ROZZO ~隊長とマオラ編~【R指定注意】※試作投稿段階です
M.R.U
第一章
※ ※ ※
「(原因は、俺の存在そのものだったっていうのか……?)」
森の中に拓けたように存在する、魔物討伐隊。
その簡易的に作られた門から敷地に入り、草原の中に伸びる道を建物に向かうと、一番門から遠い建物の西側の出入り口から入った食堂近くにある背後の部屋。
重厚に作られた部屋のアンティーク扉は、何人にもその権威を脅かせないような威圧感を放っているが、
その中の部屋の作りは、至って質素で、シンプルな家具しか置かれておらず、
魔物討伐隊現隊長、――ロッゾというその人物の立場と性格が感じ取れる。
その長身痩躯の男は、ただベッドに座り込み、力なく、憤りで俯いていた。
もともと痩せた体格だが、端正な顔立ちが、今は頬もこけていて、
少し生気の抜けたような、虚ろな表情をしていた。
やや長く目元に掛かる黒髪がぐしゃくしゃに顔に掛かり完全に目元を隠しても、ただ考え事にふけて振り払おうともしなかった。
「(すべて、俺がいなければなかったことなのか……?)」
0.プロローグ
遥か古から、世界創世についてはさまざまな伝承がある-―
人々は、世界の創世に関わった精霊達の声を聞き、知恵の助言を受け、技術を磨き、
その思想の元に、争いのない、豊かな暮らしを送っていた――そんな話もある
いったい何時から、人間は魔物という脅威と対抗すべくことと、常に隣り合わせの生活を送るようになっていたのだろう?
魔物という存在その物と、魔物が生み出される魔石の誕生については、様々な説が議論された。
「それが神の意志によるバランスなのだ。」という話、
古代の人が、精霊の力に頼りすぎていた為に、霊気のバランスが崩れて
出現する様になったのではないか?という話。
本当の所は、判明されてこなかった――。
今現在の人間の大陸は、7か国ほどに国が分かれる。
昔は世界中の人類をひとつを王家がまとめていた。
そのなごりであり、現在も人間の世界の中心とされる、本大陸の中心近くに位置する、ドミナント王国―
その王が、世界中至る地方の国、辺境の村民まで漏れることなきように
全人類全ての者の中から、高い戦闘能力を持った選りすぐりの者を集め、
魔物に立ち向かうべき、戦闘部隊を結成し、魔物から防衛に励んできた。
それが、幾分昔から受け継がれてきた、伝統的な、魔物討伐隊だ…。
そして世界地図の大陸の最南に、魔物の発生する本拠地だと言われる『アエリア』という地がある。
昔の時代にて、同じく魔物討伐隊が何千人という部隊を連れて出陣したところ、
全く歯の立たずじまいに一人残らず皆が、魔物にやられてしまったという
そればかりか、世界中各地に人類が滅亡しかけない被害を及ばせる結果になったという歴史があり
あくまで人間は、人間の陣地で暮らし、繁栄を守ることに専念するべきだと
アエリアに入ることは、タブーとされた。
その時に人類がもう一度復興しようと、7つの国に分かれたのが年号ドミナント歴の始まりである
ドミナント歴609年――
ずいぶんと時が経ったこの時代にて、魔物討伐隊が、ついにまた一度『アエリア』に出陣することとなった―
人々の中には、精霊の力を宿す者達
または他の得体のしれないとされる力を持つ者
魔物に対抗する大きな戦力となる能力を者たちがいた。
現在の魔物討伐隊の者達は、現隊長ロッゾ、自らの選りすぐりの人選でスカウトされ
本当に実力の優れたもの以外の入隊を許可しておらず
ほとんどが特別な力を有する者達で溢れ、
歴史上では例がないほど少数でありながら、その力は強靭な戦力を誇っていた。
しかしだからこそ、その判断は、過度の自信による、隊長のおごりだったと責められても致し方ないだろう。
結果として、そこに居た『知られざる存在』の圧倒的な力で
優秀な少数精鋭で形成された、総勢200人程の全隊員の約半分以上もの人間を失った。
その戦跡、被害は相当なもので、大敗と言えた。
それは今から7年前にも、巨大な人類の戦力の損失が起こっていた。
普通の魔物ではない、何か知的な不思議な力を持った存在による襲撃――
当時の魔物討伐隊――4000人程の隊員はほぼ壊滅。
当時の隊長も死に至り、その時にも生き残ったのは僅か100名以下になってしまったという
人類危機的レベルの事態が起こったのだ。
そんな中でも、群を圧倒的に抜き、最も活躍していたのは
魔物討伐隊・副隊長だった。その人物は、精霊の力など、特殊能力の遺伝子は持っていないとされているが
前代未聞の人類にとっての強さを誇っていたのだ。
神々しいまでの人格者とされ18歳という若さで副隊長になったそのロッゾという人物は、22歳にて異例の若さで隊長となり引き継いだ。
その時から、7年経ってのことだった――。
「(あれから、もう7年―― 『あいつら』のことを突き止めるためには、遅かれ早かれ、いずれ避けられないことだった。)」
「(いや……それは言い訳だ。)」
「(俺の存在が犯した責任は...前の隊長以上のものだということか。)」
※ ※ ※
1.
鬱蒼と葉の生い茂った森の中―
簡易的に舗装された道があるとはいえ
森の中というのは、360度見渡してもどこも同じに見えるため
本当に目的地が、今の向かっている方角であっているのかもわからなくなる。
そこには10歳くらいの少年が歩いていた。
この辺りは大陸でも魔物が多くでるとされる南の方。
子供がひとりでこのような森の中を歩いているなんていうのは、まずないような光景だった。
「……こんなところを、子供が、歩いているとは驚いたな。」
後ろから近づいてきて声をかけたのは30代くらいの商人のような木綿の衣服を着た男性だ。
その声に振り向いた少年は、
こうした生い茂った森を歩き、長い旅路にまさしく適したような顎上までのネックを覆う襟のついた長袖に足首までしっかり覆った下衣の服装に身を包んでいた。
帽子を深く被っていて、唯一露出した目元を、男性の方に向けた。
武器のような長細いポールを背中にかけている。戦うことができるのだろう。
無言の少年に、男は続ける。
「ああ……もしや君は。回復魔術や不思議な能力を使えるんじゃないか?」
帽子から覗く少年の髪色は淡いピンク色をしていた。髪色から特殊な能力を持った血筋であることが伺えることがある。
「たしかに……回復魔法は使えますが……」
その返ってきた言葉を聞き、男性は笑顔になる。
「ああ、本当か……実は仲間が魔物達に襲われてしまってね、自分ひとりで逃げてきたんだが……
頼む、よければ...助けてくれないか。」
そう言われると、断ることも特にない。
「……それは大変ですね。どちらですか?」
「ありがとう。助かる。君はこんなところで何をしているんだい?」
「魔物討伐隊宿舎に向かっていたんです。だけど道がこっちで合っているのか」
「なんだ、おどろいた、その年で魔物討伐隊の入隊希望かい。いやあ能力者ってやつは違うねぇ」
「ああもう少し先に行けば、森のそこら中に目印の遺跡の断片なんかが見えてくるはずさ。」
「そうですか。ああよかった。」
そんな会話をしながら、男性は仲間がいるところだという方向へと道案内をしていく。
「こっちに着いてきてくれてありがとうな。俺の仲間が襲われたのはもうちょっと先だ」
ガサ……ガサッ
生い茂った木蔭から、男が2人。気づかれないように身をかがめながら、彼らを観察していた。
そのうちのひとりは、30-40代ほど。自分の気配の消し方は、達人だと自負している。
頼りないもうひとりの20代程の若手の人間に指示を出しながら、うまくゆっくりと近づいていく。
「なぁ……見えるか?あの子供の髪の色」
「いえ、見えません……帽子で、よく……」
「淡いピンク色、だ……。あれは妖精族の血を継いでいる。」
「妖精族ですか……。」
「ああ……絶滅危惧の人種とされている。王様の側室と娘がその血を継いでいたんだがどっちも死んじまって、今やなお貴重な存在だ。
……高く売れるぜ。それにあれは……女の子、だな……あの年頃の少女とくりゃ、高値がつく。」
「へえ……なるほど……。」
こんなところを歩いていようとはそこそこの武力があることくらいはわかってる。
だがこちらだって素人じゃない。
そうだ、俺が今の仕事についたのも今から30年程前……丁度あの子くらいの年頃の頃だった。
俺に見つかることが、運が悪かった――
慎重に、全力を尽くしていく。そのためにはまず、見つからないことだ。
会話をしていた2人は会話をやめ、静かになり近づいて行き、息を潜める。
「この辺りのはずなんだが……おかしい、誰もいないな。」
少年は、男性に道案内されたところまでついてきたがそこには誰の姿もなく、
男性が辺りをよく見渡すために先へと進んで少し離れた。
――その時だった。
ガサガサッ―ー!
