第19話 『試射会』
てことで。
『どうして異世界でトラックなんて作ったのか?』という話なんだけどさ。
最初は普通に、マジノ線よろしく、トーチカを並べた一般的な防衛施設を作ろう……と思ったんだけど。
うちのコロニーの人数を考えると、人が少なすぎて三ヶ所程度しか維持できそうもない。
そもそもうちのコロニー。
確かに拠点はあるけど……全員出払ってしまえば、どうしても守りきらなければならない場所でもないんだよなぁ。
てことで、『守るより攻撃に出たほうが早くね?』という方向に考え方を修正。
それには相手より早く動ける移動手段――騎馬隊より早く動ける手段が必要となってくるんだけど。
「さすがに自転車で馬と競争しても勝てる気がしない」
現状でも十分乗り物は作れるはずなんだけど、まだ燃料が――いや、穀物も酒もあるんだからバイオ燃料、バイオディーゼルならどうにかなるか?
そこからタイヤに使うためにゴムの木を植えたり、村まで往復用するための自転車も作ったり、野生のジーナさん以外だれも二輪の乗り物に乗れなかったり、バイクにサイドカーを付けたは良いものの道路の整備から必要だと気付いたり――などなど、紆余曲折があり。
というかジーナさんに簡単に自転車を乗りこなされたのが悔しかったので、一輪車も作ってみたんだけど。
「パパ! 自転車もこれみたいに後ろにも動けるようにして欲しい!」
この娘さんの運動神経はいったいどうなってるのかな?
あと、ジーナさんと一緒に自転車に載ってたヴィオレッタ。
「お父様、練習をしていたらお尻が痛くなりました……。
怪我をしていないか、確認していただいてもよろしいでしょうか?」
この娘はこの娘ですきあらば尻を出そうとするし……。
もちろんヴィオレッタのお尻は擦りむけたりしてなかったから大丈夫だよ!!
と、そんな父娘のふれあいと、それを見ていたリアンナさんに半目で睨まれたのはどうでもいいとして。
トラック。本当ならSUV――車高の高い、ごつい感じのカッコいい車が作りたかったんだけど……ほら、俺ってゲーマーじゃないですか?
そして、そんな俺のまわりも似たような連中ばっかりじゃないですか?
無免許のおれは論外だとして、免許を持ってるヤツも無難な軽、あるいは仕事用のライトバンやトラックくらいしか乗っていないわけで。
「時間と材料さえあれば九七式中戦車(チハ)くらいなら作れる気がするのに……」
要らない知識は大量に保有してても、一般的な常識が欠落気味の俺に普通の車など作れるはずもなく。
とりあえず軽車両を作ってみたものの、出来上がったのはワー○ンのビー○ル。
狭すぎて何も持ち込めないんだけど?
消去法でトラックしか選択肢がなかったという。
「いや、ここは逆に? むしろトラックで良かったと言うか?」
……嘘です。
なんかこう、カッコいい……ほら! なんだっけ?
MSXとか? RX-78とか?
そんな名前のスポーツカーに乗ってみたかったよ……。
「そもそもトラックってオフロードを移動する手段としては向いてなさすぎ――」
しかし! そこで俺の脳裏にとある映像が浮かび上がる!
「オフロード……アフリカ……トラック……T○Y○TA……っっっ!!!!』
「ヒカルさん、いきなり大きい声を出されてはお腹の子どもがびっくりしてしまいます」
そう、颯爽とサバンナを駆け回る……いや、さすがにサバンナは走ってなかったような気もするけど!
違法改造された、荷台に重機関銃やロケットランチャーを積み込んだ世界のT○Y○TAの勇姿を!!
「ふっ、ふふっ、ふははははははは!! ……勝ったな」
「相変わらず情緒不安定な男なのです……」
よし、ここまでは予定通り。あとは後ろに積み込む武装だ。
最初に積もうと思ったのは『G○U-8 アヴェ○ジャー』。
みんな大好き! 退役させる詐欺を繰り返す某攻撃機が載せていた30mmガトリングである!! ……が、デカすぎてトラックに載せられない。
というか重量が2トンくらいあるから持ち上げることすら出来ない。
うん? SUVは作れないのに、どうしてそんなニッチ兵器を作れるのか?
えっ? 逆に聞くけど、普通の人間はアヴェンジャーの説明は出来てもSUVの説明なんて出来ないよね?
だってガトリング……カッコいいじゃん!
砲身が回るんだよ?
銃身だって七本もあるんだよ?
「何よりあの発射音……思わず勃起しそうに」
「ふぐっ!? お父様のお父様が……大きくなるんですか!?」
まぁ載せられないのはどうしようもないので、最終的に車上で扱える現実的(?)なサイズの『ミ○ガン(7.62mm)』に落ち着いた。
……というかヴィオレッタはどうして鼻血を流しているんだろう?
トラックが完成すれば、いよいよ『試射会』となる。
運転席にはジーナさん……は、なんとなく危険が危なすぎるかおりがするので、リアンナさんに運転を任せることに。
颯爽と走る車の荷台から、ガトリングの爽快な駆動音が響き渡る。
そして流鏑馬のごとく設置された的に次々と弾丸が命中――それらを粉々に破壊。
「パパ! なにそれすっごい! 次はジーナ! ジーナが撃つのやりたい!!」
「おねえちゃんは運転もできるんだから、撃つのは私のでは?」
「ダメ! パパの次はジーナが一番に撃つ!」
「それにしても、馬も要らず走る馬車ですか……。
ヒカルの作るモノはあいかわらず意味がわからないのです」
いつも通り楽しそうなうちの娘さんたちとため息をつくルミーナ嬢。
「いや、アレは意味がわからないで済ませられる代物ではないだろう!?
あんなモノと……もしも戦場で出くわしたら!!」
「ははっ、あれ一台あれば我が領の全兵卒……いや、王国軍の兵士をすべて薙ぎ払うことすら可能であろうな!」
「あ、姉上、さすがに笑い事では……」
「むしろ笑う以外にどうしろと言うのだ?」
妙に悲観的で、同時に達観しているアレストロの姉弟。
もっとも、ここまで用意していたにも関わらず、結局雪が降り出しても討伐軍は影も形も見えず。
そのまま十一月も半ばとなり、少なくとも軍の行軍など出来る状況ではなくなったころになって、ようやく南の峠道に新たに設えられた小屋――
『この先入るべからず、要件のある者は小屋にて待機するように』
という、立て看板が掲げられた場所に一人の男が到着した。
ゲーマーのおっさん異世界の大地に立つ! あかむらさき @aka_murasaki
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