💫❄️7🎅💫
夜が明けた朝、僕たちは揃って寝坊した。
アキオは研修先にしこたま怒られて、僕もバイト先に平謝り。
結局散々な一日だったけど、心はもう羽のように軽かったから平気だった。
「アキオ、おにぎり!」
「おう、サンキュ」
バタバタと廊下に駆け込んできたアキオに、台所から急いでおにぎりの入った巾着袋を渡す。
「朝ご飯だからね、ちゃんと食べてよ」
「へいへい」
今日はそれから数日経った後の月曜。
僕はアキオに朝のおにぎりを作ってあげることにした。
僕がバイトを始めても家計は相変わらず火の車だ。コンビニのお弁当は高いしちょっとでも節約しなきゃね。
まあ……早起きしたら、アキオとの時間が増えるからっていうのも、あるけどさ。
「今日夜遅いから、先寝てろよ」
「うん」
靴を履き終えて立ち上がったアキオが、突然こっちを振り向いた。
どうしたの、なんて聞く間もなく、アキオの唇が僕の唇に軽く触れた。
「じゃ、行ってくる」
いってらっしゃいは、言い損ねてしまった。
バタンと玄関扉が閉まった後に、自分の顔がぶわっと熱くなる。
今の、なに?
アキオらしくないあんな不意打ち——。
「そ、そうだ! 僕もバイトだし! 用意しなきゃ!」
僕は、一旦考えるのをやめた。
あと少ししたら僕も出勤だ。ココちゃんとやっくんにこの間のお礼もしなくちゃいけない。
端末で予定を確認しながら自分用のおにぎりを頬張る。
距離がゼロになっても新しい始まりには、まだ慣れない。
それでもいつか、見せられるだろうか。
雪の足跡を辿って会いに来てくれた君に。
キレイな道じゃなくても歩き続けた僕に。
僕たちの出会いから始まった十年の先を——。
幸せ色の日々を、僕たちに届けられますように。
10年越しの未来を、僕たちへ トヨタ理 @toyo_osm12
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