少年の両脇の木蔭から突如物音が響き渡る。
「ォォォォン!」「ワォォォン!」
それは、黒い2つの影のような、狼の形をしたものだった。――魔物だ。少年に左右両方から襲いかかる。
「うわっ!」
男性が驚きで声をあげたが、
少年は、顔色も変えず、腰に背負っていたポールを手に取る。
「(今だ!)」
少年が、魔物に意識を向けて気を取られる瞬間――この瞬間を待っていたのだ。
すかさず隠れて近づいてきていた男2人が、少年の後ろから、更に2人同時に襲い掛かる。
「?!」
全力を尽くして、隙をつく。作戦は万全だった――つもりだった。
「ギャワン!」「グゥン!」
しかし魔物達2体がやられて転がる音が聞こえるが、その動きには隙どころか、その姿すら目に映ることがなかった。
「ぐはっ」「があ!」
そして自分がどのようにしてやられたのか、理解する間もないまま、男達2人も同時にその場に倒れこむ。
すべてが秒速に終わり。何が起きたのかわからない。
少年に襲い掛かろうと木蔭から飛び出し倒れた男たち2人の姿を見て、少年と一緒にいた男は迂闊にも思わず叫んだ
「ひっ!お頭!!」
「…………。」
その声を聞き、少年はじっと男性に詰め寄る。
「仲間...だったんですね。ひどいな。騙すなんて。」
――ゴッ!
その男にも何が起きたのか目で捉えてみることは敵わず、鈍い音だけが響き、意識がなくなり、倒れた。
静かになった辺りに、少女はふぅっとため息を尽いた。
「(やっぱり、師匠の言った通り、なのかな……)」
目がついてしまったのだろう髪を指で触っていじくる。
「……さっき、この人が魔物討伐隊宿舎までは、もうちょっとだって言ってたよね。」
倒れた男たちを横目に一瞥し、少女は、また元の道へと戻っていった。
※ ※ ※
男から聞いていた通り、森の中に古代の建造物の瓦礫がちらほらと見え始め、傾斜した坂道を上がり切ると、
急に目の前に広大な野原の敷地と、その向こうにそびえ立つ巨大な建物が姿を現した。
「よかったー。やっとたどり着いた...。」
魔物討伐隊の寮は、古代の遺跡とされる建造物を改修して作られていた。
昔、大陸の南、アエリアに最も近いとされる都市があり、なんらかの理由に滅亡したと考えられている。
最も魔物の発生地に近いため、シンプルにその戦闘のためであると推測されるが
今となっては、その都市の跡地はただの森となっていた。
しかしそこに一際大きな円形の建造物が、木々のない原っぱに目立っていた。
それは古代の円形闘技場、コロッセオのようなものであると思われる
元から数千人もの人間が住める簡易的な設備が用意されていたようだ。
そこで、もっともアエリアに近い土地で、魔物達からの防衛を兼ねて、隊の人間が住めるように改修して使用するのにぴったりだったのだ。
今の隊長が就任してからは、200名程しか隊の人間は存在していなかったので、もとからその巨大な敷地を余らせていた。
……なので、一ヶ月程前の、アエリアへの出陣の際の、『未知の存在』からの圧倒的な襲撃で建物の崩壊した一部分が、
未だ修復されておらず、瓦礫の跡がそのままになっていた。
簡易的に作られた門には特に見張りのようなものおらず、自分の手で開けて、中へと入り、そして閉めておく。
草原に石で作られた小道を進んで建物へと近づいて行く
はるか古代の遺跡を、王が建て直し人が住めるようにしたという魔物討伐隊宿舎――
「(ああ……ひさしぶり……だな。よく覚えてる。本当にひさしぶり。)」
建物を前にすると、少女に昔の記憶が蘇る。
とりあえず管理室に相当するであろう建物の手前に別途建てられた小さな小屋を見つけ扉を開けた。
ギィィ――
大きな扉が、大きな音を立てて、開かれる。
「あら……なんの様かしら?……お嬢ちゃん」
出迎えたのは、切れ長の目つきの端正な顔立ちの、腰まで届くストレートの長い青い髪の女性だった。
魔物討伐隊内の管理の人間――という訳でもない。
その役目をよく務めるが、それでもいまここにちょうどよく座っていたのは、偶然に等しかった。
少女は、その女性を何か思うことがある様に、じっと見つめた。
「……。えっと…確か。……ルゾーティさんだ。」
「え?」
名前を呼ばれ、驚いた女性は、帽子の下の少女の青い大きな瞳を覗き込んだ。
少女が帽子を外すと、淡いピンク色の髪の毛が、ランプの照明に当たって輝いて見えた。
癖っ毛の短い柔らかい髪を、手櫛で軽く掻くと、自己紹介をした。
「私……マオラです。覚えていますか?」
その名をマオラと名乗った、
自分を見上げる、まるで美しい作り物の人形の様な愛らしい大きな瞳の少女を数秒見つめて、ふと思いだした様に、
大抵の事では動じないルゾーティという女性も、今日は珍しくとても驚いた顔を浮かべる。
「思いだしたわ……。マオラちゃんね。……生きていたのね。それは喜ばしいことだわ。」
「……で、一体また、急にどうしてここに?」
「入隊、希望です。」
揺るぎない声でそう答える。
「……そう。なるほどね……。」
このルゾーティという女性は、熟練の僧侶として能力者であり、人が放つ波動から、その人の大抵の事が
まるでその切れ長の鋭い眼差しで、刺して取るかのように、一瞥でわかってしまう。
目の前にいるまだ10歳ほどの小さな少女の実力が、
掬い取ることができない程のものだということに気が付き、驚きを隠せず、若干、身を緊張させた。
「今まで……一体何があったっていうの……」
「…………えっと。」
ルゾーティの緊張した面持ちに、何から話せばいいか、返す言葉が見つからず、ルゾーティを見上げて見つめた。
ふつうの子供と変わらないあどけない態度だ。
「……なるほど、そういうことなのね。」
ルゾーティは、人の心の中を読み取れる。すべてではないが、概ねのことはわかった。
1人納得するルゾーティに、マオラはぽかんとした表情を浮かべる。
「あいつ……ロッゾ隊長ね。……ああ、あの様子じゃ今入隊試験なんて出せるのかって思うんだけれど……」
そしてルゾーティはいろいろなことを思い、考え。ため息をつく・
「あの……なにがあったのか、教えてください。」
マオラは、魔物討伐隊が一ケ月前にアエリアでそういうような事があったという事だけは耳に入れさせられた。
だからこそ、まだ11歳の身で早いと言わず、入隊を決心したのだ。
「ええと……まあ、お話をするにも、とにかくにも……ロッゾを呼んでくるわ。」
「はい……、……ロッゾ隊長に、会わせてください」
「そうね。もちろんあなたが来たって言ったら、驚くとは思うわ」
ルゾーティはふぅ、とため息を吐き、心を落ち着かせると にっこりと穏やかな笑顔を、マオラと呼んだ少女に向けた。
「あとで私ともお話をじっくりしましょう。今の魔物討伐隊のことも、あとでいろいろ教えてあげるから。歓迎するわ。マオラちゃん。」
2.
