肖像画の穢れ

学生作家志望

美しいひとであれ

常に美しくありなさい。美しくないものは穢れとして死ぬ。


簡単に述べる人間、私はその人間たちに永遠に縛られて生きていく。縄やツタできつく締め付けられるわけではなく、心そのものまで奪われて殺される。


私という存在自体はもう生まれた頃から無かったと言える。私はそんな家に生まれた。いや、もしかすれば時代そのものの背景に私は写されているのかもわからない。


少なくとも私の生きるこの時間に、私の自由は保証されない。


美しい女性の肖像画が私の家には多く並べられていた。どこか遠くの国の美しい女性、肌が白く顔が小さく、鼻が高い。痩せた体型をして身長も高い。


どれもそんな風な美しい肖像画ばかり。景色を描いた絵など1つもなく、どれも腹から上の絵。


女、女、女。美しくなければ死ぬそれが女か。私は死ぬ。もうまもなく。息もできなくなって死ぬ。


美しい女性が描かれた肖像画のあの中の1つに、私は並べない。私は穢れた肖像画。


生まれつき、肖像画の穢れ。


顔も体も私は何一つあの絵のように美しくない。姉も、その上の姉も、みんな美しいのに。私だけ、あの絵のようになれなかった。


ああ。


できれば私も誰かに描かれたかった。


今日、赤い縄が人生を締めた。

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肖像画の穢れ 学生作家志望 @kokoa555

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