第一章 『"あの頃"のencounter』

 第一章 『"あの頃"のencounter』


 カランコロンっとドアの鈴がなる。




 「いらっしゃいませ。空いてる席にどうぞ」

 このパブ ──── 『deep groove』のオーナーの女はカクテルを作りながら客に話しかけた。

 黒い背広に黒い帽子、黒い手袋といういかにも怪しそうな姿をした男が入ってきた。

 此処に来る客はお洒落をしてくる客が多く、アクセサリーが照明の光を反射し、キラキラと輝く店内。

 そしてドアには黒い男。

 控え目に言って其の男は"場違い"だ。

 「嗚呼。すまないが今日はカクテルが目的ではないんだ。」

 しばらくすると黒い男はカウンターの端の席に座りながらいった。其の声は低く良く通る声だった。

 男の声は喜怒哀楽のどれにも当てはまらないものだった。

 十一時という夜遅い時間にパブのなかは沈黙に包まれた。

 場違いの男が警察手帳を取り出していたからだ。

 オーナーはカクテルを作りながら唯男を見つめた。客は蛇に睨まれた蛙のよう、否、蛇に睨まれた蛙だ。楽しく団欒をしていた者も、メニューをみて吃驚していた者も、失恋して落ち込んでいた者も、全員が二人を見て固まった。

