素晴らしい世間様、僕を助けない人たち。
学生作家志望
置いてけぼりにしたくせに
家に帰ると、知らない子供がいた。
ただそれだけ。でもこれは世間様からすれば、異常事態の末端。想定外のはしくれか?
テのかわを取るみたいに、ささくれを取った。さすれば痛みがくることもなく、血が飛び込んできた。
この知らない子供に会うのは今日で何度めだろう。考えればわかることはどうしたって考える気にならない。知らない子供も考えてしまえば知った子供になる。ならば考えないでほったらかしにしたいものだ。
ただ僕には役目があたえられた。だから仕方なく、茶色の床を踏んだ。ダニもウジもいるだろうから、手ではらった。それから子どもたちに飯をやった。
手から血がしたたり落ちていくのを、ふこうともしなかったから、血が固まって、変なあとが蛇みたいに床に連なった。
僕が小さいころにも同じ蛇を見た。あのころの僕が今の世間様を覗いたらどう思う。たぶん、「なにを今更。」と反吐がでる。
育児放棄、またはネグレクト。それと毒親。腐ったミカンの皮、かパンの耳かをよく口に詰めていた。苦くて苦くて、頬があつくなった。
部屋に閉じ込められたから、小はペットボトルでした。大はどうしたかはよく覚えちゃいない。それこそ考えたくない。
毒親が家に社会から返ってくるのは、夜のどまんなか。寝ているところをずかずかと入ってきたと思えば、僕を踏み台にしていびきをした。
窓が白く濁ってきたころくらいか、毒親は僕を連れて、知らないやつらのとこに行った。
ガンガンと振動する床から、音が耳をすり抜けて脳に侵入してくる。金にも赤にもなった髪と、なぜか髪みたいに真っ黒にした腕を見て、僕はようくわからなくなった。
僕の普通はいつから消えてたのか、記憶に残っているのはまだ生まれたての時。優しかったあいつが、壊れないようにお人形みたいに撫でて、抱いてくれたこと。
人はなかなか変われない。僕ができる前からきっとこの毒親は毒親らしくあるように、そうやって生きてきたんだろう。
相談するあてもなく、ただ夜道を徘徊。うろうろとうつろの目で孤独をうつうつしていた。
ただ今はどうだ。夜道を歩けば、警察がやってくる。
今はどうだ。一晩中泣いて、そのままで朝がやってくることもない。
世間様は変わった。いいように、わるいように。
人一人変わることはないのに、大衆だけは簡単に変わる世間様。
世間様に土下座しておけばとりあえず平凡な暮らしが手に入る。
それができなきゃ置いてけぼりさ。
今僕は児童相談をあてに働いている。知らない子供たちの手助け。僕と同じ育児放棄、ネグレクト、毒親。その元の被害を受けている子たちを助けるという仕事だ。
人は変われない。未だに心はカッターみたくじぐざぐだ。
世間様の末端、そこで生きる僕は、今日も知らない子供と息をする。
息を吐くように、「生きろ。」と、それだけ言う。
素晴らしい世間様、僕を助けない人たち。 学生作家志望 @kokoa555
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