ホラー好きの心をえぐってくる、強烈な一撃を繰り出してくる作品でした。
本作では一個の「動画」が流されることになり、『主人公』はそれを鑑賞していきます。
その動画の中に出てくる男女は、少し見ただけでわかるような「嫌な奴ら」だと感じさせられる。
動画の内容はもちろんホラー。ホラーにおいて「嫌な奴」が出てきたとしたら、その末路はもちろん……。
ホラー映画やホラー小説。それらに付随する「お約束」。
視聴者や読者はホラーと向かい合う時、「怖い物見たさ」というものを強く刺激されるのが定番です。
でも、「怖い物」の先にあるのは、ある種の「不謹慎」であることは否めない。人が殺される展開とか、とんでもなく酷い目や怖い目に遭う展開。
それを見て「楽しい」と感じるわけなのだから、それは客観的に見ると「そんな自分ってどうなの?」と思わされる部分もある。
だから、ホラーの作り手はその辺の配慮をしているものでもあります。「これからこの人は悲惨な目に遭うけれど、遠慮なく楽しんでくれちゃって大丈夫ですよ」と暗に示されています。
そうした「配慮」により、ホラーファンは心置きなく「恐怖展開」を楽しむことができ、同時にそうした配慮が「お約束」という形で認識されるようにもなっていく。
本作は、そんな「お約束」や「配慮」という、作り手が仕掛ける「メタ的な要素」に綺麗にメスを入れてくれる作品でした。
次へ次へと読み進め、主人公の心の動きを追って行く中で、「自分が普段、どんな風にホラーを鑑賞しているか」というのを客観的に見せつけられている気分になります。
そんなホラー好きの「盲点」を突いてくるオチ。動画そのものの正体を考えると、その裏にある「意図」のおぞましさにゾッとさせられます。
ですが、話はそれでは終わらない。実は「二重」のオチがあり、「読者」も巻き込む更なる仕掛けが……
とにかくホラーとしての「熱いハート」が感じられる作品でした。ホラーが好きな人ならば絶対に目を通してみるべきだと強くオススメいたします!