エクストラ3 エピローグ

 俺は今日もAB組のある校舎に行く。


 まだ二ヶ月も経過していないのに、AB組の生徒たちは毎日、激しく楽しくやっている。

 いつも通り一年AB組の教室にむかう途中でポケットが振動する。着信だ。

「おー、ひさしぶりだな。元気か」

 友人からの連絡だった。

 彼はいつも多忙で、適当に生きている俺とは正反対だが、なぜか今日までつづいている。


「送ったやつ見たか? ああ、やばかったろ。『サイコロ散歩』の動画。俺が頑張って編集したんだぜ? ……あ? CG? 使ってない、使ってない」


 彼とはAB組での出来事を話していると、つい学生時代のことを思い出す。

 あの頃は俺もまだ真面目で、彼は逆に不真面目で。今とは逆だ。


「楽しんでもらえてなによりだ。……まったく、昔のお前を越えているよ。お前の娘は」


 スマホ越しに苦笑いをしているのが容易に想像できた。

 今の立場から学生時代を振り返っているのだろう。渋く笑うしかない。


「にしても……よくもまあ、お前の娘についていける生徒を集めたものだ。……は? 本当に全国を回ってかき集めたのか? はー、娘にも負けず、親バカだな。ああ、わかった。わかった。親心だな。そういうことにしておく。……ああ、お前の思惑通りに毎日を楽しくやっているよ。……あとAIロボット送ってきたの、お前の差し金だな? …………いや、貰えるもんはもらうに決まっているだろ!?」


 やっぱり考えるまでもなく、あれは彼のイタズラだったか。

 偉くなっても性根は変わらないものだ。


「まあ一体増えても、たいして人数もいないから変わらないけどな。とくに俺がなにかしているわけでもないし、授業は全部道徳だからよ。……おいおい! 保育士免許しか持っていない俺を非常勤講師として無理やりAB組にねじ込んだのはお前だぞ!? 俺が技能を発揮したのなんて今のところ入学式での黒板の飾りつけくらいだぞ! 金貸してくれ! ……ああ、勢いで言っても無理か。ははは、お前に対する俺なりの冗談だよ。大丈夫だ、困ってねえよ。まだ今月は」


 彼と電話していると、一年AB組の教室がいつものように騒がしくなっていた。


「おっ、またミス高峰が元気にやっているぜ。……ああ? なんではしゃいでいるか知りたいのか? ちょっと待ってくれ」


 教室からは見えないところで俺は耳を澄ました。

「さてさて。一年AB組はなんの話で盛りあがっているのかねぇー」



「おいタカミネアリス! 一億円は安すぎだろ!」

「も、もっと、高い、のかな?」

「……zzz……同意見だ……」

「だったら生涯年収の半額でどうかしら!」

「だから違う! 金の話じゃない!」

「もちろんよ! 玉の話でしょう!」

「うまいこと掛け合わせないでくれるか!?」

「今からここにテルのキン〇マオークションを開催いたしますッ!」

「勝手に開催するなッ!? 勝手に出品するなッ!?」



 俺は耳を疑ったが、脳内で整理して彼に伝える。

「…………なんか、キン〇マの競りがはじまったぞ。いや嘘じゃないって」


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AB組のセツメイ中。 タカノハナ @oshikiri

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