そんな憧れは疾うの昔に
保紫 奏杜
願わくば
捨てた
ガキの頃、
そんなものは
「Shit……ッ」
夜雨の中、私は悪態を吐いた。
帰路を急ぎながら右脇腹を抑える手には、濡れた感覚。
仲間と合流することはできなかったが、仕事は果たした。その内にボスから何らかの連絡があるだろう。
私は
私の足は自然と部屋の奥へと向かう。
鍵を掛けていた部屋の戸を開ければ、起きていたのか、薄暗い部屋の奥で
痛みが増してくる中、私は戸を開けたまま壁に背を預けた。そのままずるずると座り込む。
気付けば、毛布に包まったままの幼子が傍にまで来ていた。
事故に巻き込まれたショックで記憶を失っている幼子は、これまで
「いたいの?」
幼子の不安げな声に、我に返った。
二つの澄んだ瞳は、確かに私を映している。
「……ああ。痛いし、
自分でも
真っ当な子供の扱いなど知らない。
近所の悪ガキ共には拳か蹴りをくれてやればいいし、私もそういう環境で育った。歳の離れた兄にとって私は都合の良いサンドバックだったし、両親はいつも喧嘩していた。いつだか父親に殴られた母親を
嫌な面々を思い出していれば、私に伸ばされた小さな手があった。
頬に触れてきた
「お前は
慣れない笑みを向ければ、愛らしい笑みが返る。
私は胸の奥が締め付けられるような痛みを覚えながら、血に濡れた手で幼子を抱き寄せた。
そんな憧れは疾うの昔に 保紫 奏杜 @hoshi117
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます