あの日、公園で

lager

またね、大好き

 5、6歳くらいの男の子だった。

 人気のない公園で、辺りをきょろきょろと見渡すと、色の褪せた小さな滑り台の下に屈んで入った。

 そこには、同い年くらいの女の子が先に座り込んでいて、男の子の顔が、花の咲いたように綻んだ。

 二人は、小さな手帳のようなものをそれぞれの服のポケットから取り出すと、それを交換し、また大事そうにしまい込んだ。


 夕焼けが、静かに木々の影を伸ばしていく。

 道路を時折走る車の音と、枝葉のさざめき、カラスの鳴き声。

 その中に、鈴を転がすような、男の子と女の子の笑い声が、ぽつぽつと混じる。

 やがて、それも聞こえなくなると、しばらくして、二人が外に出てきた。


 男の子の顔は、萎れたように暗く、女の子は、困ったような笑みを浮かべて、男の子の手を握っている。

 ぽつり、ぽつりと、二人が言葉を交わす。

 どこからともなく、夕方のチャイムが聞こえ、二人に別れの時を告げる。


 女の子は、今にも泣きだしそうな男の子の頬に顔を寄せると、何ごとかを耳元に囁いて、口づけをした。

 男の子は呆然として、女の子が手を振って走り去るのを、棒立ちのまま見つめている。

 やがて、小さな手を力いっぱい握りしめて、女の子とは逆の方へ駆け出した。



 それきり、誰もいなくなった公園のベンチで、僕は、すっかり皺にまみれた手を、自分の頬にあてた。


 あの日、囁かれた言葉と、頬に残る、熱く、柔らかな感触が、甘やかに蘇った。


 うん。僕もさ。


 もうそろそろ、会えるかな。

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