二〇〇一年のファンメール

@mtmynnk

ガラケーから始まって

携帯電話を初めて手にしたのは2001年の春だった。

16歳。まだクラブの深夜営業には行けない。


友達に深夜のメール。

ネットサーフィンはとても楽しい。

怖いのはパケ死だけ。


ある時、小学校の頃からCDを集めている音楽家のウェブサイトを見つけた。

『お仕事依頼以外のメールはこちら!』

ファンメールを送ってみようかな。

ボタンをポチポチ。打っては消す。

「読みにくくてごめんなさい」

私の携帯は改行ができない。

朝まで格闘して、送信したのは朝だった。


返信が来たのは夕方頃。心臓が爆発するかと思った。


件名『Re:子供の頃からファンです』

メールありがとうございます。

携帯からだと改行出来ないんですね(笑)。

内容は全部読みました。嬉しいです。

今度クラブでDJをします。良ければ遊びに来て下さいね。

あなたの好きな曲は毎回盛り上がります(笑)。


彼からのメールは無駄がなく、優しかった。

彼のスケジュールをウェブサイトで見る。

会場はほとんど東京。たまに地方の大都市。私が住むのはもっと田舎。交通費だけでCDが買える。深夜営業。「18歳未満は入場できません」。


彼の言葉を思い出す。

「良ければ遊びに来て下さいね(笑)」

遊びに行きたいんですけどね。


「私は16歳で深夜入場不可なんです。大人になったら参加したいです」

彼にそう返信して眠る。お金がないとは言えなかった。


件名『Re:Re:Re子供の頃からファンです』

そうでしたか、文面からもっと大人だと思っていました(笑)。

気を遣わせてしまいすみません。

是非、大人になったら遊びに来て下さい。

僕はずっと活動していますので。

東京なら西麻布のyellowにいます。


それから何度か彼とやり取りして、自然とメールを送れなくなってしまった。

DJイベントに参加できない私がメールを送っても迷惑だと思ったから。

彼はレコード会社が変わってから寡作になってしまった。


大人になってネットをチェックする。

yellowは潰れていた。

彼はDJ活動をやめ、作曲活動が中心になっていた。

彼のSNSをフォローして、ふと呟いた。

「西麻布のyellow、行ってみたかったな」

通知1件。

「フォローありがとうございます。若い頃はよくyellowでDJしてました。懐かしいですw」

「昔ファンメールを送った者です。yellowに憧れていました。まだ子供で行けずじまいで」

「もしかしてガラケーでメールくれました?」

「そうです!」

「今度神楽坂でライブやるんですよ。良ければ遊びに来て下さいねw」

「行きます!」


神楽坂の小さなライブハウス。

全ての音がキラキラ光っていた。

彼は本当にシンセサイザーが好きなんだなぁ……。

「今日は懐かしい選曲でお届けしました。それでは最後の曲、聴いて下さい」

前奏がかかり、20年近く前の彼の言葉を思い出す。

「あなたの好きな曲は毎回盛り上がります(笑)。」

「僕はずっと活動していますので。」

yellowはもう無い。

でも、あの時の彼の言葉は本当だった。

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