嘘つきの電話

stdn0316

第1話

 よく嘘をついていた。

 自分には霊感があるフリをして、そこに女の霊が立ってるだとか、ここには浮遊霊が集まってきてるだとか、適当なことを言っていた。


 特に飲み会ではこの手の話を出すと盛り上がった。みんなの注目を集めることができた。

 様々な霊の存在をでっち上げた。


 以前盗み聞きした、彼女と別れ話で揉めているという話を知らないフリして、あなたを恨んでいる女がいるよーなどといい、相手の顔が青くなると面白かった。


 ただ、霊が見えるというだけでは話を膨らめるのに限界があった。あそこにいるよ!などと言っても、周りの人も慣れてしまっていた。


 そこで、自分は全国の霊能力者と繋がっていて、その人たちから色々な体験談を聞いているという体で怪談をでっち上げた。


 この頃には周りの何人かは、私が嘘をついていることを何となく察していたと思う。

 だが特に咎めるものはいなかった。


 その日の飲み会でも、架空の怪談を披露した。電車に飛び込んで亡くなった霊に取り憑かれた女性が、自殺願望もないのに電車に飛び込みたくて仕方がなくなるという話だった。


「それでね、その人はついに電車に向かって...」

「ちょっと待ってやばい!A、彼女とヨリ戻したって!!」


「えー!?今からA呼ぼうよ!話聞かなきゃ!」

 突然のニュースに怪談は中断し、そこからは Aを呼び出して彼女と復縁した経緯を聞き出す流れになってしまった。


 まあ続きは今度話せばいいかと気にしなかった。


 飲み会が終わり、帰宅すると電話が鳴った。

 知らない携帯番号だがもしかすると先ほど飲んだメンバーかもと思い電話に出た。

 低く、やけにくぐもった知らない女の声だった。


「わたしねー!その話の続き知ってるよおおおおおおおお!お前が」

 

 電話を切り、無理を言って近くに住む友人の家に泊めてもらった。

 怪談は二度としなかった。









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