私は、どこまでもどこまでも堕ちていく
間川 レイ
第1話
1.
ふんわりと。唇が触れ合ったと感じたのも束の間。にゅるり、と。あの子の舌が私の口の中に入ってくる感覚。温かくて、柔らかくて。私の歯の裏側を軽く掠めて。舌先が、口の中を探る様に動く。反射的に、受け入れるようにおずおずと私も舌を伸ばして。舌と舌とが触れ合った瞬間、くるりと絡み合う。私の舌全体を包み込むように、巻きついて来て。ねっとりと、ゆっくりと。舌の輪郭をなぞる様に舐められて。
あの子の唾液と私の唾液が混ざり合う。生暖かくて、少し煙草の香りがして。仄かに甘く、桃の味がする。舌全体がちゅっと軽く吸われ、再び絡み合う。今度はもっと深く、もっとじっくりと。あの子の舌が、私の舌の根本まで滑り込んでくる様に。奥歯をなぞり、歯茎を撫で上げる様に。私の口の中があの子で満たされる。感じるのはどこまでも熱いあの子の熱と。その舌先の金属製のピアスの、ひんやりと冷たい感触のみ。
ホテルの一室に響くのは、ブーンと言う低いクーラーの作動音と。ふっ、ふっ、というあの子の落ち着いた、規則的な呼吸音。そして、はっ、はっという、胸全体が上下して。喉から漏れる荒い私の吐息のみ。気を抜けば、くてんと力が抜けそうな腕に力をこめ。私はあの子の背中に回した手をぐっと抱き寄せる。より一層あの子の熱を感じられるように。しっとりとして、滑らかで。少しばかり汗ばんでいて、スレンダーで、それでも女性らしい柔らかさを残した身体を。私みたいな起伏のない身体とは違って、凹凸をしっかり感じられる身体。あの子の身体は、マグマの様に熱くって。
ぐっと私の身体が抱き寄せられる。背中に回した手に、あの子のポニーテールの毛先がくすぐるのがこそばゆい。ふわふわ、ふわふわ。あの子と私が溶け合っていく。口の端から、つうっと涎が垂れていくのを知覚する。ああ、なんで私。こんな事してるんだっけ。そんな事を頭の片隅で考えながら。蕩けた視界の中で、ふわふわとした感覚に身を委ねていく。
2.
私は、今から4ヶ月前。今年の4月から地元の三重から東京へと移ってきたばかりの大学一年生だ。長かった受験勉強も何とか突破し、正直受かるかどうかは最後まで半信半疑だった第一志望の学部学科に通過した。それこそ、私の希望進路においては国内第一の排出率を誇る学科にだ。私は意気揚々と大学の門を叩いた。
そして複数のサークルを掛け持ちし、毎日の予習復習も欠かさず行い、ゼミでは議論を牽引する。学生研究室での自主学習も欠かさない。バイトの塾講師もばりばり頑張って、お金が貯まったら旅行にでもいく。そんな生活を送る予定だった。そんな生活を送るはずだった。
なのに実際はどうだ。私はもう直ぐ昼だというのに、カーテンも開けず、電気もつけない薄暗い自室で。布団を口もとまで被ったまま、ぼんやりと天井を見上げる。薄暗い天井。灰色の電灯を、ただぼんやりと。意味もなく。
授業、行かなきゃな。そうは思っているのに、身体全身がずっしりと重く。特に手足の先なんて、鉛を詰め込まれたかの様に、沈み込む様に重たい。心もどんより冷え切っていて。口もとまで覆った布団をずらす意欲すら湧いてこない。部屋全体もどことなく血生臭い。
別にナプキンの処理が悪かったとかではなくて、ゴミ箱一杯に詰まった血まみれのティッシュたちが原因だろう。昨日の夜も全然眠れなくて。将来のこととか、大学のこととか、勉強のこととか、昔のこととか。良くない思いばかりが込み上げてきて。
