甘美な自虐が揺り起こす、加虐心

誰しも、心の奥底に潜ませている悪癖がある。

幼少期、理不尽に晒され、伸び伸びと自分らしくいられなかった者であれば、尚更だ。
ぶつけようのない苛立ちと不満が、自傷行為へと昇華される。

自傷行為が「昇華」とは?
それは「可哀想」で「治療すべき」行為なのではあるまいか。

否、それだけではない。

自傷行為が持つ被虐性は、時に甘美な毒だ。
籬(まがき)に閉じ込められた遊女のように、見る者を惹きつけ、その嗜虐性を煽るのだ。
加虐心を露ほども持たぬ者などいないのだ、と。

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