 当然ながら、ゲートはエデン側だけでなく、ダンジョン側にも存在している。

 このゲートは爺ちゃんの世界の人であれば通行可能な筈なのだ。

 なお、爺ちゃんの息子である父さんも通ることはできるがチキウに行くことに積極的ではなく、また、実力的にソロでの地上行きは許可されなかった。


 俺? 俺は爺ちゃんが見せてくれたデバイスに保存されていたチキウの文化に興味津々で、そのために鍛えたと言っても過言ではない。


 これは、そんな俺が地上を目指す物語だ。

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