 其れもそのはず、二人は互いを警戒するように見つめあい、そして薄く笑っていたからだ。

 笑ったあとの二人の目に優しさはなかった。まるで相手の心をみるように、相手を見透かすように、最早、相手ではなく遠い何処かを見つめていた。

 「……カクテルを御望みでないならジュースもありますよ?どうです?」

 オーナーの女は瞬きをした後に何時もの笑顔で男に話しかけた。

 だが、店内ではグラスに入った氷が鳴らす音しか聞こえなかった。

 男の方を少しみると、男は時計を眺め

 「遊んでる暇はないんだが?」

 少し間があったが、カウンターに座る男はオーナーを横目で見ながらいった。

 今回は男の声には感情があった。

 喜怒哀楽で表すなら、「怒」だ。

 客にとっては恐怖以外の何物でもなかった。

 オーナーと警察の間に火花が飛び交っているのが客には見えていた。

 店内の天井にある防犯カメラにも火花が映るのではないだろうか。

 「おや………其は失敬。」

 「……ですがお客様もおりますのでここは一杯どうですか?」

 オーナーの女は場を和ませる為に男に提案した。駄目元だが。此の男には通用しないことぐらいわかっていた。

 「ならを。」

 男は少し考えながらオーナーに言った。

 「おや………何故です??」

 「どうでもいいだろ。」

 男は女の発言に対して素っ気なく対応し財布から1500円をカウンターにおいた。

 「否、貴方がウォッカを頼むのは似合いませんね。否、貴方にぴったりかもしれません」

 「煩い。誰が寡黙だ。馬鹿。」

 女は微笑みながら男が出した金を受け取った。

 「ちなみに此処はソルティー・ドッグは2500円ですよ。」

 女は微笑みながら手を出した。プラス千円の要求だ。

 男は値段を確かめるためにメニューをみたが、「ソルティー・ドッグ 2500円」と書いてあった。

 「先程買い物して手持ちが少ないんだが…

しかも2500円か……10杯飲んだら2万…」

 「文句があるならオレンジジュース出しますが?」

 「ふざけるな。オレンジは嫌いだ。」

 「知ってます。」

 「貴様………。」

 男は大きくため息をつきながら千円を不服そうにカウンターにおいた。

 女は満面の笑みで其を受け取った。

 「でも何故ソルティー・ドッグ何ですか?貴方の好きなブランデー・クラスタもありますよ?」

 女は男が見ているメニューの「ブランデー・クラスタ 3500円」とかかれた所に指をおいた。

 「煩い。思い入れがあるんだ。」

 男は女の手を退かしメニューを閉じていった 。

 「そうですか。ウォッカ……私にも思い入れがありますよ。」

 女は遠くを見つめながら言った。壁のもっと奥、水平線よりも奥の、何処か遠い過去の記憶を。

 「貴様のとは違う。」

 「おや、ソルティー・ドッグに関する思い出なんて一つしかないでしょうに。"あの頃"私が使ったじゃないですか。ウォッカを。」

 「黙れ。思い出すと不味くなるだろ。」

 「はいはい。ウォッカならすぐだしますよ。」

 「嗚呼。あの頃……か…。」

 男は静かに「open」とかかれた札が下がっているドアに向かって呟いた。

 外では静かに雨が降っていた。

 「何か言いました?」

 「否。」

 パブのオーナー、ポーラー・エクスデーモン。

 カウンターの端の席に座る男、ローズ・カーター。

 二人の出会い、否、出逢いは10年前。

 史上最悪といっても過言ではない出逢いだった。

 其の話はまた次回に。







 「おい。」

 ローズはソルティー・ドッグを作っているポーラーを横目で見ながら話しかけた。

 「?どうかしました?」

 「要件いいか?」

 「あぁ…。カクテルが目的じゃないですもんね。」

 「嗚呼。」

 「構いませんけど………お客様の前でもいいですか?」

 「構わん。」

 「でしたらどうぞ。」

 ローズは少し黙った後、口を開いた。

 「ニュースは見たか?」

 「ええ。」

 「そうか。ならクラブはいるか?」

 「クラブはいま寝てますよ。」

 「もう寝てるのか。なら明日の朝またここに来よう。」

 「開店前に来てくれません?」

 「開店は何時だ。」

 「…………十九時四十八分です。」ポーラーはローズを見ながら言った。まるで「何もかも全てお見通しだ。」とでもいうように。

 「…………。お前にしてはやるじゃないか。」

 「今さらですか?ほら、ソルティー・ドッグですよ。」ポーラーはできたソルティー・ドッグをカウンターの上におきながら言った。

 「嗚呼。感謝する。まあ、此の資料読んでおいてくれ。」ローズは鞄から資料が入った封筒を取り出しカウンターに置いた。

 其の封筒は分厚く、重みがあった。

 「此れですか……。重いですね。」

 「悪いな。"あの頃"の資料も入っているんだ。」

 「なるほど。読んでおきますよ。」

 「嗚呼。にしても此のソルティー・ドッグは上手いな。」

 「なにいってるんです?私が作ったんですから当たり前でしょう?」

 「其の一言がなければ完璧だな。」

 「酷いなぁ。」

 "あの頃"とは違い、会話が弾み多くの客が店を出ていた。

 本当はこの時間になれば片付けの時間だが、片付けたくても片付けられなかった。

 なぜならローズがお構い無しにおかわりをしているからだ。ローズはおかわりしては職場の愚痴をはき、しゃべらなくなったと思ったら最近の新人の話を話し、逆にポーラーも迷惑な客の愚痴をはき、最近仕入れたワインの話をし………と、長い時間が過ぎていった。

 ちなみにローズは気にせずおかわりを頼んでいるが、一杯2500円のソルティー・ドッグを十何杯もおかわりをしており財布が悲鳴をあげ始めていた。否、もう悲鳴が聞こえているかもしれない。

