とても美しい物語でした。
心優しい男。そして彼を想う女。その二人が強く互いをいたわり合っていて、「あなたは幸せでしたか」の問いがとても強く響いてきます。
行き倒れていた女を、一人の男が救う。やがて、女は男のもとに居続けるようになり、二人はやがて夫婦になる。
女はどこか特別な存在だということが、読み進める中で自然と伝わってきます。そんな二人が通常の夫婦のように添い遂げられるかというと、きっと難しいだろうということも。
でも、「幸せかどうか」は別問題。お互いの気持ちがあれば、どんな結末を迎えようとそこには確かな「何か」が残る。
この物語の「続き」ももしかしたら存在するのかもしれない。この女の正体などを考えると、生まれた子供にはまた別の「物語」もあるのかも。
和風ファンタジーに詳しい読者なら、「あの有名な陰陽師」の名前なんかも思い出すかもしれない。そう言えば彼も「母親」にはちょっとしたエピソードがあったな、などと。
そんな風に「その後」も考えてみたくなるほど、いつしか物語の世界観に没頭していました。互いが互いを思いやる姿に胸を打たれる、本当に素敵な作品です。