森の中に切り開かれたように存在する魔物討伐隊厩舎の敷地は広く、一面の草原に太陽がよく当たり気持ちが良い。
今となってはその広大な敷地を余らせて、ガランと閑散した雰囲気ができてしまっているが
そのさまざまなところに、それぞれが自分の能力に合わせて訓練するための設備を自ら作り、修行に励んでいた。
「リリエフ。……おまえはちゃんと休んでいるのか?」
そのひとつの区画に、他の隊員と比較しても尋常じゃない程に精を上げて励む、20歳くらいの少女がいた。
青い長い髪をつむじ風のように無駄のない動きと共に揺らしている。
そこにひときわ目立つ、長身痩躯の男が現れ、訓練に一時中断をさせる。
「ロッゾ隊長……!」
その声に我に返り、その場に直立する。
自分の力が、もしあと少しでもあなたに近くあったのなら――
一か月前の大敗時には、なおそう思わされた。
「リリエフ、お前は十分すぎるほど良くやってくれていたよ。」
グイニスとリリエフー―その2人はもともと隊長が隊長となり自らスカウトした者たちの中で
人類を救うほどの力があると、一目を置いていた2人だった。
昔から10番隊まである伝統の魔物討伐隊だったのだが、若き2人に6番隊と7番隊隊長を任せていた。
一か月前、半分もの隊員を失ってしまった中でも、なお活躍していた2人には
ついにそれぞれの隊を2番隊と3番隊に引き上げることにした。
もっとも、まともに機能していない今、ほとんど形だけなのだが。
なので、それに応えるべく、一心不乱に精を励んでいたのだ。
人類トップクラスと言われているのに。それが謎の敵の前にはまったく歯が立たないなんて、あってはならない。
「……あまり力みすぎるな。だが出会った時もそうだったな。お前は賢明に努力して、結果としてそこまでの強さを手に入れることになった。」
お前は優秀だよ。自信をもって誇ると良いさ。だがお前ひとりが焦って……どうこう解決できる問題でもない。」
リリエフにそう語り掛ける隊長の頬はこけていて、どこか生気も失われていた。
「……そういう隊長こそ、休んでいるんですか?」
「ああ……そうだな。」
言われた通りだ。考え事ばかりでもともと寝つきはあまり良くない方だが、あまり寝れてもいない。
こうして他の隊員の訓練に視察に来たことなんて久しぶりで珍しい。ただ、少し話をしたかったのかもしれない。
しばらく会話を交わし、隊長は他の隊員の元へ行くらしく去って行った。
リリエフは言われた通り休息をとるようにし、訓練の続きを再開した頃、また他の人間がリリエフの元へとやってくる。
それは10歳程の少女だった。まったく見かけたこともない。
「……リリエフさん。ですか?」
「あら。あなたはだあれ?」
「私は、マオラって言います。入隊希望者です。……ここで生まれて育ったんですよ。赤ん坊の頃は。」
「へえ。そんな子が居たなんて。知らなかったなぁ」
「リリエフさんが、トップクラスの実力を持っているという話しはルゾーティさんからお伺いしてます。
入隊試験の前ですが。さっそくお手合わせをお願いできませんか?」
その年齢にしてまっすぐな背筋でそう語る少女に悪い気はしない。
「いいわよ。」
少女が真剣であることが伺える。リリエフも、相手の年齢がまだ幼いからといえど、全力で答えてみせようと示す。
それでは。と枝を投げ、地面に転がり落ちるのを合図にする。
リリエフは木刀。マオラはポールをそれぞれ構える。
「(……!速い……!私が、見切れないなんて……)」
開始と同時に、マオラはリリエフの後ろを取ろうと動いた。それを理解したので、横から素早く木刀で制そうとしたのだが
すらりと身軽に交わしたかと思うと、マオラの方からの一撃、それを止めた暁には、もう、姿が見えなくなっていた。
マオラは、自分の背後にいる。それだけは理解できた。
「なんてこと……まいったわ。」
ほんの数秒のことでリリエフはその言葉を口にし、決着がついてしまった。
なにせ、『見えなかった』のだから、勝てるとは思えない。
マオラも、ふぅっと息を吐き、呼吸を楽にする。ずっと緊張した面持ちだった。決して楽になめていたわけではない。
「あなた……一体何者?」
「私も……ずっとこのためだけに生きてきましたから。」
「そう……なるほど。」
リリエフはそっけなく返事を返す。認めるが、しかしショックだ。リリエフも幼き頃から選ばれた人間として
ずっと戦うために励んできたのだが、敵わない人間もいる。昔、それをロッゾ隊長に見せつけられた時のような、
何か底の知れない強さのようなものを、この少女からも感じ取ってしまった。
「あの……ロッゾ隊長はどちらでしょう?」
ルゾーティがロッゾを呼んでくると行った時、しばらくして戻ってきて訓練所にいるからこっちに来てくれと言われたのだ。
「さっき、私のところに来ていたわね。そうね……グイニスのところにでも行ったんじゃないかしら?」
「わかりました。ありがとう。リリエフさん」
訓練所に来るように……と言われても、もとは4000人が使っていた敷地だ。あまりにも広い。
他に誰もすれちがわない一面草原の小道を歩き、やがては案内された人物が訓練をしているところにたどり着くことができた。
「……だれだい?キミ。」
グイニスというリリエフと同じくらいの年頃の青年は褐色の肌に金髪の髪をややぞんざいに束ねヘッドバンドでかき上げている。
いつも通りの場所でいつも通りの鍛錬をしていたところだ。そこに見覚えのない少女がやってくる。
「私。マオラって言います。入隊希望者です。」
「へえ……そうかい。」
しかしそう聞いては対して驚きもしない。
「あなたがグイニスさんですよね?私。ロッゾ隊長を探しているんです。」
「ここには来ていないけどな。なんで俺のところに、」
「リリエフさんのところにさっきまで居たからこっちに来たんじゃないかって」
「なんだって?リリエフが?そうか。」
ここ最近は一ケ月前の大敗からの立て直しが効いておらず、隊長も他の隊員の活気も落ちていて
訓練もいつも通りではあるがほとんどが自主によるものだったので
隊長が来るというのはめずらしい。しばらく待っていれば、来るかもしれないという。
「あの……グイニスさん。お手合わせをお願いできませんか?」
そしてマオラは背筋の伸びた真っすぐな瞳で頼み込む。
「お手合わせ……ねぇ。まあ、構わないよ」
まだ年端も幼い少女の事を決して小馬鹿になどしていない。やると言うのなら、全力で応じようじゃないか。
さっきリリエフとやった時のように、グイニスは手持ちに持っていた飛び道具を宙に放り投げ、地面に落ちた瞬間を合図とした。
2人が構える。グイニスは、ついこないだ2番隊隊長に任命された。
番号が若いというのはそういうことだ。ロッゾ隊長の隊に何かあった際には2番手に動くのはグイニスになるということ。
まだ19歳のグイニスには荷が重い。
しかしなぜそこまで彼が信頼されるに至ったのか――それはいちばんの理由は、超能力により、見えるからだ。
遠く広範囲の敵からの襲撃も。数秒先の攻撃を見切ることも。指示をし、真っ先に動くことにまさしく打ってつけだ。
しかし――それが、この少女の動きに関しては見切ることができずに『消えて』しまった。
「……!!!」
マオラは、動きだして瞬時に、グイニスがこちらの動きを読める能力があるということに気が付いた。
となれば前に詰めても仕方がない。かと言って、露骨に後に離れ、それを相手に読み取られても仕方がない。
なので、前後左右に攪乱の動きを混ぜて移動する。グイニスはそれを始めは「読む」ことができた。
しかし――瞬時の間に、マオラはグイニスの背後にいた。
「……そこまでだな。」
その瞬間ははっきりと見届けられていた。
やってきたのは、ひときわ目立つ、長身痩躯の黒髪の男。
その声に反応し、2人は、はっと振り向く。
「キミが、マオラか――?」
小柄であるマオラを背が高い男は上から覗きこむような形で近づいてくる。
「ロッゾ隊長――はい、おひさしぶりです。」
――やっと会えたんだ。マオラの胸の奥から熱い想いがこみあげてくる。
マオラは少し、緊張しながら被っていた帽子を脱ぎ、口元まで隠れた立てたネックの襟を降ろし、顔を露わにした。
ふわふわとした軽い癖毛の淡いピンク色の髪、白い透き通るような肌に大きな蒼目が映える、美少女だ。
ロッゾはマオラの自分を見て来るその瞳に一瞬だけはっとさせられる。
さっきまで男の子か性別の見分けもつかなかったのだが、髪と肌が見えると途端に違う。
分厚い服の下も華奢なのだろう。一体どのようにして、このような戦闘能力を身に着けたのだろう。
その世界最強と言われる魔物討伐隊隊長の目には、すべてを見抜くことができた。
「ずいぶんと成長して。逞しく育ったんだな。」
感嘆の他何もない。なにせ、超能力のあるグイニスを出し抜くことができたのだから――
「はい。魔物討伐隊に入隊したくて、戻ってきました。」
「そうか。入隊試験は、今のを見届けさせてもらったからな。合格。文句なしだ。」
マオラは安堵して喜ぶ。だって、今日、このために生きてきたのだから。
「マオラ……聞かせてもらうぞ。あの時いなくなって――いったいどうやってそこまでの強さを身に着けて生きて来たんだ?」
新しい隊員の入隊準備と共に、その長い歩みの話を、聞かせてもらうことにしよう。
3.
ドミナント歴601年――
すでに圧倒的な人類最強との噂も確固たるものとされていた副・隊長ロッゾを備えた魔物討伐隊は
その力と知恵も、今までになく壮大なものとして動くことができていた。
なので、その当時の隊長、ザロップはあまりにも調子の良い現状に、見誤りをしていたのかもしれない。
魔物達は、突如発生する魔石から誕生する。その魔石自体の大半は、アエリアの森から発生するのだが、
数年に一度は安全とされる北方での発生の報告もあるし
そういうわけで、世界中の至るところに同時に隊員を派遣し、魔物が誕生する前の魔石の破壊から、
魔物討伐の一切を制覇しきるということができていたのだが
少し行き過ぎていたというのだろうか。アエリアの森の周辺の魔物達も倒しに倒し尽くしていた。
そんなある時だった、それは力を持った何者かによって、魔物討伐隊の隊員が次々へと襲撃され、殺されに殺された。
国や街への被害はそれなりに抑えられたものだったのは幸いしたが。主に魔物討伐隊隊員たちを狙っていたと思える。
そのどれだけ遠くからでも正確に襲撃する圧倒的な魔法は、人間の物でも、魔物のものでもなさそうで
この世に魔石というものを生み出している魔人のような存在がいるのではないか――という話しは以前から議論をしていたことはあったが――
その何者かがいる――はっきりそう結論ができた。
魔物討伐隊は、あっという間にその存在そのものが存続できなくなるほどの壊滅状態に追いやられた。
4000人近い大半の者たちが――死に追いやられた。
当時の隊長、ザロップはそうして亡くなった。
生き残ったのは、運の良いものか、ほとんどがロッゾの近くの元で動くことができていた100名余りの者たちばかりだった。
そうしたボロボロの状態の中で――、、正式にロッゾを隊長とすべくドミナント国の王城に呼ばれた時のことだ。
複数名の隊員とそこには4歳の少女が一緒に連れてこられていた。
「それでは...その子が」
「ええ..、あなたの娘、マリーネの忘れ形見ですね。」
「おお...なんていうことだ...マリーネ...、メリー!!」
王は感涙しながら、今は無き娘と、側室の妻の名前を呼ぶ。
王の側室の妻は妖精族の血を引く者。そしてその娘は特に能力が強かったため、自ら魔物討伐隊に参加したいと志願して入隊していたのだ。
そして今回の件で、魔物討伐隊内で恋仲になった男と諸共に死んだ。
側室のメリーも、自分の魔力で何か役に立てないかと街に飛び出したせいで死んだ。
悲報に暮れていたところだったのだが、しかし4年前に魔物討伐隊内で生まれ育った孫娘がいたという。
側室の子供と平民の男の子供で、王家の血を引く者というのは立場が複雑になってしまうので、その存在を今まで黙って育てられてきたのだが...。
その両親が共に死んでしまったのだ。もはやその少女、マオラが魔物討伐隊にいる理由はなく、こうして王城に連れてこられたというわけだ。
本来ならそうと早く決まるものでもないのだが、身内の死に傷心気味の王は、是非とも孫として正式に受け入れたいと申し出た。
その時のことは――マオラもなんとなく覚えている。
だがまだ4歳だったので、城に来てからの様子はぼんやりとしていて、もっとはっきりと覚えている記憶の部分は
襲撃を食らう魔物討伐隊宿舎に、応戦する隊員、見る間にどんどん打ち負かされ、亡くなっていく隊員達――。
そんな中に現われて、幼いマオラを抱き抱え、助けてくれた魔物討伐隊副隊長のロッゾ――
両親が亡くなるところは直接見てはいないが、辺りの騒動から察していた。
これだけの惨事なのに、怯まず、力強く、僅かに残された道を選び抜き、正しい判断で、残りの隊の仲間達を鋭く助け抜いたこと。
ロッゾという人物は、強くて賢く、正しく、格好良かった――あの時のことは忘れられない。
お城の中で、自分が王の孫に当たる血縁者で、これからここで住まうことになるという話しが進められても、どこか他人事のように感じていた。
王の7人目の後妻、マオラの祖母メリーが住んでいた後宮に、以前に娘のマリーネが住んでいた部屋もあり
マオラが住む場所もそちらの方へとあてがわれる準備をされていたのだが、
その時に、マオラは消えてしまった。
マオラが賢かったため、油断して誰も見ていなかったのだ。マオラは退屈を感じて、自分で敷地を歩き回り、
そしてメリーが所持していた妖精族に伝わる家宝などが保管されていた倉庫へと足を踏み入れた。
隈なく捜索は行われたので、そのことまでは突き止められた。
その家宝の中に、空間ワープなどを行う魔道具があったのではないか、調べつくしたものの、結局はわからずじまいになってしまい、
世界中各地へと転移した可能性を見て捜索が行われたが、決して見つかることがなかった。
しかし。それはこうだった――「最後の契約」という名前のつけられた、絵画によるものだった。その力も一度切りのもので二度と形跡は見せなかったのだ。
まだ幼いマオラがやってきたことに光を示し、そしてまばゆい光に包まれ、マオラは消えた。
意識がはっきりした時――マオラは簡素な森のログハウスのようなところにいた。
そこには一人の老婆が。
「おや。なんだいあんたは。」
突如家の中へと現れた少女に、問いかける。
マオラはきょとんとしている。
「契約……私のところに訪れる……最後の……そんなものがあったか……」
ぶつぶつと頭を回転させてはっと思い出す。
「あんた、妖精族か?」
「たしか……お母さんがそう言っていたとおもいます……」
「なるほど。そういうことか。」
老婆は、納得をする。年は齢100歳近いのではないか、かなりの皺の数をしているが、
その声ははっきりとよく通る鋭いものだった。
まだマオラには幼く、いろいろなことがよくわからなかったが、
老婆はルプンテと呼ばれる、昔にはそれは名の知れた人物だったらしい。
その気になれば、世界のすべての権力を持つことができてしまうほどに。
そんな彼女には、昔に妖精族の女王の友人がいた。
もはや妖精族と人間が交わることはない。老婆は最後に妖精族と会話をした証人だ。
「あんたは妖精族の女王の血が混じった、最後の人間になったわけだ」
それを、人間の中で最も偉大な存在となったルプンテの元へと託す、最後の契約……。
ルプンテは、たった数日前、なんの情報源もない森の中だが、魔物討伐隊が崩壊したことも知っている。
そしてそれが何故起きたのか、だいたいの知識からの予想はついていたが
もはやそれを伝えるべきかどうか、特に託したい人物もおらず、何十年にも渡りただ隠居生活を送っていた。
事を動かすべきか、魔物討伐隊には、ちょっと気になる人間が現れたことも知っているが……。
そこに、少女が訪れた。
ルプンテはやや困ったような、悩んだ顔をしていたがすぐに決断はついた。
「わかった。お前さんを、今日から私の弟子として育ててやるよ。」
マオラは呆けていたが、ただ黙って、ルプンテの話をよく聞いてその視線をはっきりと見つめて合わせていた。
「私が鍛えるからには。めちゃくちゃ強くしてやる。覚悟しておけ。」
4.
「隊長は、師匠のことを知ってるの……?」
「ああ……ルプンテというその名は、世界最強と言われた人物だ。……60~70年も前のことだがな。」
「そっかぁ。師匠も自分でそう言ってたなぁ」
ロッゾは、隊長の身だが自らマオラに対して魔物討伐隊敷地内の道案内をしながら、マオラから今までの身の話について聞いていた。
マオラはそうして、師匠となったルプンテの元で毎日修行に明け暮れることになったという。
朝から晩まで、ただただ、この世界に通用するただひとりの人間になるために。
ただ、マオラはルプンテに対して、隊長のことを話していた。
今の世界最強の人間は、ロッゾという人物であり、決して自分が超えるようなことはできないと。
その今までの生活と言えば、趣味や娯楽といったようなこれといったことをすることも、ルプンテ以外の人間と話す機会もほとんどなく、
ただ――隊長のことを思い出すことは両親のことを思い出すよりも好きだった。
当時のことを、悲惨な記憶というよりも、隊長がどれだけ素晴らしい人間だったかをよく刻まれた記憶となっていた。
だから、ついにこうして魔物討伐隊に入隊し、ロッゾと再会し、こうやって話しながら歩いていることにとても嬉しく思い、緊張と高揚が入り交っていた。
記憶と、想像の憧れが入り交じり。そして今日実際に対峙することができたのだ。その姿を見つめて、胸が高鳴っている。
ロッゾ隊長は、7年前から何も変わっていない。と思う。なんせ幼かったのだから。
黒髪の長身痩躯の身体。端正な顔立ちで、威風堂々たる威圧感を放つ切れ長の鋭い目つきからは厳しさとやさしさの両方を感じ取れる気がする。
しいていえば、今は少し、更に痩せたかもしれない。頬もこけているようだった。
「まさかマオラがこんなにも強くなって戻ってくるなんてな。思いもしなかった。」
「私……そのために生きてきたから」
自分が生まれ育った場所。両親が生きた場所。
そして――ロッゾという想いの人物と出会った場所。
敷地を見渡し、少し照れながら、意を決した様にマオラはロッゾにギュッと抱き着いた。
「あの……ロッゾ隊長……また会えて、嬉しいです……!!」
「マオラ……大きくなったな。」
ロッゾは寄せて来たその小さな体を、幼き頃と同じように抱き上げる。
遠目には少年と見分けがつかなかったが、抱えてみると、すでに女の子らしい体付きをしていた。
マオラは近くなった隊長の顔にドキッとする。
「あの……好きです」
そして。今まで寄せてきた思いを込めて、その唇に大胆にキスをした。
マオラは作り物の人形かと見紛うような絶世の美少女だった。
この行動にはロッゾも少し不意を打たれた気持ちになった。
「!……おっと……」
ロッゾはマオラの体を降ろすとマオラはロッゾの体にしがみついて話し出す。
「私、ロッゾ隊長にずっと憧れてました。
いつかはまた、魔物討伐隊の寮に戻って、ロッゾ隊長と一緒に戦って生きるんだって、それだけのことを考えて生きてきた。」
「ああ……歓迎するさ。その年齢で、その実力を身に着けるのはどれだけ途方もない努力をしてきたかわかる。」
「だけど大人の男にそういうことをしない方がいい、このまま俺の部屋にまで案内されたらいけないだろ。」
マオラはロッゾの言った意味がわからなかったのか、それともわかっているのかあどけないきょとんとした顔をしている。
「さて、そろそろお前にあてがわれる部屋の案内だな、ルゾーティにしてもらうといい。」
「……はい。」
恥ずかしそうにコクンとうなずいて去っていったのでなんとなくの意味はわかっているに違いない。ずいぶんと可愛らしい。
5.
魔物討伐隊の寮は、建物自体は数千年前のものと言っても、さすがに王立で管理されているせいか
マオラが今まで住んでいた森の中での隠居暮らしのルプンテのログハウスよりは、大分心地が良い。
案内された部屋は一人が寝るだけのものなので簡素に必要なクローゼットや机と椅子、そしてベッドがあるだけだが
十分広く、ベッドはふかふかだった。窓から見下ろせる景色も見晴らしが良い。
「他に必要なものがあったら遠慮なくいってね。マオラちゃん。」
「ありがとう。ルゾーティさん。とりあえずだいじょうぶです。」
もうじき日が暮れるだろうか。マオラは厳しく想像していたよりも今までに比べてずいぶん真っ当な生活がこれから送れそうで少しワクワクとする。
部屋から出て近くにあるロビーのようなところで魔物討伐隊内での話のあれこれをルゾーティから聞いていると
そこに眼鏡をかけた金髪碧眼の20代程の男性がやってきた。
「やあ。マオラちゃんが無事に戻ってきたって聞いて喜ばしい限りですよ」
童顔で優しそうな顔でほほ笑んでいるが、マオラは呆けている。
「マオラちゃんはボクのことは覚えていないかな?いやあ残念だな。」
「ごめんなさい、あんまりよく……。」
彼はルロスと言い、ルゾーティと共に内勤を務めるか、もしくは隊長と行動する1番隊にいることが多いらしい。
そして彼はドミナント王の側近の近衛隊隊長の息子で、王城から直接魔物討伐隊へと派遣されて入隊した人間で、
王室と行ったり来たりすることもあるため、いつも戦の遠征に参加できるとは限らないそうだ。
しかし、本人は戦闘は向いてないと自嘲しているが、それでも実力は相当なもので、ロッゾが15の頃、魔物討伐隊に入った時からの付き合いであり、ロッゾからは信頼されているらしい。
ちなみにルゾーティはと言えば、ロッゾと同じ村の出身で、その村が滅ぶ時、一緒に逃げ出した子供の時からの付き合いということらしかった。
そんなに深い関係だったなんて、マオラはルゾーティのことを羨ましく思った。
そしてその実力は、戦闘はたいしてできないというが……、どこか隠しているような気もする。
さて、日が暮れて夜になると、ミーティングと夕食の時間だ。
王からの配給では食料品は特に手厚く、王室から派遣された一流の料理人が雇われた食堂があった。
それは貴族で行われるパーティの様な食事……とまで行くのかはわからないが、少なくとも村人なんかが口にする機会はなさそうな食材がふんだんに使われていた。
朝食と昼食は自由だが、夕食時は現在宿舎にいる隊員全員が集まり、全員一緒にとる。そしてその日のミーティングをその前後のどちらかに行う。
今日のミーティングの主役は、マオラだ。隊長と一緒に他の隊員達の前に出てくる。
「この子が、今日から入隊することになった、マオラだ。よろしくな。それで――」
「隊は1番隊。俺の隊で共に行動してもらうことにする。」
そこで少しの声がガヤついて聞こえた。
そんな突如やってきた得体の知れない子供がいきなり……とつぶやいたものがいたのでロッゾは聞き逃さなかった。
「マオラは、得体の知れない子供なんかじゃない。この子はここで生まれ育っている。逝去した隊員マリーネとヴァートの子供だ。それにドミナント王の孫でもあり、妖精の女王の血も引いているという。歴とした身元があるな。……得体が知れていないというなら、俺やグイニスなんか、身元がわからない。むしろ俺達になるな。」
知らない者たちにも含めて説明をする。隊長の力説を聞き、すぐに皆が納得したような表情をしたように思える。
昔に人類の支配者になり得る、世界最強と言われた人物、ルプンテの元で育てられたという説明はないが。あまり言いふらす話でもないのだろう。
「よろしくおねがいします。」
マオラには特に感情はなく、軽く会釈をする。
今や100人に満たない人数となったが、全総員の前だ。
基本的に師匠のルプンテ以外とはあまり接することのない生活を送っていたので若干の緊張はする。
「さて、それから皆に、もうひとつ伝えたいことがある。
この通り、1カ月前の傷跡がまだ癒えない現状だが……マオラのことは新しい隊員として認めたが
あまりこれから積極的に隊員を増やそうという気はない。
むしろ伝統ある魔物討伐隊としては、少数精鋭でやっていた今までだったが――
更なる少人数で動くことも検討している。」
隊長の言葉にざわつきが生まれる。
「ああ、これはできる限り、前向きな話と捉えてくれ。まずは、1番隊から10番隊までの編成に拘ることをなくしたいと思う。
より柔軟に、個々に動いてもらえるようになることが理想だ。」
ロッゾが考えた結果――、一月前のアエリア出陣で得た事実はあまりにも重く耐えがたいものだった。
そしてもう人間たちは魔物とは戦わず、只管防衛のみ行うことが一番だということらしい。
だからといって、これ以上事が起こらぬように、このまま何もせず、過ごすべきか。
そうだとしても、どうしてももう一度『あいつら』に会って会話を試みないといけないと思う。
しかし全隊員総員で動いても、どうしても被害を増やすだけのような気がするのだ。
もしももう一度アエリアに行くというのなら、今度は更に少数の実力のある者たちだけで、さらに慎重に行きたいと思う。
そのためには伝統的な魔物討伐隊の制度のいくらかを廃止したい。今日はとりあえずその話をしたまでだ。
「さて、夕食の時間にしよう。」
100人分程の、色とりどりの料理が並び、それをビュッフェ形式に、好きなようにとり、自分の席で食べるのだ。
マオラはこんなに豪華な食事は今まで食べられなかったので、感心をするが、とってきた量は至って少食だった。
「マオラ、それだけでいいのか?」
マオラは食事の席も隊長の隣に席に座った。
そう尋ねるロッゾ自身は、今日はしっかりと料理をとってきているがつい昨日までロクに食べずに部屋に戻っていた。
マオラはやっと再会できたロッゾ隊長ともっと話がしたかった。ロッゾも、悪い気がせず、嬉しそうにしていた。
なるほど。この立場上、皆仲間が死んで減っていく一方な中で、生きて再会できた者がいることは嬉しいことなのかもしれない。
何か話し込むことがあると、マオラは聡明で、子供と話しをしている様な気がしなかった。
あからさまにすっかり気が塞ぎこんでいたロッゾ隊長が、少し明るくなっている気がする。
それは他の隊員たちから見てもとれるようで、その光景を不思議そうな目つきで見つめている。
女の勘で勘づいたか、いつも戦いに明け暮れる疲れから、ロッゾに抱かれることを楽しみとしていた女たちがマオラに嫉妬の目を向けた。1か月前のあの時から、そんな気分にはなれないからとずっと断られていたのだ。
目にかかる長い黒髪の少し影のある面持ちに、よく鍛え上げられてるのに繊細な細い腰回りの長身痩躯の体格は他に見ないくらい抜群に良い色男だった。
ワイルドなのに器量がよく、粗野なのに頭が良くて気品を感じるところ、
威厳があるのに落ち着いていて優し気な雰囲気も、女の中の内側の好色な本能をよくくすぐる。
「あなた、あのマオラちゃん?おっひさー」
黒いレザーのような素材のもので、胸と腰の必要最小限の面積だけを覆った派手な裸に近い格好に金髪のボリュームたっぷりの髪を腰まで垂らした女性が明るく声かけてきた。
「うわ、えっと、誰ですか。」
マオラはその声の大きさにちょっとびっくりする。
「メイレイよ。ううーん、あなたが赤ん坊の頃はたまーによくお世話をしてたんだけれどねえ」
「あ……そうなんですね。ごめんなさい」
もっとも彼女の場合はお世話というよりただ遊んでいただけである。
「やるじゃない。ロッゾに見初められるなんて。」
マオラは言われた意味がわからなかった。きっと、こんな子供が入隊できてすごい位の意味だろうととらえた。
が、ロッゾの方が気が付いた。こいつ。マオラに嫉妬をしているのか……。
言われてみて、自分がこの少女に惹かれているのかと気が付いて少し動揺する。
「メイレイ。マオラをあまり驚かせるなよ。」
「ああん。そうねん。」
マオラは聡明な子だった。きっとこの年齢にして間違った言動をしないだろうし、
昔の仲間の入隊者として会話をしていて有意義だし、何もおかしいことはないはずだが
ただその凛として意志の強そうなとても大きな愛らしい瞳と、
先ほど口づけをされた薄く形の良い唇から発せられる高い声と吐息に。
なるほど、そういう感情を感じている自分に気が付かなかったらしい。
6.
ミーティングと夕食が終わったあとは完全に自由な時間だが、夜更かしはせずに眠る者がほとんどだ。
食堂として使われていた円形の古代建築の巨大なスペースから、そのまま螺旋なりに道を歩いて行くと、
側面に2階へ上がる階段がしばしば見られる。2階部分が隊員達の部屋へと繋がっている。
マオラの部屋は、丁度半周程歩くとあるロビーの近くの階段から上がってすぐだが、向かう途中の円の真ん中部分に増設された、図書館があるということで、ロッゾに案内をしてもらった。
「わぁ。本がいっぱいある。」
マオラは本を読むことは好きだった。幼少の頃、すぐに文字だけの本も読めるようになったのだが、ルプンテの師匠の家にあった本は限られていて外の世界の情報もまだまだわからないことだらけなので、目を輝かせた。
「なるほど。マオラも本を読むのは好きか。」
ロッゾも、10代の半ば頃まで、ほとんど護衛の仕事をする生活しか知らずに生きてきたのでもともとは難しい文献なんかは読めず、そうして読み方をルロスから教わっていたものだったが
今となっては、世の中の大半のあらゆる知識の本を完読している。
ロッゾはマオラに対して、似た者同士であると感じる。
地頭は良いのだが、戦いの修行に明け暮れる日々の命運を与えられ、きちんとした育ちの都心部の者達からしたら一般なことでもわからないことだらけだろう。
昔ルロスに教わったように、今は俺がマオラに読み方を教えてやってもいいかもしれない。
「読みたい本があれば、王城が直接手配してくれるから世界中の大体のものは手に入るぞ。」
これも人類の命運をかけた魔物討伐隊に入隊しているものの特権だ。
「……ロッゾ隊長はエル族についての情報を調べているんだよね」
「ああ……ルゾーティから、もう聞いたか。」
「うん……あのね」
「私だったら、エル族がいるアエリアに行くができるかもしれない。」
「……なんだって?」
マオラは今日この日は慌ただしい一日を終えて、与えられた自分の部屋とベッドで明日を待ち。ぐっすりと眠りについた。
そして朝を迎える。魔物討伐隊の朝は皆、早起きだ。多くの者が自主訓練を軽くしたあと、朝食をとり、8時に訓練所に集まり、最初にミーティングの時間をとる。これが大まかないつも通りの流れだ。
そして予定は午前中と午後で分けられてはいるが
軍隊らしいような機密なスケジュールは最小限に、各々の自主性に予定は自由に任せるようにしていることが多い。
皆が世界中に名の知れているレベルの相当な実力者なので、依頼を個人で受けて出かけている日を設けていることも多いし特に今も生き残っている者たちは、最強の実力を誇る者たちなので、なるべく軍隊として縛り付けない、柔軟なスタイルを維持している。
逆に言えば、自由の意味を各自分で考えられることが前提の、厳しい体制が整った構造となっている。
マオラがやってきた次の日は、偶然全隊員集合して揃う日だったため、
朝のミーティングのため、訓練所に総員が集まる様は、たまたま隊入隊初日らしい朝を迎えることができた。
そのはずだが、少し活気がないような妙な雰囲気な気もする。
まぁ、マオラにとってはさほど気になる事はない。
ロッゾはこれからの隊の方針について。昨日の夕食の時に一部話したことをまた説明していた。
今までのように多人数を配置し、陣形をどるような出陣はもうしない。
少人数で、それとなるべく魔物と戦闘しないように、各地に出現する魔石の捜索と破壊のみ当たってくれというものだ。
それは1カ月前の敗北のあの日以来、ずっと最小限の活動しかしておらず、同じような指示であったがあくまで前向きに捉えてくれという。
午後から、5番、6番、7番隊が数日程、北の街部への遠征した見回りに出かける。
8番、9番、10番隊は日帰りで帰れる近場の見回り捜索。
2番隊と3番隊は魔物討伐隊領内での待機。
1番隊と4番隊の午後は自由。ということだ。取り立てて変わったことは何もない。
そんなスケジュールの確認が行われ。そして午前中はマオラに知ってもらう意味も含めて、総員での基礎訓練を行うことになった。
基礎――と言っても、ロッゾが組んだ型崩しのスペシャルメニューだ。
選ばれた人間にしかついていけない、そんな厳しい内容のもので
人体に非常に過酷な負担がかかるものだが、マオラはやはり、まだ11歳の子供の体でなんなく楽に行っていた。
驚くことに、ロッゾがマオラに教えることは、すでにほぼないと言ってもいい体術の実力が確認できたし、それを全隊員に見せつけることにもなった。
マオラに感想を聞けば、ルプンテ師匠のところで受けていた日課のメニューに比べるとまぁまぁマシだという。
7.
そして午後になる。
マオラが昨日、足を踏み入れた瞬間にまず思ったことだったが、一面の草の広がる敷地内の広場は風が気持ちよく、魔物討伐隊敷地は、けっこう美しい。
森の中に開けたように存在し、もともとほとんど人が立ち寄らなかったおかげで古代遺跡の地は、自然の恵みに溢れていて
建物の西側には小川が流れて、せせらぎが聴こえていた。敷地の北西の奥には湖があり、その辺りに散らばったように存在する木々の下は
自然が作り出した庭園のようにぶどうや森の木の実が成っている箇所があり、殺伐とした戦闘を行うための環境とは裏腹に、まるで楽園のようだ。
湖がある北西側は、寮の食堂や隊長の部屋が近い側で、南側の訓練場から歩いてくると、丁度一本の巨大樹が見え、待ち合わせをするには良い目印なのだ。
一本の巨大な大樹は、暑い日には正午の太陽にも木陰を作ってくれる絶好の休み場だ――
その巨大樹の根本に長身痩躯の男が座り込んでいた。まるで彫刻刀で掘ったような色男で、美形というかはわからないが、どこか神々しい。
黒髪黒目に、上下の服装も黒いものを着こんでいる。
どこか虚ろな表情で、ぼーっとしている。
――もういい……疲れた。どうでもいい気持ちになってくる。
座り込んでいるうちに、いろいろなことを思い出してしまった。
ロッゾは英雄と言われるようになり。世界の中心とされるドミナントの国王ですら簡単に頭を上げることができない存在とされて7年も魔物討伐隊隊長として勤めて来たが、その心は本当は無垢だ。
「ロッゾ隊長」
そこに甲高い柔らかな声を聞いて振り返った。
現れたのは、やわらかい薄桃の髪色に大きな蒼目に白い肌が特徴の少女だ。
白いノースリーブの薄い肌着一枚の姿だった。ロッゾはその恰好に目が釘付けになる。
「……マオラ」
今日の午後の1番隊は自由ということで、
マオラはロッゾと魔物討伐隊のことではなく、個人的に会って話をする約束をしてもらった。
隊長なので忙しい身ではないだろうか、思えば生まれたときから知っているからと言って昨日から子供の私が馴れ馴れしくずっと一緒にいてもらっても構わないのだろうか。
そんな疑問が沸き始めていた中、思いがけず嬉しかった。
しかも話をするのに気の利いた良いところを案内してくれるというので気持ちが高揚した。
昨日からずっと着ていた、使い込んだつぎはぎの訓練着を着て行くことが少し気になった。そしてお昼を超えて今の季節にはそろそろ暑い。
特に良いと思える着替えも持っていなかったので、とりあえず上着だけ脱ぎ捨てて来た。
妖精族はいっさいくすみのない白い肌が特徴だ。マオラは顎上まで厚く着込んだ服装では男の子かと見紛う恰好で、年齢より少し小柄で幼く見えたがその血を色濃く継いだのか、隠れていた首、鎖骨や肩、脇などそのすべてがとても戦いのために修練を積んできた者とは思えないなめらかな肌をしている。
鍛え抜かれた筋肉があるとはとても思えなく華奢だが、腰回りはよくくびれていて
白い薄い布からはこれから大きくなるのであろう乳房の小さな膨らみがよく目立ち、その先端をツンッととがらせていた。
