胸に刺さる痛みと強靭な精神
- ★★★ Excellent!!!
人工的に愛玩動物として設計された妖精のあだ名は「三日妖精(スリーデイズ・フェアリィ)。
主人公の女性優華の部屋で、妖精は目覚める。
その可憐さに読者の頬も思わず緩むが、妖精の美しい瞳には
「ただ雑然とした狭いワンルームの光景が映っていた」
この冒頭の一文が、厳しい現実と哀感を共にたたえていて胸が痛んだ。
タイトル通り可憐な妖精はわずか三日で死ぬ。
本作を読み終え、若いころ愚かで未熟で幼稚でドアホな自分のせいで死なせたペットを思い出してガックリ落ち込んだ。
本作の主人公優華は部屋の掃除もろくにできない女性で、正直妖精を飼う資格はないのだが、それは自分もまったく同じだと思った。
と同時に作者の強靭な精神に感銘を受けた。
作者の優華を見る目は常に厳しく、妖精と暮らす三日間は優華が生まれて初めて自分の「無力」をとことん味わう三日間だった。
妖精がモチーフなのに、物語に甘さがないのはそのためである。
たしかに優華は成長した。
しかし妖精は死んで帰らない。
やっぱりこれは悲劇だなあと思った。
かつてペットを飼っていた人にはたまらない小説です。
ご一読をおすすめします。