第4話「お仕舞のおしまい」

 ここで情報を整理するわね。


 王子さまに捕まっているのは、主に食事担当の娘。名前はお皿からサラさん(仮名)

 ひとりは、主にお風呂と着替え担当のシャンプーさん(仮名)

 ひとりは、主にお掃除担当のクリーナさん(仮名)


 男の小人は、

 門番のキーパーさん(仮名)

 木こりのログハウスからログ(仮名)さん。

 採掘のマイニング(仮名)さん。

 猟師のハンター(仮名)さん。

 大工のカーペンター(仮名)さん。


 王子に勝てそうな小人さんはいませんね。


「サラさんは、自分のせいで白雪姫が王子に捕まると思い、悲観して死んでしまいました」


「えー死んだの? ほんとー?」


「ええ、また来年ね。さようなら」


 三人官女のひとりをケースに収めました。(やっとひとりだわ)


 王子は森を探し回ります。偶然出会ったのが木こりの小人、ログさん。


「この先は行かせないぞ」

 ログさんも嘘が下手でした。

 結局、王子さまの剣に倒れました。


「えー」


 私は五人囃子のひとりをケースに収めました。(これでふたり)


 こうして三人官女と五人囃子がケースに収まった頃、王子と白雪姫は出会いました。


「白雪姫よ僕の后になれ!」


「嫌よ。私はこの村でひとりで暮らします。今はおひとり様が流行っているのです」


「しかたない白雪姫。このりんごを食べなさい」


「わあ、美味しそうなりんご。でも、何かありそう」


「このりんごにはたっぷり惚れ薬が塗ってある。食べれば、たちまち僕のことが好きになる」


「嫌です。そんなものを食べて生きるなら、いっそう毒りんごを、食べたほうがマシです」


「だったら食べてみろ。こっちが毒りんごだ!」


 白雪姫は王子さまから毒りんごを受け取るとサックリ食べてしまいました。


 私はおひなさまをケースに仕舞いました。まだふたは開けたままです。


 王子さまは残りの惚れ薬のりんごを噛りました。

 王子は、静かに眠る白雪姫に惚れてしまいました。そして一生、眠る白雪姫を見つめる生活を送ったのでした。



 おしまい



(そう言えば、白雪姫の原作の王子さまって、白雪姫の遺体の入った棺を小人たちから買い取ってずっと眺めている描写がありましたっけ? ぶきみー!)


注)この意見は、木下歌子さん30代の主婦の意見です。


 娘はぶうぶう言いながらも、ひな人形のお仕舞を手伝ってくれました。



(来年はシンデレラの童話にしようかしら? ガラスの靴に毒を塗って履いた人みんな死ぬはなし)



 ピンポーン



 ちょうど、パパが帰って来たようです。


「パパーお帰りー」

「お帰りなさい」

「あれ? ひな人形は片づけたの? 大変だったでしょう?」

「いいえ、舞ちゃんも手伝ってくれたから。楽勝だったわ」


 今年はパパに叱られずに済んだみたい。


 おしまい

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

第1回お題「ひなまつり」KAC20251 三雲貴生 @mikumotakao

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