10歳になったら
西しまこ
「10歳の壁」という言葉があるんです
子育てをしている中で、様々な本を読みました。
愛着障害だの、早期教育の弊害だの、そう、「10歳の壁」だの。
我が子に関しては、「10歳の壁」はそんなに高くなかったです。こういう教育論は、「そういうものがある」と知っておくのはいいけれど、振り回されるのはよくないなと思う。
わたしは息子たちに膨大な嘘話を語って、子育てをしていました。
その中に「10歳になったら、自分の道を決めて旅立つんだよ」というのがあります。それはきっと、「おおかみこどもの雨と雪」という映画の影響なんです。あの物語の中で、そうして旅立つシーンがあるのです。
「おおかみこどもの雨と雪」を観ると、いつも泣いてしまいます。
ネタバレになるといけないので詳しくは書けませんが、一番泣けるのは旅立ちのシーンです。わたしは息子たちと「おおかみこどもの雨と雪」を観ながら、「長男くんが山に行くなら止めないから」とか「次男くんは、10歳になったらプレアデス星に還るんだよね。だって、次男くんはプレアデス星の王子だから」と泣きまねをしていました。
嘘話の一つに、「次男くんはプレアデス星の王子さま」というものがありました。
嘘話の中で、次男くんは、プレアデス星から地球に留学に来た王子さまであり、10歳になったら帰還することになっていました。この話をするたびに、次男くんは「そんなことないもんっ」と言いながらも、ほんのり心配になっていたと思います。何しろ、幼稚園に入る前にそのような嘘話をしていたのです。あほです。
「次男くんといっしょにいられるのも、あと何年なんだろう? うう(泣き真似)」
「オレ、プレアデスせいに いかないもん!」
「でも、ほら、プレアデス星の王子だから。うううう(泣き真似)」
「ちがうもん! しまこちゃんのこどもだもん!」
大変かわいかったんですよ?(笑)
長男くんにはそのような設定はありませんでしたが、何しろ彼は変わりものだったので(現在進行形で変わりものです)、彼がどこに行くのか、いや、すでにここにいないのか、全くよくわかりませんでした。
だから、彼がもし、「オレ、おおかみだから」と、山に行ったとしても、不思議はなかったのです。今は、次男ではなく、長男こそ、宇宙人なのだろうと信じています。
10歳になっても、彼らはどこにも行きませんでした。
ついでに、壁もありませんでした。
しかし、彼らの年齢を考えると、いつまでいっしょにいられるのかな、とは思います。もう、してあげられることは少なくて、少し離れたところから見守るくらいしか出来ません。
壁?
壁はたくさんそびえたっておりましたよ。
小学生のころは、ある程度コントロール可能ですが、中学生以降は親が何とかしようというのはおこがましい、と思っています。
10歳で旅立ちはなかったけれど、でも、もうだいぶわたしの手を離れているなあ、と折に触れて実感しています。
教えたかったこと、伝えたかった大事なこと。
きっと、心の深いところに染み込んでいるはず。
そう信じて、見守ることしか出来ないなあ。
「おおかみこどもの雨と雪」をまた見直そうかな。
了
10歳になったら 西しまこ @nishi-shima
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