Re:サイクル
三屋城衣智子
Re:サイクル
あなたのその無骨そうな、角張った骨と筋が程よく浮き上がった手が、私の肌に触れる。
嗚呼。
しっとりとした空気があなたと私の間に存在している。
何度も何度も。
風に揺れるカーテンが、窓辺でダンスするように。
離れては近づいて。
近づいては、離れていって。
雨の日も晴れの日も、嵐だって一緒に乗り越えた。
もちろんそりゃローテーションだから、常に一緒とは限らなかったけれど。
なのに。
今私の体は、千々に千切れている。
心が掻き乱されている。
引き締まった腹筋。
盛り上がりその力強さを誇示している胸筋。
低くコントラバスのように鳴る喉。
すっと通った鼻筋に、薄くけれど大きな口を伴った薄い唇は、うっすらと開いてちろりと舌がのぞき。
二重のキリッとした瞳は、ブラックダイヤモンドのように黒々と鈍いながら輝いている。
あなたのその整髪料で整えられた艶やかな黒髪から、私の体はそっと離れた。
もう、二度と会えないのかしら。
私の目の前はとてつもない絶望で真っ暗になる。
けれど。
私が投げられた先は他の大勢と同じ、生まれ変わりの揺籠だった。
「なら、いいわ」
私は独りごちた。
必ずや、また、私は肌着へと生まれ変わり愛しの彼の元へと還ってくる。
そう決意してそっと瞳を閉じた。
千切れて穴の空いた私の体が、じくじくと痛む。
けれど平気。
だって心のほうが痛いから。
遠くから、回収車のエンジン音が近づいてくる。
またね、大好き。
必ず。
必ずよ。
Re:サイクル 三屋城衣智子 @katsuji-ichiko
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