二人の犯罪者
神谷カノエ
プロローグ
「さっきからなに見てるんですか?」
あるパブの中でレイモンドは男に話しかけた。
横に座る長身の男は、レイモンドを見たあと、難しい顔をして答えた。
「10年前の尋問の資料だ」
「10年前?何かありましたっけ?」
「はぁ?」
男は眉間の皺をさらに深くして、呆れた声で言った。
「10年前の爆破事件だ。」
「爆破事件、、、、あー!孤児の二人の少女が起こした連続爆破事件ですよね。」
「嗚呼。」
横の男はレイモンドに相槌を打つと暗い顔をして目の前のオレンジのカクテルを眺めた。
「でもなぜ今になって10年前の資料を?」
レイモンドは男の顔を覗き込むようにしながら男にいった。
「、、、明日何日かわかるか?」
男は少し溜めてから答えた。
レイモンドにとってはそれが何を表すのか理解できなかった。
「明日が何日か」その言葉を聞いたレイモンドは唯左下を眺めることしか出来なかった。
「明日は1月1日だ。」
男はカクテルの水面に写る自分を見ながら言った。
レイモンドには意味がわからなかった。
明日は1月1日だ。だからどうした。そう言いたくなるのをグッと押さえた。
正直だれかに押さえたことを誉めてほしいぐらい頑張った。
レイモンドは丁寧な言葉遣いで尋ねた。
「はい。そうですけど、、それがどうかしたんですか?」
「10年前の1月1日はなんの日だ?」
なんの日もなにも10年前の1月1日は連続爆破事件の日だ。
「連続爆破事件の日ですよね?」
男は質問に答える度に暗い顔をして言った。
「そうだ。10年前のあの日…」
男の口が止まった。
何かを耐えるかのように、唇を噛んだ。
そして言った。
「……俺の妻子が死んだ。」
唯でさえ20時という時刻になり大晦日で人がいなく静かだったというのに、男の一言でもっと静かになった。
周りの客も気まずそうにこちらを見ていた。
この空気はレイモンドにとって地獄でしかなかった。
やっとはいれた職場の上司との会話で、家族が死んだ話をすることになるとは微塵も思ってなかったのだ。
レイモンドはなんと言えばいいのかわからなかったがこの空気をどうにかしたかった。
「それは、、、」と言えばいいのか?否。もっと地獄になるだろう。
「そんなことが、、、辛かったですね」と言えばいいのか?否否。殺す気か。
レイモンドは次の言葉を考え、言った。
多分これが最善であろう。────────多分。
「独身って聞いていました。御幾つだったんですか?お子さん。」
レイモンドは話を広げることにした。男にとっては家族のことを思いだし辛い気持ちになるだろうが。この沈黙を耐えるのと、男を慰めるのだったら、男を慰める方を選ぶ他なかった。慰めるのは得意だ。多分。
男は涙をこらえ、スマホを取り出し、アルバムを開いた。
「娘は………………6歳になるはずだった。妻は37歳を迎えた一週間後だ。」
写真には髪の毛をちょんまげにした金髪の可愛らしい少女と、肩まで伸びる髪の毛を上手に編み込んだ美しい女性がいた。
「美しいかたですね。6歳になるはずと言うことは年長ですか、、」
「嗚呼。」
男はスマホを閉じ閉まった後、先程見ていた資料を掴んだ。
力が強いのか男が持っている部分は皺が幾つも出来た。
「10年前の尋問ってどんな感じだったんですか?」
レイモンドはずっと疑問だったことを言った。
孤児の少女たちに尋問をして成功するのか。と長年思っていた。
成功したから二人の少女は捕まったのだが。"孤児"となると教育が行き届いていないイメージがあったのだ。
「彼女たちはずっと真顔だった。死人のような目をしていた。」
「ただ……………彼女たちは天才だ。」
「え?」
孤児が天才?何故?
レイモンドは信じられなかった。多くの人を殺すやつが天才?と。
逆に唯の馬鹿ではないのかと思っていた。
「天才??どういうことですか?」
今回ばかりは押さえることができなかった。信じられるわけがないからだ。
「爆弾。誰が作ったか知ってるか?」
「え?」
知ってるもなにも……………。
闇取引でもすれば手にはいるだろう。
そこら辺の馬鹿が作ったのを買ったのではないか?否。金がない。
なら誰が──────"彼女達"なのか?
「彼女たちだ。」
「は?……否、流れで大体予想はできましたけど…」
「なら何故驚く」
「何故って………」
否、逆になぜ驚かないと思ったんだ?予想できていたとは言え、彼女達は当時10歳と聞いている。10歳が爆弾を作れるのか?
「二人は天才だからな。親は科学者だ。世界的にも有名な。エクスデーモン夫婦の御令嬢様だ。」
「エクスデーモン夫婦?あの?」
エクスデーモン夫婦。世界的でもっとも有名な科学者。彼らは科学分野で多くの成績を残した夫婦だ。
多くの人から信頼されたが、今から13年前に暗殺された。
エクスデーモン夫婦暗殺事件は未解決事件のままだ。
確かにエクスデーモン夫婦には娘が二人いたが…………。彼女達が?そもそも何故あの二人の娘が爆弾の作り方を知ったんだ。エクスデーモン夫婦は争い事は嫌いなはずだ。なのに何故?
「今さら考えても無駄だ。」
男はレイモンドの心を読んだかのようにそう答え、店員に声をかけると会計に向かった。
レイモンドは一人になってしまった。
レイモンドの横には空のカップと少量の水がこぼれていた。
(慰めるのは回避したが…………)
(この空気…………………………)
「最悪だ………」
此は一人の警官と二人の少女の物語。
初めまして。神谷カノエです。
プリ小説で基本活動していますが、ちゃんと小説っぽい雰囲気を出したく、吹き出しがない小説も書いてみよう。という事で此方に来ました。
縦書きでやろうと思いますが、読みにくい場合は、コメントくだされば横書きにします。
こちらの作品は長編なのでお覚悟を。
今回の作品は1話1話の題名がカクテルになります。なので毎回お話の最後にカクテルの紹介します。Wikipediaを参考にしますので、文句はそちらに。
まあ、理由は何かおしゃれなので。
章の名前?って言うんでしょうか??そう言うのはカクテルではないです。気になる方はお楽しみに。
この本は爆弾の作り方など色々載る可能性ありますが作らないように。まあ簡単に買えるものばかりですが。
今回は文字数が毎回多いのでお覚悟を。
では、本編は3月からなのでお楽しみに。
プリ小説でユーザー名で「神谷カノエ」と検索すれば出てきます。
此方もプリ小説も同時進行とさせていただきます。
多少こちらの方が早いです。
今後ともよろしく御願い致します。
以上、神谷カノエでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます