第22話 愛里の恋

――――次の日


――――愛里の家


「ねえ、ねえ、ママ。先輩のお見舞いに行くの。こんな格好でいいのかな?」

ママは上着と同じ色の帽子をかぶらせながら、

「かわいいわよ。まるでデートに行くみたいね(クスッ)。」

ママに、ちょっとからかわれちゃった。

1時半、高橋先輩が迎えに来てくれた。

「こんにちは。」

高橋先輩の私服姿、はじめて見る。

かっこいい♡

「こんにちは。高橋先輩♡」

「平松、制服姿もかわいいけど、私服姿は一段とかわいいな。」

なんか高橋先輩の言いそうにない、歯の浮く台詞だった。

「じゃ、ママ。行ってきます。」


――――行き道


「あっ、高橋先輩。お花買って行こう♡」

「カスミソウとピンクのバラください。」

高橋先輩は、何か言いたげに、私の顔を覗き込んだ。

「どうかしたんですか?高橋先輩。」

高橋先輩は、はにかみながら、

「なあ、俺たち付き合ってるんだよな?」

そういって、手をつないできた。

私はびっくりしたけど、嬉しかった。

でも、やっぱり、高橋先輩のキャラじゃないって思って笑ちゃった。

「なに笑ってるんだよ。(テレ)」

私たちは、手をつないだまま病室までいっちゃった。


――――病室


「こんにちは。湖桃先輩♡」

「湖桃、調子はどうだ?」

「あら、愛里ちゃん、大地君、いらっしゃい。」

とても穏やかな顔の湖桃先輩私たちを迎えてくれた。

梶先輩もお見舞いに来てた。

梶先輩は、目ざとく、私と高橋先輩が手を繋いでるのを見つけた。

「大地、いつの間に愛里ちゃんと手をつなぐ仲になったんだ?」

私は慌てて高橋先輩の手を離した。

「愛里ちゃん、おめでとう。」

「大地君、よかったわね。」

「内緒だけど、大地君、ずっと、愛里ちゃんのこと好きだったのよ。」

私は高橋先輩の顔を見直した。

高橋先輩は赤くなって、横を向いた。


「大地君、愛里ちゃん、私、来週退院することになったの。」

「わあ。おめでとうございます。」

湖桃先輩は話を続けた。

「それでね、お父さんとお母さんと浩平と何回も話し合って、退院後はね...」

「今の学校に戻ることにしたの。」

「湖桃、大丈夫なのか?」

高橋先輩が心配して聞いた。

「どこに行っても、ついて回ると思うの。」

そういいながら、切った手首を見つめる湖桃先輩...

「今度こそ、僕が湖桃を守るって約束したんだ。」

梶先輩が真剣な顔で言った。

「浩平と居たいって言うわがままを聞いてもらったの。」

湖桃先輩は、嬉しそうに言った。

「頑張れよ!湖桃。梶。」


「なあ、ところで大地は、愛里ちゃんのこと、なんて呼んでるんだ?」

「まさか、まだ、平松呼びじゃないよな。」

梶先輩が冷やかすように言ってきた。

「呼び方なんて、なんだっていいだろ!」

高橋先輩は、ちょっとむすっとした。

湖桃先輩が私に聞いてきた。

「まさか、愛里ちゃんも高橋先輩呼び?」

私は無言でうなずいた。


「あらら。」

「愛里ちゃん。大地君、私お見舞いに二人が名前で呼び合ってるとも見たい♡」


えーーーーーーーーーーーっ!


高橋先輩は目をそらしながら

「愛里」

って呼んでくれた。

「ダメダメ、ちゃんと愛里ちゃんの顔見て呼んで。」

楽しんでません?湖桃先輩。

高橋先輩は、今度は私の顔を見て

「愛里」って呼んでくれた。

私は、真っ赤になって、泣いちゃった。

私は高橋先輩の袖をつまんで、小声で、

「大地君」

って呼んだ。


                     END

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

愛里の恋2 夢僮亜樹 @mutouaki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る