TOBETOBETENMADE

夜歩芭空(よあるきばく)/ゆうきぼし

第1話

"To be, to be, ten made."


「ねえ、お兄ちゃん。これってどういう意味?」

「ああ。それか……」

「英語の辞書をひいても訳せないんだ」

「ははは。そりゃそうだ。それは言葉遊びだからな」

「なによそれ。さっぱりわからない」

「"飛べ飛べ天まで" って意味だよ」

「なんだあ。ローマ字読みだったのかあ!」

「難しく考えすぎさ」

「だって、受験勉強ばっかりしてたんだもん。考えるってば」

「そうだったな」


「じゃあさ、お兄ちゃん。これは知ってる?」

"To be or not to be, that is the question."


「ああ、それは有名なハムレットのセリフじゃないか。

"生きるべきか死ぬべきかそれが問題だ"」


「ねえどうするの?」

「お前が言うなよな」

「だって。お兄ちゃんヘタレなんだもの。妹としては任務遂行できるか心配だもん」

「ヘタレって言うなよ」

「どうせ。お兄ちゃんができなかったら別の人が来るんでしょ?」

「うん、まあそうなんだけどね」

「まあ、身内だから悩むのはわかるよ。私でも躊躇するかな」

「俺だって、冥界からの命令でなきゃ……」

「でも会えて嬉しいよ。だってお兄ちゃん先に逝っちゃうんだもの」

「事故だったんだから仕方ないだろ?」

「転職したんだね。サラリーマンから」

「転職っていうなよ。こんな黒い羽生やしてんだぜ」

「そのでっかい鎌もかっこいいよ」

「お世辞言うなって」

「初仕事なんでしょ?」

「そうだけど。ああ、くそっ。なんで俺が」

「私はお兄ちゃんが良かったよ」

「だが医療も進んでるし。これからもっといい薬が出るかも知れねえんだぞ」

「ありがと。でもわかってるよ。自分の身体の事だもの。いいよ。10歳しか生きられないって言われたんだし。長生きしたほうだと思わない?」

「ああ。よくがんばったさ」

「ふふ。相変わらず泣き虫だね」

「……うるせぇ」

「うん。迎えにきてくれてありがとう」


"To be, to be, …………"


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