気づけば腕を切り付けていた。馬鹿なことしてる。直ぐにでもやめなきゃ。頭の片隅では分かっているのに、自分の真っ白な肌に線が刻まれる感覚。チリチリとした仄かな痛みと、どろりと流れ出す真っ赤な血潮。それを見ていると、気分がスッとするというか。痒いところを存分に引っ掻いた様な爽快感というか。自分が壊れていくのを見て、安心するというか、ほっとするというか。上手く言えないけど、凄くすっきりする。
その感覚はあまりに抗い難くて。やめなきゃ、やめなきゃ。そうわかっているのに全然やめられなくて。腕が流れ出した血で真っ赤になって、何処が傷跡で、どこがまだ切り付けてない場所かわからなくなってきた頃になって、ようやく止めることができた。ちょっと今日はこのぐらいにしておくか、みたいな。まあ、あんまり切りつけるのも何だしな、みたいな気持ちで。
あちらこちら血でべとべとなのが気持ち悪かった、というのもあるけれど。なんだかぬめぬめするというか。ベトベトすると言うか。切り付けていた側の手もべちゃべちゃで。それは切った傷跡をグッと押し広げてみたり、グッと傷口を掴んで血を押し出す様にしてみたり。あるいは傷を開いて赤黒い血がじわじわと、薄いピンク色のお肉の奥から滲み出してくるのをいつまでも眺めていたり。薄い皮膚の下から顔を出したピンク色のお肉をつつき回したりしたというのもあるけれど。
そして腕を伝って垂れる血液の感触がちょっと鬱陶しかったというのもある。つうっと生暖かい感触が走るのがなんか嫌で。おろした指先から、ぽた、ぽたと液体が垂れる感触も。小さな赤い水たまりみたいになった床を拭くのが面倒臭かったというのもある。あとで拭けば良いかな、でも乾いたらこびり付いて削り取らなきゃいけないのが大変なんだよな、とか。
その真っ赤っかな腕や手や床を拭うのに使ったティッシュをそのまま放置していたのが良くなかったのかも知れない。あるいは、布団に垂れたのを放置していたからかも。もしくは床を適当に拭いただけというのも良く無いのかも知れない。掃除しないとなあ。あと洗濯も。わかっている。わかっているのに、身体が動かない。何せ、最近大学にも行けてないのだから。
最初の方は良かった。友達と言える子も出来て。授業もちゃんと出て。予習復習も友達と一緒に図書館で並んでして。ゼミでも積極的に議論に参加して。サークルもいくつか登録して。バイトも始めて。授業についていけないとかも特になく。別に躓く所なんて無かったはずだった。
強いてあげるのなら、学生研究室がケチのつきはじめ。ギリギリの成績で入室試験に通ったはいいけれど。そこに居たのは本物の秀才たちの群れ。本気で私と同じ進路を志し、国内最高峰の大学を落ちたから渋々この大学に来た、そんなクラスの人間たち。あわよくば在学中に進路の為の資格を取り切ってしまおう。それぐらいの気迫を持って勉強していた彼らに気圧された、というのはあるかもしれない。もしくは、私が進路を甘く見積り過ぎていたか。
とにかく、彼らは優秀だった。話せば話すほど、地頭の違いというのを痛感した。頭の回転速度が違う、着眼点が違う。物事に対する理解の解像度が全然違う。付け焼き刃でこれまでやって来た私とは段違い。私が所与の前提とする様な部分でさえ、彼らは何故、どうしてと掘り下げる。掘り下げた上で自分なりの解釈を施し、文献や指導内容から修正する。その上で理論を組み立てていく。
理論を理論として疑わずに受け入れて来た私なんかとは、全然理解度が違う。そして、勉強に対する熱量が違う。やっと実家を離れられ、受験勉強からも解放されたことから、本も読みたい、映画もみたいと浮ついている私とは桁が違った。彼らは既に可処分時間を全て勉強に費やしていた。元より地頭が良くて努力量に勝る彼らを、どうやって追い抜けばいいのか。そう、思ってしまったからかも知れない。
