第4話
私は生まれつき忌子として育てられた。魔女の証である黒髪。そして十二の頃。
「いいかい、お父さんは必ず戻ってくるから、ここで大人しく待ってるんだよ」
そうして、私は捨てられた。最初は本当に戻ってくると信じていた。だから待ち続けた。雨の日も風の日も雷の日も。だが、いくら待っても父は戻ってこなかった。そのとき初めて、私は捨てられたんだと気づいた。それでも、生きていくことはできた。魔女としての呪いの力が備わっていたから。野獣や野鳥を捕らえて食す、そのような生活を幾星霜と続けてきた。
確か、ルイスも捨て子だったな。私と同じだ。メイシアは既に決心していた。
「リザレクション!」
ルイスの体表にありったけの魔力を注いでいく。意識が朦朧としてくる。目の前がぼやけて映る。頭痛が酷い。手足の感覚がもうない。やがて、目の前が真っ暗になった。死の気配がすぐそこまで迫ってきていた。
「ルイス、私の分まで生きて……ね」
メイシアは力尽きてその場に倒れ伏した。
○
ルイスは目を覚ます。
「あれ、僕撃たれたはずじゃ」
怪我一つしていない自分の躯に違和感を持つ。ふと振り返ると、メイシアが倒れていた。
「メイシアさん!」
過去のメイシアとの会話を想起する。蘇生魔法。僕を生き返らせる代わりに、彼女は骸と成り果てた。
「何で! どうしてですか!」
メイシアの体を揺さぶるが、既に物言わぬ屍と化していた。
「僕はどうやって生きていけば……」
ルイスは途方に暮れた。とりあえず、メイシアを墓に埋葬する。最後の審判の日に、彼女に幸福があらんことを。ルイスは思いの丈を祈りに捧げた。
無人になってがらんどうとした家屋。メイシアさんとの日々を懐古する。荷物をまとめて、外に運び出した。
「メイシアさん、僕、旅に出ることにします」
ルイスはメイシアの墓に向かって呼びかけた。草葉の陰からメイシアさんは見守ってくれるだろうか。
「僕、メイシアさんのこと好きでした。さよならです。今まで、ありがとうございました」
メイシアの墓に向けて深々とお辞儀をすると、ルイスは二度と振り返ることなく、行くあてのない旅に出たのであった。
魔女と少年 夜凪 叶 @yanagi_kanae070222
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