 「あの~?」

 「んぁ?んだよ……」

 「否………酔っぱらい過ぎてません?」

 「煩いな。」

 「そろそろウォッカ一瓶あくんですけど?ソルティー・ドッグってウォッカいれますけどおかわりをして一人で一本って……手持ち少ないんじゃ?財布大丈夫ですか?」

 「だいじょばない。」

 ソルティー・ドッグには、ウォッカを45mlいれる。ウォッカは一瓶750ml。この男はソルティー・ドッグを16杯飲んだことになる。

 ローズはもともと酒に弱く酔いやすい。そんな人間がソルティー・ドッグ16杯も飲めばこの様だ。

 しかも手持ちが少ない。財布が悲鳴をあげるのも仕方がない。

 「え…」

 「安心しろ。少し話したら帰る。」

 「もう大分話しましたよ。あとなに話すんです?」

 「…………墓参りにいきたい。」

 「は?」

 「お前のせいで死んだ妻子の墓参りにいきたい。」

 「…………車出しましょうか?」

 「いい。この仕事が終わったら行く。」

 「はいはい。なら早く解決しないとでしょう?早く帰ってください。」

 「お前…………両親の墓には行ってるのか?」

 「…………………クラブも私もまだいってませんよ。"あの頃"やらかしましたし。それに、解決してないのにのんきに行きたくないですからね。」

 「俺の方でも調査はしてるんだがな………。さっき渡した資料に其の事件もいれておいた。読むといい。」

 「ではお言葉に甘えて。」

 「嗚呼。」

 「あと……。」ポーラーが少し呆れたようにローズに話しかけた。

 「ん?」

 「片付けたいので帰ってください。」

 「糞っ」

 「一寸………。」





 男が帰ったあとポーラーは片付けを終えると先程までローズが座っていた席に腰を下ろし、資料を読んだ。

 「重すぎでしょ…………。」

 資料は三束にわかれており一束一束丁寧に紐で結んであった。

 三束とも一枚目に事件の名前が書いてあり、其のあとに事件の内容が記されていた。







[あとがき]

 お久しぶりです。神谷です。

 何と今回…3000文字越え何ですよ本編。

 ……………。多い。

 読むのが大変だったかもしれませんがすみません。第1話とかの方が長くなります。長編なので、早く完結させた方がいいかなと思い一つ一つ長いですが。

 今回登場したソルティー・ドッグですが、検索して出会ったときに

 (ストレイドッグスじゃん……)

と思いました。文ストだ…って。

 高校入試の勉強で、2月24日に壊れまして、やばかったんですよ。でもそのとき図書室で借りた文ストのBEASTのP179の挿し絵をみたんですね。

 泣きました。というか、奇声を上げました。心のなかで。本当に尊いんですよ。春河35様…………神ですね。其の挿絵の前後を読ませていただいたんですけど、本当に良くて。泣きましたよ。P209も。P210の挿絵最高なんですよ。ちゃんと泣きましたし、奇声も上げました。

 其のお陰で勉強頑張れましたから。朝霧カフカ様方に感謝ですね。もう、生まれてきてくれて有難う御座います。

 何時かお会いして握手して写真撮って小説かいているところを眺めたい……。

 もっと欲を言えばこの作品を朝霧カフカ様に書いていただきたい。

 もうヤバイですね。発狂ですよ。本当に。

 あれも好きです。綾辻行人vs京極夏彦。めっちゃ好きです。漫画に出てこないキャラで余り最初読み進めてなくて「んーー」と思っていたんですが、途中から最高に面白くて、もう、、やばいです。もう一度読みたい。

 皆さんも読んでください。漫画も最高ですが、個人的には小説の方が好きかもしれません。

 普通に最高ですよ。本当に神です。

 私のペンネーム?神谷カノエじゃないですか。朝霧カフカ様を真似して、名字を漢字、名前をカタカナにして、「カ」を入れました。

 もう世界一尊敬しています。

 本当にサインもらいたいですよ。家宝にしたいです。


 こんなことを書いていたらまさかの4000文字突入………。

 毎回こんな感じでわちゃわちゃおはなししますが…。ここもみていただけたらもう跳び跳ねて喜びます。飛び跳ねてと跳び跳ねてどっちが正解なんでしょうか………。

 まあ、ここ読んでるとき私が跳び跳ねている(飛び跳ねてる?)と思ってください。

 …………。

 カオスですね…。


 すみません話しすぎました(笑)。

 今回はここで失礼します。

 それではまた次回に。神谷カノエでした。

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二人の犯罪者 神谷カノエ @ninnjinn9

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