捨てられたひな人形と持ち主「達」とひな祭り
仁志隆生
捨てられたひな人形と持ち主「達」とひな祭り
ああ、今日はひな祭りか。
もう縁が無くなって何年になるかな。
俺は独身だから当然娘なんていないし。
子供の頃は妹もいたし、近所の幼馴染の女の子もいたんでひな祭りにありつけた。
今はもう皆結婚したんで当然無理だが……あれ?
家の近くにあるごみ置き場。
そこにお雛様とお内裏様、一対のひな人形が捨てられていた。
おいおい、要らないにしても人形供養くらいしてやれよ。
ってそういうのも廃れたのかな。
……ん。
――――――
「こんなもんかな」
家に帰って箪笥の上に二人を置いた後、まだ開いてたスーパーへ行ってひなあられと白酒を買ってきて、それを供えた。
「こんなんでごめんなさいだけど、ゆっくりして」
そう言った後、夕飯を食べて風呂入って寝た。
――――――
深夜。
……ん? なんか声がする?
テレビ消し忘れてたっけ?
いや、まさかひな人形がとかなんてアホな事思いつつ起き上がると。
ひな人形の前に着物姿の、体が透けた小さな女の子が何人もいて楽しそうに話していた。
……ひな人形が喋ってる方がまだマシだ。
正直震えが止まらない。
「ん? あ、起きちゃった。ごめんなさい」
女の子の一人が謝ってきた。
「い、いやいいけど。ところで、誰?」
なんとか声を出せた。
「あたし達ね、ひな人形の持ち主だったの」
女の子がそう言った。
「え? じゃあ最後の持ち主のお祖母さんとかご先祖様とか?」
「ううん、あのね」
聞けばこのひな人形はどういう訳か一つの家で代々伝わらず、ある時の持ち主の親戚だったりまたある時の持ち主の友人のといった具合に譲られ続けていたそうだ。
それはこの子、いやこの人達に子供ができなかったり息子さんだけで孫娘もいなかったからというのもあってだそうだ。
「最後の子はひょんなことでそれを知って、縁起でもないって捨てちゃったの。子供は女の子が欲しいからって」
「そうだったんだ。けど供養くらいしてやれよなあ」
「うん。けどあなたが拾ってくれてよかった。こうやって話せる人ならちゃんと人形供養してってお願いできるもん」
「……俺、霊感無いはずなんだけどなあ?」
いやもしかすると、この人かこの中の誰かが俺のご先祖様だから見えてるとか?
「当たりだよ。あたしがそうで、最初の持ち主だよ」
「やっぱりか。てか心読んで言うなこのばーさんは」
「誰が?」
ギャアアー!
ご先祖様の周りにたくさんの人魂があー!
「そんなに怖がらなくても」
「いや怖いわ!」
「うー、じゃあ引っ込めるね」
人魂がスッと消えた。
「……っと、もう日付も変わっちゃったけど最後にもう一回ひな祭りします?」
なんか自分でも驚くほど冷静になってしまった。
「うん。二人共喜んでくれるよ」
「じゃあ、用意しますね」
その後、明日の夜にのつもりだったちらし寿司を作り、ひな人形の前にも置いて皆でお祝いした。
そして夜明け前。
「ありがとね。二人共凄く楽しかったって」
ご先祖様がそう言ってくれたが、
「あの、お二人は喋れないのですか?」
もうここまで来たらそれでもよかったんだけど。
「喋ってるけどあなたには聞こえないみたいだね」
「ああ……」
ちょっと残念。
「それじゃ、ありがとね。あとお願いします」
そう言ってご先祖様や他の人達はスッと消えた。
――――――
「ほんとびっくりしたわよ、あの時は」
「俺もだよ、全く」
あの後、お寺に二人を持って行った時に受付していたのが彼女。
手渡した途端、なんというか体に電気が走ったかのようになった。
聞けば彼女もで、おまけに「この人と話しなさい」って声が聞こえたって。
そのおかげで俺達は付き合い始め、そして……。
「パパ―、ママー、早くひな祭りしようよー」
そう言うのは俺達の娘と息子。
その後ろには、あのお雛様とお内裏様がいる。
なんでか知らんが娘が出来ないというジンクスは無くなったみたいだな。
それともあれかな、娘が生まれるまでは俺が持ち主だったから?
……まあいいか。
さてと、ひな祭りしよ。
終
捨てられたひな人形と持ち主「達」とひな祭り 仁志隆生 @ryuseienbu
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