あるいは、全然違う理由かも。大学に入ってから知り合った子たちは、みんなキラキラしていた。他人の善性を無邪気に信じている、というべきか。社会的規範を疑った事がない、というべきか。家族とは尊いものです、大事にしましょう。先生は尊敬に値する人物です、敬いましょう。みたいな。
それに反する価値観を理解出来ない様だった。全ての家族がお互いを大事にしていて当然、みたいな。全ての先生は生徒のことを心から気にかけている、みたいな。そんなわけ無いのに。そんな事ないのに。いきなり他人に殴られる事なんて考えたこともなくて、助けを求めて差し出した手を冷たく払いのけられることなんて考えたこともない。そんな人達。
そんな目に遭うとしたら、それはあなたにも落ち度があったのでは。口に出しては言わないけれど、そう考えていることが透けて見える人達だった。自殺なんて図ったこともなくて、自傷すらした事がない。むしろそんな事をする人ってどこかおかしいんじゃないの。私の幾重にも走る手首の自傷痕とか、自傷のしすぎで変色したりケロイド状になった皮膚とかを見る目からは、そんな意図が透けて見えていたから。
むしろ、私からすれば。今までの人生で、この年に至るまで一度も自傷行為も自殺未遂も起こさずに生きて来た人がいるという事が理解出来なかった。親に本気で、それこそえずいたり涙が出るぐらいの勢いで殴られた事が一度もないという人がいるということを受け入れられなかった。
私は毎日毎日、あんなに殴られていたのに。沢山泣いて、吐いて。手首を切って。何回か死に損なって。何とか生きて来たのに。そんな世界を知らない人がいるというのは衝撃だった。
私の親は厳しい人だった。特に学業において、妥協を許さない人だった。学があれば、選択肢は広がる。そう信じて行動して来て、娘にもそれを求める人だった。そして、親から見て私は不出来な娘だった。成績とか、学習態度とか。何故もっと死ぬ気で勉強しないと、頭を掴んで学習机に何度も何度も叩きつけられたし、何故こんな馬鹿みたいな成績が取れると耳が裂けるぐらいの大声で絶叫された。絶叫するだけではなく、力一杯殴った。殴られたお腹が痛過ぎて蹲れば、何被害者ぶってるんだと蹴り倒された。泣けば、泣くぐらいなら勉強しろよ頭悪いなと罵られた。
食事の時間中、話題と言えば成績の話とその改善案についてばかりで。あるいは、妹に対して勉強しないとお姉ちゃんみたいになっちゃうよという皮肉混じりの叱責ぐらい。そうした話を聞きたくなくて、高速で詰め込み自室に帰れば何あの態度、感じ悪いなと陰口を叩かれた。
一度癇癪を起こした時は酷かった。父親にご近所さま迷惑だろうが、恥をかかすなと普段以上に殴られ詰られて。母親に自傷痕を見ては汚いなとか、構ってちゃんアピールはやめてと言われ。自殺未遂をしては、本気で死ぬ気もないくせにと言われた。あまりの辛さに教師に泣きついたこともあるけれど、辛いのはあなただけじゃないとか、それは親御さんなりに心配してのことだとか。あんまり親を悪くいうもんじゃないとか、家族なんだから仲良くしなさいだとか、そんなありきたりなことを言われるだけ。そしてその癖娘さんこんな事言ってたので、という連絡だけはする。そして恩知らず、恥知らずと余分に殴られて。そんな世界は誰にも理解されなくて。
いつしか私は大学に行けない様になっていた。身体が重く、起き上がれず。大学に行こうとすると、猛烈な吐き気に襲われて。
3.
