星を継ぐ者

 私は、戦う。


 憧れだけじゃなく、自分の意志で――。




 夜の街に、不気味な霧が立ち込めていた。


 ナイトメアが現れる予兆。


 黒江さん──詩乃と並んで屋上から見下ろすと、黒い影がいくつも蠢いていた。


「いつもより多い……?」


「ええ。まるで何かを待っているみたいね」


 詩乃が低く呟いたそのとき――。


 街の中心に、巨大な影が降り立った。


 ナイトメアたちとは違う、禍々しい存在。


 それは、まるで人型をしていた。


「まさか……!」


 フィリオが震えながら言った。


「“堕ちた魔法少女”だ……!」


「なに、それ……?」


「魔法少女が絶望に飲まれると、ナイトメアの王になることがあるんだ」


 私は息を呑んだ。


(そんなことが……)


 そして、その“堕ちた魔法少女”が顔を上げた。


 見覚えのある衣装。


 見覚えのある髪。


 ――スターリア。


「嘘……」


 私が憧れた、あの人が。


「凛! 呆けてる場合じゃないわよ!」


 詩乃が叫ぶ。


 スターリア――だった存在が、ゆっくりとこちらに手を伸ばす。


 空間が歪み、黒い光が溢れ出す。


(くる――!)


 私は変身を遂げ、魔法少女の姿になる。


「スターライト・ブレイブ!」


 渾身の魔法を放つ。

 しかし、黒い波動にかき消された。


「なっ……!」


 次の瞬間、衝撃が走る。


 吹き飛ばされ、ビルの屋上を転がる。


(強い……!)


 まるで勝ち目がない。


 私が憧れた人が、こんな姿になってしまうなんて――。


「キミは、どうしたい?」


 フィリオの声が、耳元で響いた。


「スターリアに憧れていたキミは、どうしたい?」


 私は、拳を握る。


 このまま、逃げるの?


 違う。


「私は――」


 震える膝を押さえ、立ち上がる。


「私は、スターリアを救いたい!!」


 その瞬間、私の心に光が灯った。


 ――眩い輝きが溢れる。


「なっ……!」


 フィリオが驚いた声を上げた。


「スターリアの力が……完全に覚醒した!?」


 私の身体を、温かな光が包む。


 今までよりも、ずっと強い力が流れ込んでくる。


(私は……スターリアの後を継ぐ者)


 私は、空へと舞い上がる。


 黒い影が手を伸ばしてくる。


「ごめんなさい……! あなたを、解放する!」


 私は、彼女の胸元へと飛び込んだ。


「スタァァァァライトッッッッ・イクリプスッッ!!」


 私の全身から、眩い光が溢れる。


 世界が、光に包まれる。




 気づくと、私は夜空に浮かんでいた。


 腕の中には、光の粒になりかけたスターリアがいた。


「……ありがとう」


 彼女は微笑んだ。


「あなたが、私の願いを継いでくれたんだね」


「スターリア……」


「もう、あなたの番よ。魔法少女・スターリア――いいえ。あなたの名前で、戦って」


 光の粒が、空へと消えていく。


「……約束する」


 私は、そっと誓った。




 夜が明けるころ、私は屋上に戻った。


 詩乃が、珍しく微笑んだ。


「……まあ、悪くない戦いだったわね」


「詩乃……ありがとう」


 詩乃は、照れ臭そうにそっぽを向いた。


 フィリオが肩に乗り、にっこりと笑った。


「キミは、もう立派な魔法少女さ」


 私は、夜空を見上げる。


 そこには、ひときわ輝く星があった。


 スターリアの名を継いだ私は、ここから始まる。


「私は――白崎凛。魔法少女として、戦う!」

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あこがれの魔法少女――私が私になる物語 清泪(せいな) @seina35

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