巨大樹の影にいる男は遠目から一目見るだけでよく目立ち、しかし自然と溶け込んだような鋭い雰囲気を放っていた。
マオラは声を掛けて、その鋭い視線が自分へ向けられる瞬間の眼差しに、
一瞬だけ怖いような恥ずかしいようななんとも言えない気持ちでドキッとした。
あまり気にしないようにして、ロッゾの隣へと座りこむ。
やっぱりその頬は少し扱けているように見える。
「マオラ。お前はちゃんと食べているのか?」
「うん。隊長こそ。ちゃんと食べてるの?なんか最近元気がないって話を聞いたから。」
「ああ、そうだな……」
人に言っておきながらその通りだ。
「最近は飯がまずく感じる。俺のせいで……たくさんの隊員が死んだんだ。」
ロッゾは、隠さずに、弱っていることを打ち明けた。マオラは一瞬なんて返答をするが悩むが、
「でも、隊長が世界で一番たくさんの人を救ってる。」
「……。」
しかしそうとも言えないかもしれない事実を知ってしまったのだ。
マオラは俺のことを信じてくれているかもしれないが。
「ロッゾ隊長しか、世界で動ける人はいないんだから。だからたくさんご飯を食べて元気ださなくちゃ」
「ああ……そうだな」
「ひさびさにちょっと食欲が沸いてきたかもしれない。」
ギラギラした瞳がマオラにじっくりと向けられている。
「そっか。それならよかった。」
マオラは満面の笑顔をロッゾに向ける。
「…………。」
「ロッゾ隊長。私ね……。」
マオラはポツリポツリと昨日には話せなかった話を話し始める。
両親を失った時の話。ロッゾ隊長が助けてくれたこと。
ルプンテ師匠の元で修業をするようになったとき。
ただただこの世界で何かできないか。ずっとあの時のことが焼き付いて一切他のことを考える気持ちがなかったこと。
そして夜になると思い出すことはロッゾ隊長のことばかりだったこと。
「やっと……会えて嬉しいの……目の前にこうして本当にまたロッゾ隊長がいるんだ、って……」
マオラは隊長の身体を触り、顔を覗き込む。その吐息が軽く当たる。
ロッソは振り払おうとしたつもりだった、堪えこんでいた感情が剥かれる。
「マオラ……上着着てないのか?」
じっくりと問い詰めて詰め寄る。
今度は押し殺していたロッゾの息がマオラに当たる。
「あ……いつも、師匠にお前は肌見せちゃだめだって言われて
外に出歩くならしっかり着こめって言われてたんだけれど、」
ロッゾは一瞬沈黙する。その言動が聞き逃せなかった。
「そうか。……師匠がいうことは正しいな。」
マオラは身体をつかまれて突然の剣幕で詰められる。
「じゃあ……おまえは、自分が今言ったことの意味、わかってるのか?」
マオラは何気なく会話をしていただけのつもりだったのだが
ちょっと、怖い。言い方は単調な口調のようなのだが
どこか殺気のようなものを放っているように感じるのだ。怖い。怒ってる?
「え……あ……えっと……」
その気配の正体がなんなのかよくわからず、固まってしまった。
ロッゾはマオラの瞳をじっと見つめて、顔を近づける。
なんだろう。何を問い詰められているのだろう。胸がドキドキする。
「……あの……。」
それになんだかちょっと恥ずかしい。なぜだろう。
ロッゾは堪えられず口の端に笑みを浮かべる。息が荒い。
「……俺の前で薄着になっちゃだめだろ」
そういうとマオラの小さい身体をそのまま地面へと押し倒した。
隊長は赤面し固まって動けなくなっているマオラに顔と体を近づけて
マオラの身体に完全に覆いかぶさった。
殺気のように感じたのは、獲物に狙いを定めるような瞳だ。
俺の前でこんな格好になるのはよろしくない。
わからせてやらないといけない。
ぎらぎらとした瞳で問い詰めるそのロッゾの体の魅力も相当ものだ。
まだ11歳のマオラにそれを感じさせている。どうしようもない。
何もないマオラとって。ロッゾは記憶の中の最大の人物だ。
ずっとあこがれてた。やっと会えた。うれしくて仕方がなかった。
なので拒もうとする理由もなにもなく頬を赤らめ胸をときめかせながら無抵抗にされるがままになった。
ロッゾの自分の身体よりずっと大きなそのそのたくましい手が、自分の身体を好きなように触られていく度に全身がヘンな感じがする。
幼児のときから大きかった手が、未だに大きい。だけど自分の身体はもう幼児じゃない。ロッゾ隊長。私の身体にそういうことがしたいんだ。私の身体でそんな表情になるんだ……。
全部を受け入れるマオラのその目が潤んでいて甲高い声の反応も全部が可愛らしくてそそられる。
やっぱり上から下までその全部が、その小柄な身体とその年齢よりよく発達した最高に女の子らしい身体をしていた。
それに感度が高くてまずい。ロッゾの情欲が抑えられない位に掻き立てられる。
隊長の荒くなった息が、無遠慮にマオラの顔や首筋にかかっている。
マオラも動悸が激しくなり、その吐息が隊長にもかかる。
「……痛いっ……!」
残念ながら、ここは人から見える場所だし、マオラを脱がせてやるわけにはいかない。
「マオラ……俺の部屋に来るんだ。」
ロッゾはされた行為に驚いて放心しているマオラの頬を触り、ギュッと強く自分の胸の中に抱きしめた。
昨日自分に押し当ててきたその唇を割り込み、全力で大人のキスを教え込む。
マオラの様子を見ると、恍惚とまどろんでいる。敏感になって、乳房の先端の突起がより目立っているような感じがする。
やっぱりこんな格好を見せるのはよろしくない。他の男の隊員が通りかかるかもしれない。
ロッゾは自分の着ていた黒い半そでの服を脱いでマオラに被せた。
「マオラ……いいか?お師匠の言う通りだ。お前は肌を見せちゃいけない。わかったか。」
マオラは黙って恥ずかしそうに俯いている。
「服を脱ぐなら。俺の部屋の中で脱ぐんだ。俺の前でだけ、上も下も脱いで、俺だけに全部見せろ。」
「……はい。」
激しく動悸がする。そのマオラの胸の心の内側に、怪しい好奇心が沸いてきていた。
「さあ。……おいで。」
ロッゾはマオラの手を引っ張って歩き始めた。マオラがロッゾの指をギュッと強く握り返すので余計に興奮が高まってくる。
そういうロッゾの股間の突起は見ていられない程目立っているが、ロッゾは自分のを見られても別に困ることはない。
まったくどうしようもない。
あとがき.
ROZZO自体はずっと戦いが中心で恋愛という発想力ゼロの世界観なので
この『隊長とマオラ編』がどんなものかとりあえず知ってもらうために
そういうシーンのある7までをまとめて一章としてみました。
もともと18禁で考えていたのでちょっと行為を省略修正された公開になります。
(と言ってもけっこう過激めの内容です。どうでしょうか...)
ROZZOは20年近く昔に「世界一面白いファンタジーをつくる」として考え始めて
各メインキャラの隊員達が、隊長のロッゾと出会った時の年号の時代に「何が起こったか」全部を読んでいくと話が繋がっていくし、別にそれ単体だけ見て他読まなくても完結している、という形にできたらとイメージしてました。
長編でやたら長ったらしくならないために、サクッと読める様に書けるようになれたらなと頑張りたいです。
もともとは一番作りたかったものはゲームだったので、RPGツクールで作れないかな?という風に構想し始めたのが
どうやらクライマックスのクライマックス、ラストパートになるようで
そしてどうやらこのマオラ編は、今までのものが集結された、いざラストに向かうクライマックスとなるようです。
「ここから読み始めるのが面白い内容」になるようにしたいです。
未だプロとしては至らない自覚があるので感想等いただけるとありがたいです
ROZZO ~隊長とマオラ編~【R指定注意】※試作投稿段階です M.R.U @Yellow32
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