そんな生活は不味いって私にだってわかってる。本当は病院とかに行ったほうがいいという事も。でも、私は昔両親にお前が鬱になんかなるわけ無いだろと言われたから。その言葉がチラついて、いまだに病院には行けてない。それに、万が一鬱と判断されて、休学が必要になったり、大学に行けてない事がバレたら。間違いなく退学させられる。無駄金は使えないとか言って。そうなったら私はどうやって生きていけばいい。職歴も、資格もなく。中退は学歴に含まれないから、あるのは普通科高校卒業という学歴のみ。そんなの、まともに生きていける訳がない。
だから、私はお酒を飲む様になった。お酒に溺れる様になった。お酒を飲んでいる間だけは、将来に対する不安も、大学に行けていない自己嫌悪も、成績に対する不安も、全部全部忘れる事ができたから。そこまで死にたくならずに済んだから。でも、ひとりぼっちで飲んでいると、衝動的に手首を切りたくなる。あるいは、変なほうに思考が働いて、普段以上に死にたくなることがある。喉を掻き切る衝動に、窓から飛び降りる衝動に必死に耐えなきゃいけなくなる。それは、一緒に吸ってる煙草が悪さをしているのかも知れないけれど。
だから、私は人と一緒に飲む様になった。その中でもお気に入りはバー。あんまりカジュアルすぎて騒がしいものより、シックなほうが好きだった。ただ、一緒に飲むのはもっぱら女の子。男の人と飲むのはあんまり好きじゃない。私の胸元をチラチラ見たり、何とかしてお持ち帰りしてやろうという意図が透けて見えるから。そういう目で見られる時、商品台に陳列された商品の気分になる。
そもそも男の人があまり得意ではないというのはあるけれど。何かされたら抵抗できないし。男の人の力強さは父親を見てよく学んでいたから。あとは、大きな声とかが比較的苦手なのもある。あんまり大きな声で笑わないで欲しいし。机をバンバン叩いてみたいな大きなリアクションを取られるのもちょっと嫌。
あとは、昔痴漢とか盗撮とかされた時のことを思い出すからかも。
制服のスカートの上から。下着の上から。ズボンの上から。私の上を這い回る固くてゴツくて大きい、手のひらの感覚。太ももを撫でたり、お尻に触れたり。あるいはもっと、嫌な触り方をされたり。払いのけたり、身を捩ったりしても、執拗に触られたり。
下着の隙間から指先が滑り込んでくる感覚。固くてゴツゴツした指が、内腿を舐め回す様に這い上がり。ぐにぐにと、指が蠢いて。何をされているのか、まるで分からなくて。覚えているのは、なに、何?とか。え、え?という戸惑いと。思わずえづきそうなぐらいの嫌悪感のみ。内臓を直接触られている様な。
指が蠢く度、膝が小さく震えるのをまるで他人事の様に感じて。無理矢理中を押し広げられる感覚を可能な限り無視する。触られてる場所の意識を薄くするように。まるで、薄い半透明のラップで身体を覆ってしまう様にして。目をギュッと閉じ、唇を噛み締め耐える事しか出来なかった。意識を薄くする方法については、いつも父親に殴られる時に慣れていたから。不幸中の幸いと言えるかも知れないけれど。
あるいは通りすがりに胸を揉まれたり。どんな感触だった?胸無さすぎてわかんねーよ!と私を笑う声とか。そう言う時、いつだって硬直してしまう。呼吸が速くなり、ギュッと肩が上がる。心が冷え冷えと冷えていき、ガラスの器に氷水がヒタヒタと満たされていく感じ。
盗撮された時も同じこと。なんか変な雰囲気に気づいて。カメラを見つけて。悪びれる事もなく。どちらかと言うと至極当然のことをしているだけと言うか。バレたか、面倒くさいな、みたいな。あるいははたまた、何か独特な、奇妙な執着にも似た熱を感じさせる眼差しでただ私を見ていた、あの眼差しを思い出すから。見知らぬ人に向けられるあの眼差しほど心をやすりがけされるものはないから。
制服に体液をかけられた事もあった。塾から帰ってきたら、スカートの裾に白くてネバネバするものがこびり付いているのを見つけて。何これ。気持ち悪いなと思う以上に、母親に見つかったらうるさいだろうな、なんて思った記憶。ただいまの挨拶もそこそこに、洗面所に忍び込んで。電気もつけずにじゃぶじゃぶ洗っていた思い出。
