余命0秒の君と僕

いもたれ

3/23

9:48A.M.


「やばい。

 やばいやばいやばいやばい。

 今日の商談、めっちゃ大事なやつなのに...!

 ああもう私、部長なのにっ...」


和花葉わかば さえ。22才。日本でも5本の指に入るくらいの大企業で営業部長をしている。


「やばっ、もう会社いかないとじゃん!

 異動ニ日目に遅刻とか終わってんじゃん、俺。」


安城あんじょう 奏斗かなと。22才。昨日営業部に移動してきたイケメン系。

もちろんこの二人が恋をしていくことは、言うまでもない。



10:17A.M.

「と、いうことで...」

乾いた音が部屋に木霊する。

「『と、いうことで』じゃないんだよ。

 部長にもなって遅刻とかありえないと思うんだけど。

 今日の商談、電車が止まったから無くなったけど、

 次からはもうこんな失敗許されないんだからね?」

「す、すみません...」

和花葉に詰め寄っている男は、総務部のエリート、樟葉くずは あおい


「その止まった電車、人身事故みたいだけど。

 さっきニュースがあったよ。顔もわからないほど酷かったって。」


和花葉の携帯が鳴る。着信は、安城からだった。


「こちら、和花葉 冴さんの携帯で間違いないでしょうか?」

知らない男の人の声。

「救急人命センターの者です。大広病院に、至急来ていただけますか?」



<><><>



大広病院...大広病院...

えーっと、ここの角を右...いや左に曲がって...

疲れた...会社からまだ連絡は...まだ連絡が取れてないのか...

いやけど安城くんのことだし「寝坊しましたー」とか言って来るんじゃないかな...

いや、そうだと信じたい...

こんなときに限ってタクシーいないんだから...


彼女が病院についたのは、走り出した10分後だった。


10:38P.M.

「安城、くん...?」

病院に着いた和花葉は、遺体安置室へと連れて行かれる。

「つい先程、死亡が確認されました。心中、お察しいたします。」

案内してくれたのは、電話に出た救急救命センターの人だった。

「でも、なんで私を...」

「連絡先に登録してあったのがあなただけだったからです。」


そうだ。彼は、身寄りがない。

彼は、3才の頃、事故で母親を亡くしている。

そして、18才の時、ちょうど私と同級生だったとき、

父親は航空事故で亡くなっている。

彼の父は立派な政治家だった。

ただ立派がために批判が寄せられることも多かったらしい。

もちろんその息子である安城にも、嫌がらせやいじめがあったようだ。



この航空事故自体が仕組まれていたテロだとする意見も否定できないのが真実だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

余命0秒の君と僕 いもたれ @imo_tare

作家にギフトを贈る

閲覧、応援等ありがとうございます。
カクヨムサポーターズパスポートに登録すると、作家にギフトを贈れるようになります。

ギフトを贈って最初のサポーターになりませんか?

ギフトを贈ると限定コンテンツを閲覧できます。作家の創作活動を支援しましょう。

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画