とあるMETIの結末
透峰 零
憧憬よさようなら
なぁ、人類が宇宙に憧れたのはいつ頃からか知っているか?
いきなりなんだ、って言われてもなぁ。ただの雑談だよ。君だってさっき、夜の博物館の巡回なんて不気味だし暇だって言ってただろう。
それで、どう思う?
……はは、残念。ハズレ。アポロが宇宙に行ったのは1969年。そんな近代じゃない。
そもそも、人類が地球を天体だと認識したのは紀元前にも遡るんだからね。
それで、結局いつなんだって?
慌てるなよ。君の悪い癖だ。
結論はね、紀元前3000年。古代ギリシアだ。
気づいたかい? そう、僕らの前に展示されているこのオーパーツが発掘された時代だね。アンティキティラ島の機械と同時に発見されたのに、どの国も、どの研究機関も口を噤んだ、こいつだよ。
何千年も経ったのに錆一つ生じないし、材質も不明なこのキューブ。
……こいつはね、
また話が逸れるけど、君はパイオニア探査機の金属板を知っているかい? 知らない。じゃあ、ボイジャーのゴールデンレコードは?
うん、その通り。あれは
目の前のこいつもね、そうなんだよ。
これは、数千年前に君たち地球人に異星人が送ったメッセージなんだ。
このキューブで人類は宇宙の存在を明確に知り、そして憧れを抱いた。
君たちはこのキューブに収められたギミックの概要を、すでに999個までは理解しつつある。あと少しの時間があれば、完全に解明できるだろう。
どうしてお前にそんなことが分かるって言われてもね。僕が、このキューブを送った星の生命体だからだよ。
そう驚かないでくれ。さっきまで一緒に仲良く夜ご飯を頬張ってた仲じゃないか。まぁ、僕が君の同僚というのは嘘なんだけどね。少し君の脳を騙させてもらったんだよ。
うん、そうだよな。理由くらいは話すよ。何のためにこんな話をしたかっていうとね、このキューブを回収しに来たんだ。
なぜ、と言われてもね。時間切れというやつだ。
……僕らは、ずっと君たちを待っていた。僕らと交流するのに相応しくなるまで。
違うよ、技術レベルの話じゃない。それはもう少しで追いつきそうだと、さっき言っただろう。
待っていたのはね、文化レベルの話だ。いや、この言い方も適切ではないな。
僕らは君たちの、自由な創造性は高く評価している。もっというと、憧れてもいた。
僕らが待っていたのは、君たちの社会性だよ。君たちの社会は、あまりにも未熟だった。
同じ種族だというのに、君たちはいつまでたっても争うことを止めようとしない。
僕らがこのキューブを落とした時から、ずっとだ。
僕らは、ずっと待っていたんだ。
ずっとずっとずっと、君たちを待っていたんだよ。
いつか君たちが争いを止めて一つになり、成熟した社会となることを。
さっきも言ったけど、君たちの技術も文化も、本当に素晴らしいものだった。そこについては、とっくの昔に僕らとの交流水準に達していたんだよ。
それなのに一番大切なことだけは、いつまでたっても成長しなかった。
――本当に、残念だよ。
このキューブにはね、1000個のギミックが施されている。
そう、君たちが知らない最後の1つがあるんだよ。
それはね、時間切れの
だから、僕がここに来た理由をより正確に話すと「仕掛けを作動させた後、キューブを回収するため」ってなるね。
……安心するといい。痛みも苦しみもないよ。終わる時は一瞬だ。
どうしてそんな話をしたのかって?
そうだなぁ、ただの愚痴だよ。
だって僕らは本当に、君たちと仲間になりたかったから。
君たちが作り出すものはどれも美しくて新鮮で――僕らには決して真似できないものだから、憧れていたんだよ。
それだけは、本当だ。
――fin.
とあるMETIの結末 透峰 零 @rei_T
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