動画の隅に

第1話

　仕事の休憩時間、育休中の妻から子どもと遊ぶ動画が送られてきた。昼食前の、いつもの公園で遊ぶ様子だ。

　妻が吹いたシャボン玉を嬉しそうに追いかける娘が映されている。

　はしゃぐ娘の数メートル先に、高齢女性が立っていた。娘を見ているのだろうか。子どもを連れて散歩していると、年配の方から話しかけられることも多い。

　その女性の様子は少し妙だった。

　優しく微笑んではいるものの、首がほぼ90傾いている。そんなに曲がるだろうか。

　加えて妻からの動画は20秒ほどであったが、微動だにせず、瞬きもしていないように見える。あり得なくもない程度だが、自分でも上手く説明できない不気味さを感じた。

　帰宅し、娘を寝かしつけた後妻にそれとなく尋ねる。

「動画ありがとう。すごく楽しそうだったね。後ろの人も嬉しそうに見てた」

「シャボン玉、すごく喜んだよ！今日は終わりだよって言っても、まだやってほしくて泣いたくらい笑」

「後ろの人？ああ今日は外国人の親子が隣町から来てたみたいで、あの子のことすごく可愛い！って構ってくれてたんだよ。でもあれ撮ってる頃には帰っちゃってた気がするなあ、お昼前だし」

　妻の言うことが分からない。

「いや、なんか後ろにおばあさん...」

「何のこと？いなかったよ...」

　あの時の不気味さが分かった気がした。

　あの老婆は、娘ではなくカメラを見ていた。