その時の、何してんだろ、私。と言う気持ちと。なんでこんなことしなきゃいけないの、と言う冷え冷えとした惨めさ。洗っても洗っても、全然白い垂れた様な跡が落ちなくて。水がかじかみそうなぐらい冷たくて。結局見つかって、何してんのと馬鹿にした様な、心底見下した様な目で言われた時の思い出など。とかとか、色々思い出すから。なので、あまり男の人とは飲みたくない。
だから、基本的に一緒に飲むのは女の子。話したければ話し、話したくなければ話さない。そう言う関係性が好き。ただ、中には女の子相手にお金を払って相手したり、そういう出会いを求めてやってくる人もいる。そう言う人達と話すのも、全然嫌いじゃない。むしろ好き。
だって、そう言う人たちは私と同じく自傷痕を抱えていたりするし。親のこととか、家族のこととかで思い悩んでたりもする。あるいは将来のこととか。世の中には変な人も多いよね、とか。痴漢なんて死ねばいいのに、とか。気が合えば、話が弾めばそう言う話もする。そう言う人達と話してる時、私はひとりぼっちじゃないんだなって実感する。
稀に、そう言う人達とホテルに行く事もある。一糸纏わぬ姿で抱き合って、抱きしめあって。キスをして、キスをしあって。舌を入れて、舌を吸われて。誰かの身体を奥の奥まで受け入れて。身体を重ねて。誰かの熱を感じあって。身体が勝手にビクビク震えて。腰が跳ねて。誰かが堪らなく欲しくなって。誰かの熱が抜けていくのが切なくなって。私を見捨てないで、みたいな。どうか私を、ひとりぼっちにしないで、なんて。ひとりぼっちは凍えそうに寒いから。喉を上げて。声を漏らして。弓なりに体をそらして。シーツをギュッと握りしめて。シーツを濡らしたりして。
頭がパチパチ弾けて。視界はふわふわ滲んで。もう、全部ぐちゃぐちゃになるぐらい。何もかもがめちゃくちゃに、どろどろに溶け合って。誰かの汗が。吐息が。私の涙が。唾液が。混ざり合って、溶け合って。どこまでが私で、どこからが誰かなのか分からないぐらい、どろどろに。めちゃくちゃに。そうしている間だけ、私は世界を真っ当に捉えられる。ジクジクと熱を放つかさぶたも。触れれば勝手に裂けて血を流す傷跡も。全部忘れることができる。あの、ドロドロとして、ふわふわとしたあの感触。私はもう、抜け出せなくて。抜け出したくもなくて。全てがどうでも良くて。何もかもが下らなくて。ズブズブとどこまでも、どこまでも沈んでいく様な感覚。
息が落ち着くまで、そうやって、ただ抱き合って。時に、頭を撫でて貰ったりとか。短めに保ってる髪を弄ってもらったりとか。頬をなぞって、頬に触れられて。たまには、着ていた服を褒めてもらったり。そのスキニージーンズいいじゃんとか。その黒シャツ似合ってるよとか。その銀のクロスいいじゃん。どこで買ったの、とか。
そう言うのは他人の熱を感じ取れて嫌いじゃない。他人の温もりを感じ取れるのが悪くない。他人の鼓動が感じられて。私の熱と、他人の熱が溶け合って。どこまでも。どこまでも。溺れるように、溶けて、溶け合って。どこまでが私か分からなくなって。いつまでも抱き合っていたいぐらい。そしてそのまま、ズブズブ、ズブズブ沈み込んでいく。溺れるように、沈む様に。どこまでも、どこまでも堕ちていく。その感覚は、苦手じゃないから。
だから私は街に出る。ズブズブ。ズブズブ。どこまでも沈み込んでいくために。どこまでも、どこまでも。溺れて、沈んで。堕ちていくために。
ああ、でも。どうか。いつか。いつの日か。どこまでも静かな朝靄の中で。誰かと一緒に。手でも繋ぎながら。その指先をギュッと握りしめて。その温かさを逃がさない様に。胸元でしっかり抱きしめて。ぷかぷか、ふわふわ浮いて。パチンと弾けて。シャボン玉みたいに、消えてしまえればいいのに。
私は、どこまでもどこまでも堕ちていく 間川 レイ @tsuyomasu0418
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