【KAC20252】あこがれは塀の中【短編】

ほづみエイサク

本編

 私にはあこがれの人がいる。

 『女子高の王子様』と呼ばれているひとつ上の先輩。


 本当にカッコよくて、絵本の中から出てきたみたい。

 身長は当たり高くないけど、逆にそこがいい!

 愛嬌もあるなんてサイキョーかよ。


 まさに理想の王子様。


 今日も眼福のために登校中。


 あ、親友が走ってきてる。

 慌ててるみたい?



「王子様先輩が、塀の中に!」



 え!?

 捕まっちゃったの!?

 なんで!?

 何事!?

 イケメンすぎ罪!?


 頭が真っ白になりながら、親友の後についていった。


 でも、そこは刑務所じゃなくて――



「なんでお城!? 日本の!?」

「ここに先輩がいるからに決まってるでしょ!」

 


 どういうこと!?

 まさかイケメンすぎて切腹するの!?!?


 周囲を見渡すと、人だかりができている場所があった。



「「「きゃ――――――――――!!!」」」



 黄色い歓声。

 飛び交うシャッター音。


 その中心には先輩がいた。


 よかった。

 無事だった。

 そう安堵したのも束の間。


 私の顔は困惑に染まった。




 お城の石積み塀に空いた、1人分のスペース。

 そこに王子様先輩がジャストフィットで組み込まれていた。


 


 組み込まれ!?

 組み込まれ!?!?!?

 組み込まれてる——————!?!?!?!?!?!?




 どういうこと!?

 意味がわかんないっ!



「かわいい子猫ちゃんたち、今日は晴れ舞台に集まってくれてありがとう」

「「「きゃ――――――――――!!!」」」



 あ、塀の中に組み込まれていてもいいんだ。


 奇妙な光景の横で、王子先輩のママが感涙しながら語っていた。

 娘の不幸を? 奇行への悲嘆を?

 そんなわけがない。



「娘は幼いころ、身長が小さくて悩んでいました。ある日、お城の荘厳さと大きさに魅了され、あこがれました。そして、今日ついにあこがれに届きました。お城とひとつになれたのです!」



 私の足は、無意識に後ずさっていた。


 目の前に広がるのは、あこがれのせいでお城の塀の一部になった王子様先輩。

 それを見てキャーキャー言っているミーハーたち。



 ……あこがれって怖いなぁ。



 しみじみと思いながら、私はカエルのような冷めた目で帰るのだった。






――――――――――――――――――――――

※今作はかの奇作『ボボボーボ・ボーボボ』 のパロディ?オマージュ?を含みます

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