家庭菜園
めいき~
若夫婦の家庭菜園
「ねぇ、こはくちゃん。これ何?」少し拡張されたベランダを指さしてわらびが言った。
「わらび君、これはかていさいえんです」「何故、急に?」「最近、買い物にいくと全てが高いのです」「ベランダが大きくみえるんですが?」「隣の大工の源三郎さんに拡張してもらいました!」胸をはるこはく、それを見て胸をはるべきは源三郎さんだと思うけどなぁと思いながらも突っ込む事はせず。
「にしても、キャベツもモヤシもニンニクもあるね」「よく使うものを菜園できれば安くあがるんじゃないかと思って源三郎さんにお願いしたのです」「こはくちゃん、あったまいい~」「でしょ~」少し赤くなって照れるこはく。
ニンニクはペットボトルで、モヤシは専用の引き出しが横に置いてあってかなり本格的に作られれていた。「これ…どこで勉強したの?」「源三郎さんがやってくれたよ?」カフェを紹介するようなポーズで舌をぺろっとだして笑いながらいうこはく。
(それ、ひょっとしてこはくちゃん何もしてないんじゃ……)
「ねぇ、こはくちゃん」「なぁに?」「流石にお世話はしてるよね?」「ん? なんで」首を傾げるこはく、イヤな予感がしてきたわらび。
「お世話とかどうやってんの?」「あぁ~、それはね。源三郎さんが作った家庭菜園支援システムらくしちゃってゴメン(∩´∀`)∩Dive6がやってくれてる」
(げんざぶろぉぉぉぉぉ!!)
恐る恐る手を上げながら、わらびが尋ねる「どれくらいの事ができるんです?」
「んとね? 試しに、そこにあるバケツで水をかけてみて」眼の前の消化バケツで投げつける様に水をかけるといきなり屋根が出てきて「規定以上の水を検知しました」とか機械音声が聞こえて屋根が伸びて来て水を防ぐ。思わず「はぁ?!」みたいな声が出るわらび。
「雪も水も防いでくれるし、盗もうとすると電撃がベランダ中を走り抜けて。仮にゴムとかで防ごうとしてもゴキブリホイホイの強力な奴でサンドイッチされるよ?害蟲とかも、センサーに検知されるとレーザーでじゅってなる」「サンドイッチされた盗人は?」「カメラとかにもばっちり映るし、特殊な塗料や接着剤だから剥離剤無いと皮膚ごと剥がさないと落ちないって」
その塗料を弾丸の様に発射する装置があちこちにセットされている。「しかも、塗料の材料にヤマイモ成分を抽出濃縮して使ってるから塗料がついたところはかゆみで寝れなくらしいよ?」
(なんてもの組み込んでんだジジイ!)
「他にも全自動水やりや、肥料生成装置もあるし。肥料の材料は野菜の皮とかの生ごみだけでいいって」「燃費は?」「朝昼晩の温度差だけで発電機を回せる特殊なシステムで実質ゼロだって」「あのジジイなんてものを人んちのベランダに作るんだ……」助かるけど。「天候や風に温度管理なんかも野菜の育成具合をかってにAIが学習して、全自動で作るから魚とかも水の流れとか作れるし、メンテナンスも自分でやるから大丈夫っていってたよ?」
「こはくちゃん、味とかは?」「わらびくんが朝食べた通りだよ?」「僕の実家の農家がこれ知ったら」「多分、あのしわしわほっぺを左右に伸ばしまくると思う」
下手したら、牛に縄つけて両足にその縄をつけてゆっくり引っ張らせるかも。
二人の脳裏に、歯と頭をキラリと光らせ親指を立てた。源三郎の笑顔が浮かぶ。
思わず、夫婦二人で溜息をついた。「誤作動とかないの?」「異常があると百パーセント止まるって。あ~でも、欠点が一つあるって言ってた」「どんな?」「それはね、収穫がどうやっても全部手動だって事」思わず天を仰いで「最悪じゃん……」
つまり、収穫以外の全てにおいてほぼ完ぺきに何もしなくて良いこのシステムの最大の欠点は……。
大型の機械も他のシステムを壊しちゃうから入れられないってさ。「ダメじゃん」「だよねぇ~」その後、こはくとわらびの夫婦は仲良く笑って手作業で収穫しましたとさ。
<おしまい>
家庭菜園 めいき~ @meikjy
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