物語とは、記憶に住まう幻である

読むとは、記憶すること。
物語とは、読み終えたその瞬間に、もう過去の出来事になっている。

本作『物語配置図』は、文字・文・記憶・意識・時間といった概念を縦横に織り込みながら、
物語というものがいかに人間の記憶と密接に結びついているかを、
独特のユーモアと深い洞察で描き出すメタ・エッセイである。

「人はなぜ読むのか?」
「読むとは、心を動かすとは、何を意味するのか?」

そうした根源的な問いを、遊び心と少しの狂気を交えながら探っていく筆致は、
文学論とも創作論とも哲学ともつかない、ひとつの『読み物』としての強度を帯びている。

思考はページの外にまで及び、
記憶は読者の内側で再編されていく。

物語を信じ、読むという行為そのものを愛してしまったすべての人へ。

これは「なぜ物語は人を動かすのか」という問いに向き合った、
誠実なエッセイ。

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