マッド・サイエンティスト【短編お題に挑む⑦】!!!

立花 優

第1話 マッド・サイエンティスト

 おお、何と私の背中には、「10」枚もの「羽」が、生えているでは無いか?


 この私が病室のベッド上で目が覚めると、イヤに、背中が、ムズムズするので、病室内の鏡で見てみると、大きな「羽」が、「10」枚も生えていたのだ。


「な、な、何、なんだ、これは?」


 そこに、白衣を着た、私の執刀医らしき人物が、私の病室に顔を出した。


「驚いたかい?

 君は、我が神の「命令」により、人類初の、鳥人間になったのさ!」


「えっ、一体、どう言う事なんです?」


「何度も言わすなよ。

 君は、ともかく人類初の、鳥人間になったんだよ。

 ただ、それだけの事さ。

 で、その手術を命じたのは、この私の意思では無いのだ。

 正に、君は、我が神に選ばれて、この私が神に「命令」されて、大鷲の羽を、君の背中に埋め込んだんだよ……。

 しばらくは、しっくりこないだろうが、傷口も相当に治っている。なるべく早く、空を飛べるように、リハビリを開始しようぜ……」


「ば、ば、ば、馬鹿な。誰も、そんな事、頼んだ覚えはありませんよ。

 この前の説明では、腰椎ヘルニアの手術だと言っていたのじゃ無いですか?

 一体、この化け物のような姿になったのは、一体全体、どう言う事なんですか?

 キチンと、説明して下さいよ!」


「だからねえ、我が神の「命令」を、この私が受けたからだよ。

 この手術は。

 ところで、君には、言い忘れたがねえ。

 この私は、あのアウシュビッツ強制収容所で、双子の身体を切り刻んで人工的に、「シャム双生児」を生み出したヨーゼフ・メンゲレ医師や、ポルトガルの医学者で、統合失調症の患者の大脳の前頭葉を切り取る「ロボトミー手術」を世界で最初に提案したエガス・モニス博士の強烈な信奉者なのだよ。良く理解したかい?」


「な、な、何ですって、二人とも、歴史上にその悪名を残している、「マッド・サイエンティスト」ばかりじゃないですか?」


「し、し、失礼な、私の尊敬する二人の偉大な医学者達に、何と言う、暴言を吐くのだ!」


「先生、先生は、既に、医者として、完全に狂っています。

 誰も、鳥人間にしてくれと、只の、一言も頼んでいませんよ。

 貴方は、完全な、キチガ○です!!!」


「こ、こ、こ、この私を、キチガ○扱いするとは、結構、いい度胸だな!!!

 それだけ言う以上は、それなりの、覚悟はあるんだろうな……」


「こ、こ、こんな、化け物に生まれ変わるぐらいなら、死んだほうが、まだマシです」


 で、私は、当該執刀医の止めるのも聞かず、相当に高い筈の病室の窓に向かって、急激に走り出した。

 そして、病室の窓を、コジ開けて地面に飛び降り自殺を試みた。


 しかし、ここで、信じられ無い事が、起きた。


 背中に縫い付けられた、10枚の羽が急激に羽ばたき始め、この、私は何と空を飛んでいたのだ。


 こ、これは、この私は、本物の、鳥人間になったのか?


 この疑問を抱えながらも、地上を睥睨しながら、この私は、自由自在に、空を飛んでいたのである。


 この不思議な感覚を感じて、執刀医への憎しみも、いつか徐々に消えていたのだった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

マッド・サイエンティスト【短編お題に挑む⑦】!!! 立花 優 @ivchan1202

作家にギフトを贈る

カクヨムサポーターズパスポートに登録すると、作家にギフトを贈れるようになります。

サポーター

新しいサポーター

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画