巻末おまけ
むかしむかし、あるところにひとりの天才がおりました。彼は世界中のあらゆる人から期待をあつめており、彼自身もそれを誇りに思っていたそうです。
しかし、そんな男にも悩みがありました。
「僕が1人だけじゃあたかが知れている!」
いくら天才でも、個人は個人。人の身のサイズには抗えないのです。
彼は考えに考えた末、あらゆる世界の己を繋ぎ合わせました。それぞれの可能性をひとりで観測し、組み合わせ、関わる世界のほとんどを本来よりも早く進化させましたとさ。
「めでたしめでたし、といきたいところだけれど、残念ながら人生はおとぎ話じゃない。都合のいいオチにアイリスアウトなんて存在しないのさ」
彼は退屈でした。もちろん大勢の人からの名声は得られましたが、なんてったって、無限に近い人生を手に入れた上に、全部がわかってしまうのですから。
そして悩みに悩んだ末、彼はまた、とびきりのアイデアを思いつきました。うまくいかないこともありましたが、とうとうその【想定外】は完成したのです。
「さて、僕が何をしたか、熱心な読者諸君はきっとお気づきでしょう……なんてね。もちろんわからなくても大丈夫。だってこのお話も、無数の世界のどれかひとつでしかないんだから」
『ここは……エレベーターホール、なのかな?』
遠くからぼんやりと少女の声が響いてくる。
「おや、そろそろ登場シーンのようだね。それじゃあ、行こうか」
虚空には彼の柔らかな笑い声だけが残った。
砥石・イン・ワンダーエレベーターホール 鯛谷木 @tain0tanin0ki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます